ー特別編ーブラフ・テレフォン
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数十分でついた住宅街に、おれたちはそのウィークリーマンションを見つけた。
白いタイル張りのなんでもない四階建てのビルである。
この時間にはでいりする人間は、誰もいなかった。
それは要町の住宅街も同じだ。
勤め人はまだ会社だろうし、主婦は昼のワイドショーの終盤を眺めているはずだ。
狭い路地にメルセデスをとめ、おれたちは振り込め詐欺のオーナー社長が出てくるのをまった。
最初に白いマンションのガラス扉を抜けてきたのは、ヨウジだった。
時刻は四時半。
車種は伝えてあったので、やつはチラリとメルセデスの方を見た。
そのまま車を素通りして、有楽町線の要町駅にむかう。
夕日を浴びた後ろ姿が携帯を抜くと、おれの着信音が鳴った。
『もうすぐ、でてくる。今日は社長と専務ふたりで、なにか打ち合わせがあるみたいだ。浅川社長一人のところを捕まえるのは、難しいかもしれない』
「わかった」
携帯は切れた。
おれは黙って、二本の指をだした。
タカシは夢見るようにいう。
「ひとりでも、ふたりでも同じことだ。やつらを心底ビビらせればいいんだろ」
そのとおりだった。
誰かをビビらせる能力について、キング・タカシに疑いをもつやつは池袋には一人もいない。
十五分後、社長と専務がでてきた。
どちらも黒のタイトなスーツ。
たぶんクリスチャン・ディオール。確かに消費の活性化に振り込め詐欺が有効なのは確かなようだった。
素晴らしいカットのスーツを着た姿勢の悪いガキ。
ふたりは駅に向かって、ポケットに手をつっこみ歩きだす。
メルセデスはゆっくりとそのあとをつけた。
もう少しで大きな通りにでる直前、いきなりスピードをあげて、ふたりの進路をはばんだ。
四枚のドアがいっせいに開き、タカシとSウルフが飛び出していく。
「なんだ、お前ら」
二十六歳の社長が日焼けした顔で叫んでいた。
タカシの声は氷柱のように鋭い。
「俺だよ、俺。わからないのか?」
おれはメルセデスのなかで、声を殺して笑った。
タカシには演出とか演技の才能が、生まれつきそなわっているようだ。
社長はあせって叫んだ。
「ふざけんな、誰だ、お前ら」
残る三人組は腕組をして立ち尽くしている。
キングがいった。
「俺だよ、俺。池袋でしのいでいて、おれの顔もわからないのか。だから、誰にも許可を得ずに、振り込め詐欺なんてやってるんだな。このマヌケ」
タカシは振り込め詐欺のところで、周囲を見回し、思い切り声を張った。
社長がビビってるのが手に取るようにわかる。
白いタイル張りのなんでもない四階建てのビルである。
この時間にはでいりする人間は、誰もいなかった。
それは要町の住宅街も同じだ。
勤め人はまだ会社だろうし、主婦は昼のワイドショーの終盤を眺めているはずだ。
狭い路地にメルセデスをとめ、おれたちは振り込め詐欺のオーナー社長が出てくるのをまった。
最初に白いマンションのガラス扉を抜けてきたのは、ヨウジだった。
時刻は四時半。
車種は伝えてあったので、やつはチラリとメルセデスの方を見た。
そのまま車を素通りして、有楽町線の要町駅にむかう。
夕日を浴びた後ろ姿が携帯を抜くと、おれの着信音が鳴った。
『もうすぐ、でてくる。今日は社長と専務ふたりで、なにか打ち合わせがあるみたいだ。浅川社長一人のところを捕まえるのは、難しいかもしれない』
「わかった」
携帯は切れた。
おれは黙って、二本の指をだした。
タカシは夢見るようにいう。
「ひとりでも、ふたりでも同じことだ。やつらを心底ビビらせればいいんだろ」
そのとおりだった。
誰かをビビらせる能力について、キング・タカシに疑いをもつやつは池袋には一人もいない。
十五分後、社長と専務がでてきた。
どちらも黒のタイトなスーツ。
たぶんクリスチャン・ディオール。確かに消費の活性化に振り込め詐欺が有効なのは確かなようだった。
素晴らしいカットのスーツを着た姿勢の悪いガキ。
ふたりは駅に向かって、ポケットに手をつっこみ歩きだす。
メルセデスはゆっくりとそのあとをつけた。
もう少しで大きな通りにでる直前、いきなりスピードをあげて、ふたりの進路をはばんだ。
四枚のドアがいっせいに開き、タカシとSウルフが飛び出していく。
「なんだ、お前ら」
二十六歳の社長が日焼けした顔で叫んでいた。
タカシの声は氷柱のように鋭い。
「俺だよ、俺。わからないのか?」
おれはメルセデスのなかで、声を殺して笑った。
タカシには演出とか演技の才能が、生まれつきそなわっているようだ。
社長はあせって叫んだ。
「ふざけんな、誰だ、お前ら」
残る三人組は腕組をして立ち尽くしている。
キングがいった。
「俺だよ、俺。池袋でしのいでいて、おれの顔もわからないのか。だから、誰にも許可を得ずに、振り込め詐欺なんてやってるんだな。このマヌケ」
タカシは振り込め詐欺のところで、周囲を見回し、思い切り声を張った。
社長がビビってるのが手に取るようにわかる。