ー特別編ーストリートキャッチャー
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「最初は会社の帰りに声をかけられたんです」
ミチコの声は細い。
うつむき加減なせいか、ひどく聞き取りにくいのだ。
ここが池袋のマックでなくてよかった。静かなレストラン以外では取材不可能。
「場所は目白駅まえの橋のうえでした」
JRのホテルがわきにできた、新しい広場だった。
俺は勇気づけるようにいった。
「どんなふうに声をかけられたのかな」
ミチコは頬をかすかに赤くした。
「すごく素敵ですね、どこかモデルクラブに所属しているんですかって」
うまいものだ。そんな口説きかたがあったのか。
俺もいつか試してみよう。
「正直にわたしは普通のOLで、モデルクラブなんかには関係ありませんといいました」
なんだか、俺もミチコから目をそむけたくなってきた。
そのあとの展開がなんとなく想像がついたからだ。
池袋はキャッチセールスの天国だからな。
なぜ、資本主義の世界では人は肉食獣と草食獣にきれいに別れてしまうのだろうか。
残酷で、バカらしい世の中。
男はミチコと同世代で、モード系の細身のスーツと棒のように細いタイをしていたという。
髪も黒髪できちんと櫛がはいり、崩れた印象はなかった。
ちょうどいい感じに日焼けしていて、口調は女性的だが、とてもやさしい。
やつは軽く手を叩いて、Oの字に口を開きいったという。
「まあ、うれしい。あなたみたいな人が残っていて、ほんとによかった。だったらうちの事務所で仕事をしましょうよ。あなたなら、モデルの仕事が絶対できるから」
まだ夜までは間がある明るい灯ともしごろ、ミチコはふらふらと目白駅まえのカフェについていった。
カプチーノがふたつ。
女性ファッション誌では最近読者モデルが流行っていて、男の事務所はそこに「美人すぎなくて、同性から親しまれて、でもよくみると実際にはとってもかわいい、しっかり生活感のある大人の女性」を派遣しているという。
うーん…複雑。
すべての条件にミチコはぴったりだと、男はほめちぎった。
それから読者モデルでスタートして有名になったタレントの名前を数々ならべてみせた。
まあ、実際にそんなのも何人かはいるからな。
ミチコは舞い上がった。
そこでようやく男は自己紹介をした。
城和重。
男の名刺には、あのブラッド宮元の顔写真がついて、ハンドレッドビューティのロゴもはいっている。
なんだか信用できそうだ。なにせ代表はテレビに出ている人なのだ。
おかしなことはしないだろう。
カフェをでると、カズシゲが小型のBMWをまわしてくれた。
底光りする黒の325i。
そのまま目白にある事務所へGOだ。
事務所は大理石の車寄せがついてるような高級マンションの一室だった。簡単な書類に記入すると、すぐにカメラテストが始まった。
床も壁も天井も真っ白な部屋に連れていかれ、プロフィール用の写真を撮られたのだ。
デジタルの一眼レフをつかい、照明もきちんとあてられた本格的な撮影だ。
スタジオでプロに撮られたのは初めてだったので、ミチコはひどくたのしかったという。
ミチコの声は細い。
うつむき加減なせいか、ひどく聞き取りにくいのだ。
ここが池袋のマックでなくてよかった。静かなレストラン以外では取材不可能。
「場所は目白駅まえの橋のうえでした」
JRのホテルがわきにできた、新しい広場だった。
俺は勇気づけるようにいった。
「どんなふうに声をかけられたのかな」
ミチコは頬をかすかに赤くした。
「すごく素敵ですね、どこかモデルクラブに所属しているんですかって」
うまいものだ。そんな口説きかたがあったのか。
俺もいつか試してみよう。
「正直にわたしは普通のOLで、モデルクラブなんかには関係ありませんといいました」
なんだか、俺もミチコから目をそむけたくなってきた。
そのあとの展開がなんとなく想像がついたからだ。
池袋はキャッチセールスの天国だからな。
なぜ、資本主義の世界では人は肉食獣と草食獣にきれいに別れてしまうのだろうか。
残酷で、バカらしい世の中。
男はミチコと同世代で、モード系の細身のスーツと棒のように細いタイをしていたという。
髪も黒髪できちんと櫛がはいり、崩れた印象はなかった。
ちょうどいい感じに日焼けしていて、口調は女性的だが、とてもやさしい。
やつは軽く手を叩いて、Oの字に口を開きいったという。
「まあ、うれしい。あなたみたいな人が残っていて、ほんとによかった。だったらうちの事務所で仕事をしましょうよ。あなたなら、モデルの仕事が絶対できるから」
まだ夜までは間がある明るい灯ともしごろ、ミチコはふらふらと目白駅まえのカフェについていった。
カプチーノがふたつ。
女性ファッション誌では最近読者モデルが流行っていて、男の事務所はそこに「美人すぎなくて、同性から親しまれて、でもよくみると実際にはとってもかわいい、しっかり生活感のある大人の女性」を派遣しているという。
うーん…複雑。
すべての条件にミチコはぴったりだと、男はほめちぎった。
それから読者モデルでスタートして有名になったタレントの名前を数々ならべてみせた。
まあ、実際にそんなのも何人かはいるからな。
ミチコは舞い上がった。
そこでようやく男は自己紹介をした。
城和重。
男の名刺には、あのブラッド宮元の顔写真がついて、ハンドレッドビューティのロゴもはいっている。
なんだか信用できそうだ。なにせ代表はテレビに出ている人なのだ。
おかしなことはしないだろう。
カフェをでると、カズシゲが小型のBMWをまわしてくれた。
底光りする黒の325i。
そのまま目白にある事務所へGOだ。
事務所は大理石の車寄せがついてるような高級マンションの一室だった。簡単な書類に記入すると、すぐにカメラテストが始まった。
床も壁も天井も真っ白な部屋に連れていかれ、プロフィール用の写真を撮られたのだ。
デジタルの一眼レフをつかい、照明もきちんとあてられた本格的な撮影だ。
スタジオでプロに撮られたのは初めてだったので、ミチコはひどくたのしかったという。