ー特別編ークリーンタウン
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おれはとっさの判断でメールの内容を変えることにした。
>もう誘拐犯の振りは
>やめくれ、カズフミ。
>今、目の前でおやじさんが
>倒れた。脳卒中らしい。
>救急車を呼んでるとこだ。
>あの飛ばしの携帯が生きてるなら
>すぐに電話をくれ。
>緊急事態なんだ。
メールを送信してから十五秒後、社長室の電話が鳴った。
ベッドほどある黒檀のデスクの電話をとったのは俺だ。
『父は大丈夫か』
カズフミの声だった。
「わからない。どちらにしても、すぐに来てくれ。」
『わかった。でも、いつから、メールの相手が私だと気づいた。』
俺がカズフミと話していることに、みな注目し始めたようだった。
「無記名債で三億円と要求がグレードアップしたときから、疑いはもっていた。板橋の相生町だっけ、そこのアパートに済んでるやつは税務署のことなんて、なにも知ってるはずがないからな」
カズフミがかすかに笑った。
『確かにそうかもしれないな、さすがに池袋一のトラブルシューターだ。これから、ミッドシティに移動する。もし途中で父が運ばれる病院がわかったら、連絡をいれてほしい』
「了解。」
俺は床に倒れたままの社長をとりまく人の輪から離れて、救急車の到着を待った。
都立大塚病院は南大塚にある総合救急病院だ。
脳神経外科もちゃんとある。
桂啓太郎は倒れてから三十分後には、救急治療室に到着していた。
脳血管の破裂に関しては、発作からの数時間が致命的に重要なのだそうだ。
啓太郎はくも膜下出血と診断され、鎮静剤を投与されて、暗い治療室で絶対安静の状態におかれた。
手術は脳内の止血が確認された翌日に行われた。
脳動脈瘤をチタンのクリップでとめる開頭手術だったという。
もちろん、俺はその手術にはつきそっていない。
それは帰ってきたカズフミの役目だ。
手術から数日して、俺は池袋ミッドシティにでかけた。
緑の芝が広がる公開緑地のベンチに座っていると、五十五階の社長室からカズフミが降りてきた。
サマーウールのペンシルストライプの紺のスーツに、紺のシルクタイ。
シャツは憂鬱そうな淡いブルーだ。
俺のとなりに座った新人専務にいった。
「おやじさんの様子はどうだい?」
カズフミは夜の緑を眺めている。
「すこし言葉が不明瞭で、左半身に麻痺が残っている。リハビリを開始しているよ。あの人は意志が本当に強いから。わたしは心配していない。」
「そうか、よかったな。」
俺たちが座るベンチに夏の夜風が吹いた。
モーツァルトの嬉遊曲を思わせる重さのない心地よい翼。
「でも、悠くんには驚いたな。あの夜、部屋をでたらSウルフのメンバーが、わたしの事を待っていた。タクシーを探すまでも無かったよ。タカシくんの車ですぐに病院だ。」
あの日は朝からSウルフが相生町で張っていたのだ。別に驚くまでもない。
「それより、アンタはなんで誘拐犯になんかのったんだ。」
カズフミはネクタイをゆるめて、シャツの第一ボタンをはずした。
>もう誘拐犯の振りは
>やめくれ、カズフミ。
>今、目の前でおやじさんが
>倒れた。脳卒中らしい。
>救急車を呼んでるとこだ。
>あの飛ばしの携帯が生きてるなら
>すぐに電話をくれ。
>緊急事態なんだ。
メールを送信してから十五秒後、社長室の電話が鳴った。
ベッドほどある黒檀のデスクの電話をとったのは俺だ。
『父は大丈夫か』
カズフミの声だった。
「わからない。どちらにしても、すぐに来てくれ。」
『わかった。でも、いつから、メールの相手が私だと気づいた。』
俺がカズフミと話していることに、みな注目し始めたようだった。
「無記名債で三億円と要求がグレードアップしたときから、疑いはもっていた。板橋の相生町だっけ、そこのアパートに済んでるやつは税務署のことなんて、なにも知ってるはずがないからな」
カズフミがかすかに笑った。
『確かにそうかもしれないな、さすがに池袋一のトラブルシューターだ。これから、ミッドシティに移動する。もし途中で父が運ばれる病院がわかったら、連絡をいれてほしい』
「了解。」
俺は床に倒れたままの社長をとりまく人の輪から離れて、救急車の到着を待った。
都立大塚病院は南大塚にある総合救急病院だ。
脳神経外科もちゃんとある。
桂啓太郎は倒れてから三十分後には、救急治療室に到着していた。
脳血管の破裂に関しては、発作からの数時間が致命的に重要なのだそうだ。
啓太郎はくも膜下出血と診断され、鎮静剤を投与されて、暗い治療室で絶対安静の状態におかれた。
手術は脳内の止血が確認された翌日に行われた。
脳動脈瘤をチタンのクリップでとめる開頭手術だったという。
もちろん、俺はその手術にはつきそっていない。
それは帰ってきたカズフミの役目だ。
手術から数日して、俺は池袋ミッドシティにでかけた。
緑の芝が広がる公開緑地のベンチに座っていると、五十五階の社長室からカズフミが降りてきた。
サマーウールのペンシルストライプの紺のスーツに、紺のシルクタイ。
シャツは憂鬱そうな淡いブルーだ。
俺のとなりに座った新人専務にいった。
「おやじさんの様子はどうだい?」
カズフミは夜の緑を眺めている。
「すこし言葉が不明瞭で、左半身に麻痺が残っている。リハビリを開始しているよ。あの人は意志が本当に強いから。わたしは心配していない。」
「そうか、よかったな。」
俺たちが座るベンチに夏の夜風が吹いた。
モーツァルトの嬉遊曲を思わせる重さのない心地よい翼。
「でも、悠くんには驚いたな。あの夜、部屋をでたらSウルフのメンバーが、わたしの事を待っていた。タクシーを探すまでも無かったよ。タカシくんの車ですぐに病院だ。」
あの日は朝からSウルフが相生町で張っていたのだ。別に驚くまでもない。
「それより、アンタはなんで誘拐犯になんかのったんだ。」
カズフミはネクタイをゆるめて、シャツの第一ボタンをはずした。