ー特別編ーブラフ・テレフォン
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『月に三百万はゴツいな。そんな詐欺の話は聞いたことないけど、ヤクザって自分のシノギについては口が堅いからな。ほんとうかもしれない』
そうなるとやっかいなことになりそうだった。
ヨウジを逃がすためだけに、平和協定を結んでいる一ノ瀬組系列とSウルフを抗争に巻き込むわけにはいかない。
「とりあえず、その本部長にケツモチの話、確かめておいてくれ」
『わかった。』
電話が切れる前にいった。
「なあ、拳二、今年こそはタカシと俺とお前で、花見やらないか」
うれしそうに本部長代理はいう。
『いいな。うまい弁当と酒を持っていきたいな。』
本職のヤクザのくせに、キングよりはずっと話せるやつだった。
ケンジから電話があったのは、翌日の午後だった。
雨音のしない春の雨が朝から降り続く暗い日である。
おれはぼんやりと教室の天井を見つめながら、正社員になれずにイリーガルな仕事に転落していくガキどものことを考えていた。
二百万人のフリーターのうつ、何パーセントが新しい形の犯罪者になってしまうのか。
結局、人を使い捨てにすれば、企業で削られたのと同じコストを、社会全体で負担することになるのだ。
プラスマイナスゼロである。
暗い気分に、着信音が重なった。
だいたい電話は好きではないので、そのまま無視しようかと思ったが、いちおう発信を確かめた。
拳二だ。
でないわけにはいかない。
「こーゆー雨は楽しくないよな。」
『なにいってんだ、悠。おれは叔父貴にしかられたぞ。いい加減なガセながしてんじゃねぇ!』
意味がわからなかった。
タカシとSウルフを動かして、骨の髄までビビらせたあとで得た情報だ。
だが、やつのほうも負けていなかった。
『だからな、岩瀬の叔父貴は、そんな振り込め詐欺なんてしらないそうだ。もし、そいつらが、勝手に叔父貴の名前を使ってるなら、許しちゃおけない』
なにがなんだかわからなくなってきた。
昨日の浅川の恐怖は、間違いようのないものだった。
それでも、まだなにか裏があったのだろうか…?
「絶対に飛騨組となんの関係もないのか」
『しつこいぞ。だいたいな岩瀬さんがいってたんだ。そいつらをぶっ潰してもかまわないとな。Sウルフで好きなようにしろといっていた』
ケツモチどころの騒ぎではなかった。
そこまでいうのなら、あの会社が岩瀬本部長と無関係なのは確かなようだ。
俺は腑(ふ)に落ちないままケンジに礼をいった。
『この電話の礼に、おまえが花見の場所とりしろよな。』
OKといって、携帯を切る。堅気と遊ぶのが大好きで、花見に目がないケンジ。
やつはどうしてヤクザになんかなったのだろうか。
俺たちの職業選択は、いつだって気まぐれだ。
そうなるとやっかいなことになりそうだった。
ヨウジを逃がすためだけに、平和協定を結んでいる一ノ瀬組系列とSウルフを抗争に巻き込むわけにはいかない。
「とりあえず、その本部長にケツモチの話、確かめておいてくれ」
『わかった。』
電話が切れる前にいった。
「なあ、拳二、今年こそはタカシと俺とお前で、花見やらないか」
うれしそうに本部長代理はいう。
『いいな。うまい弁当と酒を持っていきたいな。』
本職のヤクザのくせに、キングよりはずっと話せるやつだった。
ケンジから電話があったのは、翌日の午後だった。
雨音のしない春の雨が朝から降り続く暗い日である。
おれはぼんやりと教室の天井を見つめながら、正社員になれずにイリーガルな仕事に転落していくガキどものことを考えていた。
二百万人のフリーターのうつ、何パーセントが新しい形の犯罪者になってしまうのか。
結局、人を使い捨てにすれば、企業で削られたのと同じコストを、社会全体で負担することになるのだ。
プラスマイナスゼロである。
暗い気分に、着信音が重なった。
だいたい電話は好きではないので、そのまま無視しようかと思ったが、いちおう発信を確かめた。
拳二だ。
でないわけにはいかない。
「こーゆー雨は楽しくないよな。」
『なにいってんだ、悠。おれは叔父貴にしかられたぞ。いい加減なガセながしてんじゃねぇ!』
意味がわからなかった。
タカシとSウルフを動かして、骨の髄までビビらせたあとで得た情報だ。
だが、やつのほうも負けていなかった。
『だからな、岩瀬の叔父貴は、そんな振り込め詐欺なんてしらないそうだ。もし、そいつらが、勝手に叔父貴の名前を使ってるなら、許しちゃおけない』
なにがなんだかわからなくなってきた。
昨日の浅川の恐怖は、間違いようのないものだった。
それでも、まだなにか裏があったのだろうか…?
「絶対に飛騨組となんの関係もないのか」
『しつこいぞ。だいたいな岩瀬さんがいってたんだ。そいつらをぶっ潰してもかまわないとな。Sウルフで好きなようにしろといっていた』
ケツモチどころの騒ぎではなかった。
そこまでいうのなら、あの会社が岩瀬本部長と無関係なのは確かなようだ。
俺は腑(ふ)に落ちないままケンジに礼をいった。
『この電話の礼に、おまえが花見の場所とりしろよな。』
OKといって、携帯を切る。堅気と遊ぶのが大好きで、花見に目がないケンジ。
やつはどうしてヤクザになんかなったのだろうか。
俺たちの職業選択は、いつだって気まぐれだ。