ー特別編ーストリートキャッチャー
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「気のせい……だったか。」
代わりに鳴り出したのは、おれの携帯だった。
耳元できく池袋の王様の声は、ドライアイスでできた耳かきみたいにクールだ。
『悠、お前はぜんぜんダメだな。さっきからあとをつけてるが、もう六回は拉致できたぞ。うしろ姿がすきだらけだ』
真夜中の鬼ごっこか。
王族に余暇を与えるとロクなことがない。
「平民をいじめて、おもしろいか。趣味が悪いな、崇」
まあ、なにをいっても王様のガウンには傷ひとつつけることができないんだが、息が乱れているのが悔しくて、おれはそういった。
『いいから、目白通りにもどってこい。ちょっと悠に頼みたいことがある。お前を探していたんだ。』
カチンときた。
市民は王様のおもちゃじゃない。
「いいけど、今回は高いぞ。ぼったくってやる」
タカシは氷がこすれるような心地いい笑い声をあげた。
『いくらでも、ぼったくれ。おれは仲介するだけだからな。ギャラの交渉は勝手にするといい』
あきれた。
こいつはいつもダメージの届かない王宮のなかで守られている。
おれはそこでもう一度iPodのスイッチをいれた。
ケヤキの幹にもたれて、「タンホイザー序曲」を丸々きく。
約九分間、いい曲だな~。
いったことは無いけどドイツの黒い森のなかを想像してみる。
それから、ゆっくりと目白通りにもどった。
理由はないけど、王様を待たしてみたくなってな。
メルセデスのRVで連れていかれたのは、通りの先にある千登世橋だった。
そこは目白通りと明治通りの立体交差で、ひどく眺めのいい場所。
遠く新宿の高層ビル郡が夜の車列のむこうに幻の都のように浮かんでいる夜景の名所だ。
空気も芳しい夏の夜。
ロマンチックな都心の夜景。
俺のとなりには、いつものキングのすまし顔。
なぜ、こういうときに肌を透かすサマードレスを着た大人の女じゃないのか理解に苦しむが、こいつは恋愛小説じゃなくて、俺の話だからな。
「さっきの話だが、今回のクライアントはけっこう金を持ってるらしい」
陸橋の欄干にもたれるタカシは、今年風のアイビールルックだった。
白いパイピングがついた紺のジャケット。
したはひざ丈の白いショーとパンツだ。
金に興味のない俺は適当な返事をする。
「ああ、そう。」
俺が不機嫌そうだと愉快になるのが、タカシの不思議なところだった。
やつには共感能力という日本社会で生きていくために不可欠な資質がないのだ。KYキング。
「悠、おまえはブラッド宮本って知ってるか。」
そんなモデルみたいな名前の奴は知らなかった。
首を横に振る。
するとキングが豹変した。
代わりに鳴り出したのは、おれの携帯だった。
耳元できく池袋の王様の声は、ドライアイスでできた耳かきみたいにクールだ。
『悠、お前はぜんぜんダメだな。さっきからあとをつけてるが、もう六回は拉致できたぞ。うしろ姿がすきだらけだ』
真夜中の鬼ごっこか。
王族に余暇を与えるとロクなことがない。
「平民をいじめて、おもしろいか。趣味が悪いな、崇」
まあ、なにをいっても王様のガウンには傷ひとつつけることができないんだが、息が乱れているのが悔しくて、おれはそういった。
『いいから、目白通りにもどってこい。ちょっと悠に頼みたいことがある。お前を探していたんだ。』
カチンときた。
市民は王様のおもちゃじゃない。
「いいけど、今回は高いぞ。ぼったくってやる」
タカシは氷がこすれるような心地いい笑い声をあげた。
『いくらでも、ぼったくれ。おれは仲介するだけだからな。ギャラの交渉は勝手にするといい』
あきれた。
こいつはいつもダメージの届かない王宮のなかで守られている。
おれはそこでもう一度iPodのスイッチをいれた。
ケヤキの幹にもたれて、「タンホイザー序曲」を丸々きく。
約九分間、いい曲だな~。
いったことは無いけどドイツの黒い森のなかを想像してみる。
それから、ゆっくりと目白通りにもどった。
理由はないけど、王様を待たしてみたくなってな。
メルセデスのRVで連れていかれたのは、通りの先にある千登世橋だった。
そこは目白通りと明治通りの立体交差で、ひどく眺めのいい場所。
遠く新宿の高層ビル郡が夜の車列のむこうに幻の都のように浮かんでいる夜景の名所だ。
空気も芳しい夏の夜。
ロマンチックな都心の夜景。
俺のとなりには、いつものキングのすまし顔。
なぜ、こういうときに肌を透かすサマードレスを着た大人の女じゃないのか理解に苦しむが、こいつは恋愛小説じゃなくて、俺の話だからな。
「さっきの話だが、今回のクライアントはけっこう金を持ってるらしい」
陸橋の欄干にもたれるタカシは、今年風のアイビールルックだった。
白いパイピングがついた紺のジャケット。
したはひざ丈の白いショーとパンツだ。
金に興味のない俺は適当な返事をする。
「ああ、そう。」
俺が不機嫌そうだと愉快になるのが、タカシの不思議なところだった。
やつには共感能力という日本社会で生きていくために不可欠な資質がないのだ。KYキング。
「悠、おまえはブラッド宮本って知ってるか。」
そんなモデルみたいな名前の奴は知らなかった。
首を横に振る。
するとキングが豹変した。