ー特別編ーストリートキャッチャー
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「ふーん、それは誰だって舞い上がるよな。」
俺たちが生きてる時代は、誰もが自分を発見してもらいたいと願う時代だ。
ほんとうのわたしらしさ、才能や魅力や美しさ。
そいつを誰かに見つけてもらって、全面的に肯定してもらいたい。
みんなそのままでいいと甘く抱き締めてほしいのだ。こいつはなにも女だけでなく、男だって変わらない。
その証拠に男には男むけのキャッチセールスが無数にある。
ミチコは顔をあげると、唇を噛んだ。
「撮影が終わると、ジョーさんがいいました。この写真は出版社や代理店にまわすための宣材にする。作成料が十八万円かかるけど、あなたなら大丈夫。休みの日にモデルの仕事をふたつもこなせば、すぐにペイにできりから、と」
だんだん救われない話になってきた。
ソラマメの冷製スープがでてくる。
こんなときでも季節ものは、やはりうまかった。
「だけど、それだけじゃとまらなかった。」
ミチコはうなずいた。
となりからナナエが口をはさんだ。
「ミチコのほうに誘導するのが、モデル詐欺の手口なの」
「なるほどな」
カモを見つけた肉食獣が最初のひと口で満足するはずがないのだ。
ミチコはあっという間にスープを飲み干してしまう。きちんとナプキンで口をぬぐうといった。
「ジョーさんが、わたしの頬を指でふれていていったんです。とってもきれいな肌、でもほんの少しくすんでいるかなあ。ねえ、せっかくだから、うちのブラッド先生を紹介してあげましょうか。天才だから、はだのくすみやしわなんか一発でとれちゃうよ」
魔法の言葉というのは存在するものなのだ。
「わたしがバカだったんです。有名人の話を聞いて、興奮しちゃったから。あとはハンドレッドビューティで、痩身、脱毛、フェイシャルとすべてのコースを試してしまった。化粧品やサプリもたくさん買いました。あの貯金は、頑張って貯めた結婚資金だったのに」
目がうっすらと涙ぐんでいる。ナナエが肩に手をおいて、こちらを見た。
俺は聞きにくいことを聞いた。
「そのさ、どのくらいハンドレッドビューティにぼられたんだ」
ミチコはゴールドのシャネルのバックからハンカチをだして、めの縁から吸いとるように涙をぬぐった。
ハアッとため息をついてからいう。
「六百万とすこし」
「ハアッ……」
俺めため息を返してしまった。バカな女だといってしまえばそれまでだが、この社会では誰だって、いつだまされるかわからない。
政治家の公約を信じて投票する有権者を見るといい。
「社会人になってから八年、ずっと貯金してきたお金です。うちは父を早くなくしているから、結婚式で親を頼れない。そう覚悟して貯めてきたのに、全部なくしてしまった」
俺はオヤジには死なれてないが頼れないのは同じだったから、この手の話には弱かった。
「それで、アンタにモデルの仕事はあったのか」
ミチコは首を横に振った。
「肌のくすみとかは、治ったのか」
またも横振り。
「ダイエットとか、しわとりとかは」
今度は三人揃って首を振る。なんだか定時に合奏するからくり時計みたいだ。
「そいつは弱ったな」
それが俺の本音だった。
なにせエステサロンを相手に、男の俺がどうやって闘えばいいのか、まるでわからないんだ。
俺たちが生きてる時代は、誰もが自分を発見してもらいたいと願う時代だ。
ほんとうのわたしらしさ、才能や魅力や美しさ。
そいつを誰かに見つけてもらって、全面的に肯定してもらいたい。
みんなそのままでいいと甘く抱き締めてほしいのだ。こいつはなにも女だけでなく、男だって変わらない。
その証拠に男には男むけのキャッチセールスが無数にある。
ミチコは顔をあげると、唇を噛んだ。
「撮影が終わると、ジョーさんがいいました。この写真は出版社や代理店にまわすための宣材にする。作成料が十八万円かかるけど、あなたなら大丈夫。休みの日にモデルの仕事をふたつもこなせば、すぐにペイにできりから、と」
だんだん救われない話になってきた。
ソラマメの冷製スープがでてくる。
こんなときでも季節ものは、やはりうまかった。
「だけど、それだけじゃとまらなかった。」
ミチコはうなずいた。
となりからナナエが口をはさんだ。
「ミチコのほうに誘導するのが、モデル詐欺の手口なの」
「なるほどな」
カモを見つけた肉食獣が最初のひと口で満足するはずがないのだ。
ミチコはあっという間にスープを飲み干してしまう。きちんとナプキンで口をぬぐうといった。
「ジョーさんが、わたしの頬を指でふれていていったんです。とってもきれいな肌、でもほんの少しくすんでいるかなあ。ねえ、せっかくだから、うちのブラッド先生を紹介してあげましょうか。天才だから、はだのくすみやしわなんか一発でとれちゃうよ」
魔法の言葉というのは存在するものなのだ。
「わたしがバカだったんです。有名人の話を聞いて、興奮しちゃったから。あとはハンドレッドビューティで、痩身、脱毛、フェイシャルとすべてのコースを試してしまった。化粧品やサプリもたくさん買いました。あの貯金は、頑張って貯めた結婚資金だったのに」
目がうっすらと涙ぐんでいる。ナナエが肩に手をおいて、こちらを見た。
俺は聞きにくいことを聞いた。
「そのさ、どのくらいハンドレッドビューティにぼられたんだ」
ミチコはゴールドのシャネルのバックからハンカチをだして、めの縁から吸いとるように涙をぬぐった。
ハアッとため息をついてからいう。
「六百万とすこし」
「ハアッ……」
俺めため息を返してしまった。バカな女だといってしまえばそれまでだが、この社会では誰だって、いつだまされるかわからない。
政治家の公約を信じて投票する有権者を見るといい。
「社会人になってから八年、ずっと貯金してきたお金です。うちは父を早くなくしているから、結婚式で親を頼れない。そう覚悟して貯めてきたのに、全部なくしてしまった」
俺はオヤジには死なれてないが頼れないのは同じだったから、この手の話には弱かった。
「それで、アンタにモデルの仕事はあったのか」
ミチコは首を横に振った。
「肌のくすみとかは、治ったのか」
またも横振り。
「ダイエットとか、しわとりとかは」
今度は三人揃って首を振る。なんだか定時に合奏するからくり時計みたいだ。
「そいつは弱ったな」
それが俺の本音だった。
なにせエステサロンを相手に、男の俺がどうやって闘えばいいのか、まるでわからないんだ。