ー特別編ーブラフ・テレフォン
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俺はその場で電話をかけた。
ヨウジがでる。すぐにきかれた。
『社長はどことつながってたんだ』
おれはタカシの脅迫とケンジによる調査結果を話した。
どえやら浅川のケツモチは、影も形もないと。
「どうなってるんだろう、俺にも意味がわかんないんだ。ヨウジ、なにか、心当たりはないか」
やつは電話の向こうで黙りこんだ。
雨の音がかすかにきこえたので、要町のどこかを傘をさして歩いているのだろう。
『そうだったのか……』
ヨウジがしぼりだすようにいった。
「どうしたんだ」
『浅川のやつが、おれたちをハメたんだ。最初からケツモチなんていなかったんだよ、悠。上納金だといって三十パーセントを自分の懐にいれて、残りをさらに五人で分けていたんだ。全部、うちの社長のひとり芝居だったんだ』
片手で携帯を持ってるくせに、手を叩きそうになった。
それなら話はつうじる。
振り込め詐欺のような安全な仕事に、最初からケツモチが必要なはずがなかった。
『悠、ありがとう』
ヨウジが静かな声でいった。
『あいつにバックがついてないなら、別に怖くもなんともない。ちゃんと話して、会社を辞めてくる』
「待てよ」
冷静な声がもどってきた。
『いいや、待たない。今日、辞表をだして、振り込め詐欺の会社からは足を洗うよ。いろいろありがとう。じゃあ、あとで電話するから。』
通話はいきなり切れてしまった。
耳元でなっていたやわらかな雨音も聞こえなくなる。
俺はヨウジのまっすぐさがなんだかまぶしかったし、どこか危ういものも感じていた。
だが、自分の進路なんだ。やつが自分の力で切り開きたいというのをとめることもできない。
それで、俺は嫌な予感を無理やり押さえ込んでしまったのである。
あとになって考えると、あのままひとりでいかせないほうがよかったのかもしれない。
もっとも…俺がやつの立場なら、きっと同じことをしただろうけどね。
その日から三日間、ヨウジとは音信不通になった。
いくらかけてもやつの携帯からは応答はない。
そうなると電話男とはまったく連絡のとりようがなかった。
やつが住んでる住所はわからなかった。
会社のほうはヨウジの安否を確かめてからでなければ、とても手をだせない。
のどなか春の陽気のなか、俺は神経だけがキリキリと痛みの声をあげていた。
好きな音楽さえ、まったくきけなくなる。
あれほど繰り返してきいたモーツァルトが、砂のようにただの音の粒になりサラサラとこぼれ落ちていく。
着信音がなったのは、四日目の朝だった。
いらいらしながら、いつものように学校へ行こうとしていると、携帯からヨウジの声が聞こえた。
ヨウジがでる。すぐにきかれた。
『社長はどことつながってたんだ』
おれはタカシの脅迫とケンジによる調査結果を話した。
どえやら浅川のケツモチは、影も形もないと。
「どうなってるんだろう、俺にも意味がわかんないんだ。ヨウジ、なにか、心当たりはないか」
やつは電話の向こうで黙りこんだ。
雨の音がかすかにきこえたので、要町のどこかを傘をさして歩いているのだろう。
『そうだったのか……』
ヨウジがしぼりだすようにいった。
「どうしたんだ」
『浅川のやつが、おれたちをハメたんだ。最初からケツモチなんていなかったんだよ、悠。上納金だといって三十パーセントを自分の懐にいれて、残りをさらに五人で分けていたんだ。全部、うちの社長のひとり芝居だったんだ』
片手で携帯を持ってるくせに、手を叩きそうになった。
それなら話はつうじる。
振り込め詐欺のような安全な仕事に、最初からケツモチが必要なはずがなかった。
『悠、ありがとう』
ヨウジが静かな声でいった。
『あいつにバックがついてないなら、別に怖くもなんともない。ちゃんと話して、会社を辞めてくる』
「待てよ」
冷静な声がもどってきた。
『いいや、待たない。今日、辞表をだして、振り込め詐欺の会社からは足を洗うよ。いろいろありがとう。じゃあ、あとで電話するから。』
通話はいきなり切れてしまった。
耳元でなっていたやわらかな雨音も聞こえなくなる。
俺はヨウジのまっすぐさがなんだかまぶしかったし、どこか危ういものも感じていた。
だが、自分の進路なんだ。やつが自分の力で切り開きたいというのをとめることもできない。
それで、俺は嫌な予感を無理やり押さえ込んでしまったのである。
あとになって考えると、あのままひとりでいかせないほうがよかったのかもしれない。
もっとも…俺がやつの立場なら、きっと同じことをしただろうけどね。
その日から三日間、ヨウジとは音信不通になった。
いくらかけてもやつの携帯からは応答はない。
そうなると電話男とはまったく連絡のとりようがなかった。
やつが住んでる住所はわからなかった。
会社のほうはヨウジの安否を確かめてからでなければ、とても手をだせない。
のどなか春の陽気のなか、俺は神経だけがキリキリと痛みの声をあげていた。
好きな音楽さえ、まったくきけなくなる。
あれほど繰り返してきいたモーツァルトが、砂のようにただの音の粒になりサラサラとこぼれ落ちていく。
着信音がなったのは、四日目の朝だった。
いらいらしながら、いつものように学校へ行こうとしていると、携帯からヨウジの声が聞こえた。