ー特別編ークリーンタウン
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「日本に帰ってきて思った。父の仕事は立派だよ。莫大な経済的富を生んでいる。でも、わたしは別な道をいこう。わたしが生むのは社会的な富がいい。アントニオや悠くんのようにね。父が垂直のビルをつくるなら、わたしは格差社会でちぎれてしまった人と人を水平に結ぶための力になろう。」
やはり頭のよすぎる人間というのは、極端なのかもしれない。
「それでアンタはごみ拾いをはじめて、つぎに誘拐犯のコーチになったのか」
カズフミは笑っていた。
「そうだ。でも、父の病気ですべてが変わってしまった。でも、わたしはこの結果で満足している。これでも、君には感謝してるんだ。」
「へえ、どうして」
「父が倒れる前日、話をしてくれただろう。父は不自由な言葉で語ってくれた。わたしには一円にならなくても心配してくれる人たちがいる。あなたはどうなんだ。父は反省していたよ。」
カズフミが笑うと、夜風でやわらかそうな前髪が揺れた。
「父と約束したんだ。わたしが入社するからには、利益のテンパーセントを社会還元のために使わせてもらいたい。そうすれば、全力で金儲けをするからってね。」
おれは声をあげてわらった。
隣に座るミッドシティの王子に目をやる。
この男が本気で金を作るというのなら、池袋の風景だって来月には絶好調かもしれなかった。
「OK、OK。わかったよ。アンタの勝ちだ。」
カズフミは力強くうなずき、首を横に振った。
「いいや。これはみんなの勝ちだ。」
俺たちはさよならをいって、超高層ビルの足元で別れた。
月曜日の夜、タカシとアズサにあった。
また西口公園のごみ拾い集会の直前である。
俺はやつにもらったピカピカのトングとポリ袋を下げていた。ステージのうえにカズフミがあがった。
拍手が巻き起こる。
キングが耳元でいった。
「あの男はとんだくわせ者だったな。」
俺は拍手に負けないように声を張った。
「ああ、俺と同じで飛び切り優秀なんだ。」
アズサが反対側からいった。
「飛び切りのお人好しなら、同感なんだけど」
俺は円形広場をとりかこむビル郡に目をやった。
都心の公園はガラスの渓谷の底にある。
夜でも昼のように明るかった。
「なあ、本当に優秀な人間がなにをするか、タカシにわかるか。」
「考えたこともないな」
俺はタカシの整った氷河のような横顔を見た。
「自分のためじゃなく、街のみんなのために働くんだってさ。」
タカシはさすがに王様で、一瞬だけ眉を潜めるといった。
「くだらない。俺たちはそんなこと、ずっと昔からやってるじゃないか」
「確かにそうだな。」
カズフミがまたいつものようにごみ拾いタイムのスタートを宣言した。
あたりはなんだか夏祭りのような賑やかさだ。
俺はキングとアズサと一緒にごみ拾いを始めた。
風が吹き、空を夜の積乱雲が駆ける。
なあ、都心の公園でのごみ拾いって、なかなかいかした趣味だと思わないか。
なんなら、アンタも来週の月曜日にでも来てみたらどうだ。
ークリーンタウン・END-
やはり頭のよすぎる人間というのは、極端なのかもしれない。
「それでアンタはごみ拾いをはじめて、つぎに誘拐犯のコーチになったのか」
カズフミは笑っていた。
「そうだ。でも、父の病気ですべてが変わってしまった。でも、わたしはこの結果で満足している。これでも、君には感謝してるんだ。」
「へえ、どうして」
「父が倒れる前日、話をしてくれただろう。父は不自由な言葉で語ってくれた。わたしには一円にならなくても心配してくれる人たちがいる。あなたはどうなんだ。父は反省していたよ。」
カズフミが笑うと、夜風でやわらかそうな前髪が揺れた。
「父と約束したんだ。わたしが入社するからには、利益のテンパーセントを社会還元のために使わせてもらいたい。そうすれば、全力で金儲けをするからってね。」
おれは声をあげてわらった。
隣に座るミッドシティの王子に目をやる。
この男が本気で金を作るというのなら、池袋の風景だって来月には絶好調かもしれなかった。
「OK、OK。わかったよ。アンタの勝ちだ。」
カズフミは力強くうなずき、首を横に振った。
「いいや。これはみんなの勝ちだ。」
俺たちはさよならをいって、超高層ビルの足元で別れた。
月曜日の夜、タカシとアズサにあった。
また西口公園のごみ拾い集会の直前である。
俺はやつにもらったピカピカのトングとポリ袋を下げていた。ステージのうえにカズフミがあがった。
拍手が巻き起こる。
キングが耳元でいった。
「あの男はとんだくわせ者だったな。」
俺は拍手に負けないように声を張った。
「ああ、俺と同じで飛び切り優秀なんだ。」
アズサが反対側からいった。
「飛び切りのお人好しなら、同感なんだけど」
俺は円形広場をとりかこむビル郡に目をやった。
都心の公園はガラスの渓谷の底にある。
夜でも昼のように明るかった。
「なあ、本当に優秀な人間がなにをするか、タカシにわかるか。」
「考えたこともないな」
俺はタカシの整った氷河のような横顔を見た。
「自分のためじゃなく、街のみんなのために働くんだってさ。」
タカシはさすがに王様で、一瞬だけ眉を潜めるといった。
「くだらない。俺たちはそんなこと、ずっと昔からやってるじゃないか」
「確かにそうだな。」
カズフミがまたいつものようにごみ拾いタイムのスタートを宣言した。
あたりはなんだか夏祭りのような賑やかさだ。
俺はキングとアズサと一緒にごみ拾いを始めた。
風が吹き、空を夜の積乱雲が駆ける。
なあ、都心の公園でのごみ拾いって、なかなかいかした趣味だと思わないか。
なんなら、アンタも来週の月曜日にでも来てみたらどうだ。
ークリーンタウン・END-