ー特別編ーブラフ・テレフォン
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『浅川達也。池袋の地元でずっとワルだったらしい。年は確か、二十六歳かな。この街の裏の世界ともパイプがあるみたいだ。毎月上納金を納めてるっていっていた。売り上げの三十パーセント。』
二十六歳の若社長を想像した。十八歳のトラブルシューターよりも、カッコいい気がする。
それにしても暴力団というのは、良い商売だ。
自分達ではなにもせずに、素人の仕事の売り上げの三割を吸いあげていくのだ。
ケツモチとはいえ、振り込め詐欺ではまずトラブルなど発生しないだろう。
電話を切ってしまえばそれで終わりだし、プリペイドでは携帯から足はつかない。
「会社のメンバーはみんなそんなな若いのか。」
『ああ、最年長が社長で、あとはみんな二十代前半。泣き屋が一人だけ十代かな。』
サークル活動というのは、本当なのだろう。
その若さで大金が手にはいる。なかなか楽しいかもしれない。
「どうして、ただ辞めるといえないんだ。」
ヨウジは泣き声になった。
『うちの会社は鉄の結束なんだ。裏切ったやつはリンチだし、社長がその筋に話をとおして、どこかに埋められちまうかもしれない。足抜けや独立、仕事の詳細を警察でうたうこと。すべて厳罰で、命がいくつあっても足らない。』
ガキの好きそうな話だった。たいていは口先だけの脅しなんだが…。
「実際にそんな目に遭ったやつはいるのか」
『いいや、まだいない。だけど、うちの社員がひとり、別な会社からスカウトされたときは、たいへんだった。その会社に社長と組の人間がのりこんで、マンションのなかを滅茶苦茶にしたんだ。そこの社員はみんなボコボコにされたって話だった。』
どうにも救われない展開だった。
池袋の街でぶらぶらしていたガキがようやく就職した会社は、とんでもない高給を保証してくれるが、裏の世界とつながった詐欺専門。
もっとまともな就職先はないものだろうか。
だがこの手の話を俺はこの何年か、ストリートの噂でうんざりするほど耳にしている。
ガキの失業率はとんでもない数字なのだ。
目先の金に飛び付くのも無理はなかった。
おれは円形広場のむこうに目をやった。
「ヨウジ、おまえは本気で会社をやめたいんだな。」
『本気だ。』
「それで二度と振り込め詐欺には手を出さない?」
『ださない』
おれはパイプベンチを立ち上がった。
同心円状に広がる石畳をゆっくりとやつのほうに近づいていった。
「おれに何ができるかわからないけど、それならやってみるよ。プリペイドじゃなく、お前の携帯の番号を教えてくれ。」
一瞬、ヨウジはためらった。丸裸にでもされる気分なんだろう。
この番号ひとつから、本名、住所、年齢、その他の個人情報をすべて調べることができるのだ。
裏の世界の情報網は、金さえだせばなんでも可能だ。
二十六歳の若社長を想像した。十八歳のトラブルシューターよりも、カッコいい気がする。
それにしても暴力団というのは、良い商売だ。
自分達ではなにもせずに、素人の仕事の売り上げの三割を吸いあげていくのだ。
ケツモチとはいえ、振り込め詐欺ではまずトラブルなど発生しないだろう。
電話を切ってしまえばそれで終わりだし、プリペイドでは携帯から足はつかない。
「会社のメンバーはみんなそんなな若いのか。」
『ああ、最年長が社長で、あとはみんな二十代前半。泣き屋が一人だけ十代かな。』
サークル活動というのは、本当なのだろう。
その若さで大金が手にはいる。なかなか楽しいかもしれない。
「どうして、ただ辞めるといえないんだ。」
ヨウジは泣き声になった。
『うちの会社は鉄の結束なんだ。裏切ったやつはリンチだし、社長がその筋に話をとおして、どこかに埋められちまうかもしれない。足抜けや独立、仕事の詳細を警察でうたうこと。すべて厳罰で、命がいくつあっても足らない。』
ガキの好きそうな話だった。たいていは口先だけの脅しなんだが…。
「実際にそんな目に遭ったやつはいるのか」
『いいや、まだいない。だけど、うちの社員がひとり、別な会社からスカウトされたときは、たいへんだった。その会社に社長と組の人間がのりこんで、マンションのなかを滅茶苦茶にしたんだ。そこの社員はみんなボコボコにされたって話だった。』
どうにも救われない展開だった。
池袋の街でぶらぶらしていたガキがようやく就職した会社は、とんでもない高給を保証してくれるが、裏の世界とつながった詐欺専門。
もっとまともな就職先はないものだろうか。
だがこの手の話を俺はこの何年か、ストリートの噂でうんざりするほど耳にしている。
ガキの失業率はとんでもない数字なのだ。
目先の金に飛び付くのも無理はなかった。
おれは円形広場のむこうに目をやった。
「ヨウジ、おまえは本気で会社をやめたいんだな。」
『本気だ。』
「それで二度と振り込め詐欺には手を出さない?」
『ださない』
おれはパイプベンチを立ち上がった。
同心円状に広がる石畳をゆっくりとやつのほうに近づいていった。
「おれに何ができるかわからないけど、それならやってみるよ。プリペイドじゃなく、お前の携帯の番号を教えてくれ。」
一瞬、ヨウジはためらった。丸裸にでもされる気分なんだろう。
この番号ひとつから、本名、住所、年齢、その他の個人情報をすべて調べることができるのだ。
裏の世界の情報網は、金さえだせばなんでも可能だ。