ー特別編ーストリートキャッチャー
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梅雨が明けたと思ったら、今年も東京はエコライフなんてどこ吹く風の炎熱地獄。
俺は昼間はともかく、寝るときはエアコンが嫌いなので、真夏だって夜は窓を開けて寝ている。
だが、一年に何日かは完全に風が死に絶える日がある。
そんな夜、俺は忍び足で池袋の街をうろつくことにしている。
すこしは外気のほうが涼しいし、湿度だって低いからな。
昔にくらべると、ずいぶんときれいになったが、それでもさすがに池袋。
通りを歩けば、怪しげな店がたくさんできている。
最近特に増えたのは、中国系の店だろうか。
中国料理に、土産物、ネットカフェに、中国語版のDVDショップと、やたらあちこちで目につくんだ。
やっぱりこれも上海万博の需要なんだろうか。
この街にも、ときならぬ中国ブームがきてるみたいだ。
その夜おれが歩いていたのは、池袋ではなくとなりの駅の目白だ。
西口五差路を抜けて、池袋警察署のまえを(なぜだかちいさく背を丸めて)とおり、南池袋の住宅街にはいる。
夜の路地には通行人はほとんどいない。
iPodのなかには、とっておきのワーグナーの序曲集。
肌をなでる夜の風と耳のなかに吹き込むストリングスが混じりあって、まるでオーケストラのなかを気ままに散歩しているような気分になる。
東京に住む人間ならわかってもらえるだろうが、池袋と目白では街の様子は百八十度違う。
目白には池袋にはない高級住宅街がある。
キリスト教の教会もたくさん。
樹齢百年を超えるような木々は無数。
おれは昔軽井沢に遊びにいったことがあるが、そのとき思ったものだ。
ここはなんだか目白通りの雰囲気に似てる。
なぜかしらないが、金持ちというのはみな似たような感じの街に集まり、同じように暮らすものである。
俺なんかにしたら、あの整いかたがキュークツでしかたないけど。
目白駅前の橋をわたり、小学校前にあるイチョウ並木を歩いていく。
目白通り沿いには学習院があって、川村学園があって、公立小学校があって、緑濃い学園都市の雰囲気だ。
けれど……青々したイチョウの木の陰を歩きながら、俺は背中に嫌な気配を感じていた。
なにかよくないものが、じりじりと迫ってくるあの冷たい空気。
そいつを感じたら、迷わずにすぐ逃げなくちゃならない。
心優しく誠実謙虚な俺だが、意外に敵が多いのだ。
ポケットの中でこっそりiPodをとめて、つぎの角でうしろも見ずにダッシュした。
相手が誰だか確かめてる暇なんてない。
そこは一車線のちいさな左折路。路地の奥に二十メートルほど駆け込んだが、なにも追ってこなかった。
あたりは静かに高額な戸建ての家が並ぶだけ。
俺は昼間はともかく、寝るときはエアコンが嫌いなので、真夏だって夜は窓を開けて寝ている。
だが、一年に何日かは完全に風が死に絶える日がある。
そんな夜、俺は忍び足で池袋の街をうろつくことにしている。
すこしは外気のほうが涼しいし、湿度だって低いからな。
昔にくらべると、ずいぶんときれいになったが、それでもさすがに池袋。
通りを歩けば、怪しげな店がたくさんできている。
最近特に増えたのは、中国系の店だろうか。
中国料理に、土産物、ネットカフェに、中国語版のDVDショップと、やたらあちこちで目につくんだ。
やっぱりこれも上海万博の需要なんだろうか。
この街にも、ときならぬ中国ブームがきてるみたいだ。
その夜おれが歩いていたのは、池袋ではなくとなりの駅の目白だ。
西口五差路を抜けて、池袋警察署のまえを(なぜだかちいさく背を丸めて)とおり、南池袋の住宅街にはいる。
夜の路地には通行人はほとんどいない。
iPodのなかには、とっておきのワーグナーの序曲集。
肌をなでる夜の風と耳のなかに吹き込むストリングスが混じりあって、まるでオーケストラのなかを気ままに散歩しているような気分になる。
東京に住む人間ならわかってもらえるだろうが、池袋と目白では街の様子は百八十度違う。
目白には池袋にはない高級住宅街がある。
キリスト教の教会もたくさん。
樹齢百年を超えるような木々は無数。
おれは昔軽井沢に遊びにいったことがあるが、そのとき思ったものだ。
ここはなんだか目白通りの雰囲気に似てる。
なぜかしらないが、金持ちというのはみな似たような感じの街に集まり、同じように暮らすものである。
俺なんかにしたら、あの整いかたがキュークツでしかたないけど。
目白駅前の橋をわたり、小学校前にあるイチョウ並木を歩いていく。
目白通り沿いには学習院があって、川村学園があって、公立小学校があって、緑濃い学園都市の雰囲気だ。
けれど……青々したイチョウの木の陰を歩きながら、俺は背中に嫌な気配を感じていた。
なにかよくないものが、じりじりと迫ってくるあの冷たい空気。
そいつを感じたら、迷わずにすぐ逃げなくちゃならない。
心優しく誠実謙虚な俺だが、意外に敵が多いのだ。
ポケットの中でこっそりiPodをとめて、つぎの角でうしろも見ずにダッシュした。
相手が誰だか確かめてる暇なんてない。
そこは一車線のちいさな左折路。路地の奥に二十メートルほど駆け込んだが、なにも追ってこなかった。
あたりは静かに高額な戸建ての家が並ぶだけ。