ー特別編ークリーンタウン
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パソコンを閉じて帰ろうとしたとき、カズフミのおやじさんから声をかけられた。
「小鳥遊くん、ちょっといいかな」
さすがにこれだけ広いと部屋の隅に移動するだけで、ふたりきりになれる。
俺はミッドシティの主と空にむかう窓辺に立った。
こんな高さの塔を自分のものにするのは、いったいどんな気分なのだろうか。
「和文のことで、君に聞きたいことがある。警備会社の人間に報告を受けたのだが、息子は誘拐される前に、自分と君はよく似ているといっていたそうだ。心当たりは無いかね。」
この帝国の王位継承者とUFOキャッチャーがむやみにうまい俺。
どこを探しても似てるとこなんてない。
「カズフミは日本とアメリカでふたつの大学をでたんですよね。頭はいい、成績も優秀だ。それでいて、人を引き付けるような魅力もある。俺とは人間の出来が違います。」
啓太郎はため息をついた。ほんの五ミリほど、仕立てのいいスーツの肩が落ちた。
「あの子はちいさなころから、それは優秀で素直だった。だが、大学生になってから、人が変わった。わたしがなにをさしだしても、それはいらないとつっぱねるんだ。」
俺にも天上人な親父はいる、差し出されるような好条件の資金もあるかもしれない。
だから、少しだけ息子の気持ちもわかった。
「自分の力だけでなにかをやりたいと、どんな子供だって考えるもんです。おやじさんは、こんなビルをたてるほど成功した。カズフミもなにか自分にできる別な仕事をやりたかったんじゃないですか。ただし……」
桂リライアンスの社長が俺のほうを見た。
窓には東京の半分が豪華絢爛にひろがっている。
「ただし、なんだね。」
「そいつはアナタがやったように空高く伸びるのではなく、地面にへばりつくような方法かもしれない。あんまり金にならないかもしれない。だけど、俺は今日の午後、頭の悪いガキに頼まれたんです。カズフミはこの街にとって、とても大切な人間だ。だから、ぜひとりもどして欲しいって。俺、失礼なことをひとつ聞いてもいいですか?」
個人資産一兆二千億のデベロッパーは、静かにうなずいた。
俺は前髪をかきあげてしっかりと見つめた。
「あなたがカズフミと同じように誘拐されて、一円の利害関係もない人間がそんなふうにいってくれますか。アナタには訳のわからないダメ息子かもしれないけど、俺はそういう街のガキを何百人も知ってます。それはアナタの息子さんが、とても豊かだってことじゃないんですか」
啓太郎は黙ったまま答えなかった。
家族の処刑を命じたときのアルパチーノの顔である。
これでつうじなかったら、仕方ない。
「ガキが出過ぎた発言をしてスイマセン。これで失礼します。また、明日」
会釈して帰ろうとしたら、ミッドシティの王が背中越しにいった。
「いくつになっても新しく考えなければならないことがあるものだな」
俺はもう一度、頭をさげて王の居室を退場した。
「小鳥遊くん、ちょっといいかな」
さすがにこれだけ広いと部屋の隅に移動するだけで、ふたりきりになれる。
俺はミッドシティの主と空にむかう窓辺に立った。
こんな高さの塔を自分のものにするのは、いったいどんな気分なのだろうか。
「和文のことで、君に聞きたいことがある。警備会社の人間に報告を受けたのだが、息子は誘拐される前に、自分と君はよく似ているといっていたそうだ。心当たりは無いかね。」
この帝国の王位継承者とUFOキャッチャーがむやみにうまい俺。
どこを探しても似てるとこなんてない。
「カズフミは日本とアメリカでふたつの大学をでたんですよね。頭はいい、成績も優秀だ。それでいて、人を引き付けるような魅力もある。俺とは人間の出来が違います。」
啓太郎はため息をついた。ほんの五ミリほど、仕立てのいいスーツの肩が落ちた。
「あの子はちいさなころから、それは優秀で素直だった。だが、大学生になってから、人が変わった。わたしがなにをさしだしても、それはいらないとつっぱねるんだ。」
俺にも天上人な親父はいる、差し出されるような好条件の資金もあるかもしれない。
だから、少しだけ息子の気持ちもわかった。
「自分の力だけでなにかをやりたいと、どんな子供だって考えるもんです。おやじさんは、こんなビルをたてるほど成功した。カズフミもなにか自分にできる別な仕事をやりたかったんじゃないですか。ただし……」
桂リライアンスの社長が俺のほうを見た。
窓には東京の半分が豪華絢爛にひろがっている。
「ただし、なんだね。」
「そいつはアナタがやったように空高く伸びるのではなく、地面にへばりつくような方法かもしれない。あんまり金にならないかもしれない。だけど、俺は今日の午後、頭の悪いガキに頼まれたんです。カズフミはこの街にとって、とても大切な人間だ。だから、ぜひとりもどして欲しいって。俺、失礼なことをひとつ聞いてもいいですか?」
個人資産一兆二千億のデベロッパーは、静かにうなずいた。
俺は前髪をかきあげてしっかりと見つめた。
「あなたがカズフミと同じように誘拐されて、一円の利害関係もない人間がそんなふうにいってくれますか。アナタには訳のわからないダメ息子かもしれないけど、俺はそういう街のガキを何百人も知ってます。それはアナタの息子さんが、とても豊かだってことじゃないんですか」
啓太郎は黙ったまま答えなかった。
家族の処刑を命じたときのアルパチーノの顔である。
これでつうじなかったら、仕方ない。
「ガキが出過ぎた発言をしてスイマセン。これで失礼します。また、明日」
会釈して帰ろうとしたら、ミッドシティの王が背中越しにいった。
「いくつになっても新しく考えなければならないことがあるものだな」
俺はもう一度、頭をさげて王の居室を退場した。