ー特別編ーブラフ・テレフォン
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『おれ、やっぱり電話以外じゃ、いつもヘマばかりしてる』
俺は携帯にむかって叫んでしまった。
「大丈夫か。心配したぞ。今、どこに居る。」
ヨウジはしゃがれた声で笑った。
『そんなにいっぺんに質問しないでくれ。おれは、なんとかだいじょうぶ。といっても、今は病院にいる。』
「どこのだ」
ヨウジは下落合にある救急病院にいるといった。
ずっと入院してて、意識が戻ったのは、昨日の午後だったらしい。
『おれの携帯を壊されて、悠にも連絡できなかった。心配かけてごめん』
「いいよ。これからそっちに顔をだす。なにがあったのか、聞かせてくれ。」
だらだらと着替えかけていた制服を脱ぎ捨てて、携帯で黒井先生に連絡をいれた。風邪で休みます。
それから街に飛び出す。
とりあえず動く目標があるというのは、素晴らしかった。
誰かの消息を案じながら待つ。これほど静かなダメージはない。
救急病院まえの駐車場にジープをとめた。
外科の病室はきいているので、病院特有のゆっくりしたエレベーターでさっさと三階にあがった。
日差しのはいる明るい廊下を奥にすすみ、306号室を見つけた。
開いたままのスライドドアの戸口をはいった。
四人部屋の窓際のベッドで、ヨウジは横になっている。
全身包帯。ミイラ男みたい。
顔にはカラフルなアザが浮かんで、唇の端は縫い合わせた黒い糸が痛々しかった。
俺は見舞いに持ってきたビワのパックを、サイドテーブルにのせてやった。
「派手にやられちゃったな」
パイプ椅子に腰かけた。
ヨウジは笑ってから、唇を指で押さえる。
「今日は冗談をいうのはやめてくれないか。笑うと一番痛いんだ。」
「わかったよ。なにがあった」
ヨウジはぼんやりと窓の外を眺めた。
下落合のあたりは中の上の住宅街だ。落ち着いた街並みには、点々と新緑の木々が散っている。
「おれがバカだった。ヤクザの裏がないなら、別に社長は怖くない。それで、悠からの電話をもらった日に、直談判したんだ。浅川の顔色が変わったのは、おまえにはケツモチなんかいない、おれたち全員をだましやがってといったときだった。おれは言いたいことをすべていっと、会社を辞めてきた」
「そうか。」
俺は全身に包帯を巻かれた電話男を見た。
勇気の報酬である。
ヨウジは絞り出すようにいった。
「襲われたのは、つぎの日だった。近くのコンビニに弁当でも買いにいこうと部屋をでたんだ。やつらは黒いワゴンにのっていた。四人の男たちに襲撃されて、もみくちゃになってるうちに、縛り上げられ荷室に転がされていた。連れていかれたのは、雑司ヶ谷霊園だった」
電話男の声が震えていた。顔に血の色が浮かんで、まだらのアザが変色した。
俺は携帯にむかって叫んでしまった。
「大丈夫か。心配したぞ。今、どこに居る。」
ヨウジはしゃがれた声で笑った。
『そんなにいっぺんに質問しないでくれ。おれは、なんとかだいじょうぶ。といっても、今は病院にいる。』
「どこのだ」
ヨウジは下落合にある救急病院にいるといった。
ずっと入院してて、意識が戻ったのは、昨日の午後だったらしい。
『おれの携帯を壊されて、悠にも連絡できなかった。心配かけてごめん』
「いいよ。これからそっちに顔をだす。なにがあったのか、聞かせてくれ。」
だらだらと着替えかけていた制服を脱ぎ捨てて、携帯で黒井先生に連絡をいれた。風邪で休みます。
それから街に飛び出す。
とりあえず動く目標があるというのは、素晴らしかった。
誰かの消息を案じながら待つ。これほど静かなダメージはない。
救急病院まえの駐車場にジープをとめた。
外科の病室はきいているので、病院特有のゆっくりしたエレベーターでさっさと三階にあがった。
日差しのはいる明るい廊下を奥にすすみ、306号室を見つけた。
開いたままのスライドドアの戸口をはいった。
四人部屋の窓際のベッドで、ヨウジは横になっている。
全身包帯。ミイラ男みたい。
顔にはカラフルなアザが浮かんで、唇の端は縫い合わせた黒い糸が痛々しかった。
俺は見舞いに持ってきたビワのパックを、サイドテーブルにのせてやった。
「派手にやられちゃったな」
パイプ椅子に腰かけた。
ヨウジは笑ってから、唇を指で押さえる。
「今日は冗談をいうのはやめてくれないか。笑うと一番痛いんだ。」
「わかったよ。なにがあった」
ヨウジはぼんやりと窓の外を眺めた。
下落合のあたりは中の上の住宅街だ。落ち着いた街並みには、点々と新緑の木々が散っている。
「おれがバカだった。ヤクザの裏がないなら、別に社長は怖くない。それで、悠からの電話をもらった日に、直談判したんだ。浅川の顔色が変わったのは、おまえにはケツモチなんかいない、おれたち全員をだましやがってといったときだった。おれは言いたいことをすべていっと、会社を辞めてきた」
「そうか。」
俺は全身に包帯を巻かれた電話男を見た。
勇気の報酬である。
ヨウジは絞り出すようにいった。
「襲われたのは、つぎの日だった。近くのコンビニに弁当でも買いにいこうと部屋をでたんだ。やつらは黒いワゴンにのっていた。四人の男たちに襲撃されて、もみくちゃになってるうちに、縛り上げられ荷室に転がされていた。連れていかれたのは、雑司ヶ谷霊園だった」
電話男の声が震えていた。顔に血の色が浮かんで、まだらのアザが変色した。