ー特別編ークリーンタウン
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俺がきいた一番悪質なやつをひとつ話しておこう。
まずなかなか立ち退きがすすまないビルのドブネズミを一匹捕まえる。
尻尾にぼろきれを巻きつけ、そこに灯油をかける。
あとは簡単。
火をつけて、元のビルに戻すだけで一丁あがりだ。
誰が放火したのかわからない不審火の完成である。
俺はうなるようにいった。
「ああ、聞いたことがある。」
アズサはまるでスイートな顔をしていなかった。
テレビドラマの学生のようなルックス。
やつはチラリと横目でおれを見ていった。
「カズフミさんはゴミ拾いから始めて、もっとなにか別な仕事をやろうとしていたんじゃないかな。おやじさんはああいう人だから、この街を上下に裂いたよな。でも、地面に落ちてバラバラになったやつらを、あの人は結びつけようとした。おれ、ゴミ拾いってそういうことだったって思ってるんだ。」
格差社会のどん底で砂のように散らばった人間を結びつける仕事。
そんなことができたら、どれだけ素晴らしいことか。俺はアズサにいった。
「そのためにカズフミはなにをやろうとしていたんだろう。」
「……わからない。でも、ゴミ拾いに集まる契約社員やアルバイトの奴らのことをすごく気にしてたよ。みんなには家が必要だ。二十四時間営業のファーストフードやネットカフェじゃなくて、脚を伸ばして眠れる家が必要だって。」
自立支援のためのみんなの家か。
公的な資金ではなく、民間の金でそんなものが建てられたらどれだけいいだろう。
おれはゴミ拾いから始まるカズフミの遠大な目標について想像していた。
目をあげると、池袋の夏空にはきらきらと輝きながら内側から盛り上がる積乱雲が浮かんでいる。
何千トンという重さのある雲だって、空に浮かぶのだ。
ゴミ拾いから街が変わることだってないとは言えなかった。
「話しは変わるけど、クリーン運動の中って一枚和だったのかな。」
アズサは腕組みをしていった。
「いや、それはSウルフとは違うよ。鉄の規律なんてないから。カズフミさんは来るもの拒まずだったし」
「じゃあ、あまり程度のよくない連中もいたのか」
ニールバンカーの仮組員は、ぐるぐると頭を回した。
「あぁ、最初のうちは有志のボランティアだったけど……ああいうのはファッションになってしまう。このひと月は形だけ参加するような、いかれたガキもたくさんいた。Sウルフにでもなったつもりで、月曜の夜だけ肩で風を切って歩いたりして」
「そうか。そういうグループのなかで、最近姿を見ないやつらを調べられないかな」
俺には三千万がやはり気にかかっていたのだ。
個人資産一兆二千億の桂太郎から奪うのがその金額ということは、大金の額の桁数がそこでストップしている人間なのだろう。
仕事の無いガキかフリーターを俺は考えていた。
もっとも、そいつは三億円分の無記名債を要求するような人間とは、まったく生まれも育ちも違うのだろうが。
まずなかなか立ち退きがすすまないビルのドブネズミを一匹捕まえる。
尻尾にぼろきれを巻きつけ、そこに灯油をかける。
あとは簡単。
火をつけて、元のビルに戻すだけで一丁あがりだ。
誰が放火したのかわからない不審火の完成である。
俺はうなるようにいった。
「ああ、聞いたことがある。」
アズサはまるでスイートな顔をしていなかった。
テレビドラマの学生のようなルックス。
やつはチラリと横目でおれを見ていった。
「カズフミさんはゴミ拾いから始めて、もっとなにか別な仕事をやろうとしていたんじゃないかな。おやじさんはああいう人だから、この街を上下に裂いたよな。でも、地面に落ちてバラバラになったやつらを、あの人は結びつけようとした。おれ、ゴミ拾いってそういうことだったって思ってるんだ。」
格差社会のどん底で砂のように散らばった人間を結びつける仕事。
そんなことができたら、どれだけ素晴らしいことか。俺はアズサにいった。
「そのためにカズフミはなにをやろうとしていたんだろう。」
「……わからない。でも、ゴミ拾いに集まる契約社員やアルバイトの奴らのことをすごく気にしてたよ。みんなには家が必要だ。二十四時間営業のファーストフードやネットカフェじゃなくて、脚を伸ばして眠れる家が必要だって。」
自立支援のためのみんなの家か。
公的な資金ではなく、民間の金でそんなものが建てられたらどれだけいいだろう。
おれはゴミ拾いから始まるカズフミの遠大な目標について想像していた。
目をあげると、池袋の夏空にはきらきらと輝きながら内側から盛り上がる積乱雲が浮かんでいる。
何千トンという重さのある雲だって、空に浮かぶのだ。
ゴミ拾いから街が変わることだってないとは言えなかった。
「話しは変わるけど、クリーン運動の中って一枚和だったのかな。」
アズサは腕組みをしていった。
「いや、それはSウルフとは違うよ。鉄の規律なんてないから。カズフミさんは来るもの拒まずだったし」
「じゃあ、あまり程度のよくない連中もいたのか」
ニールバンカーの仮組員は、ぐるぐると頭を回した。
「あぁ、最初のうちは有志のボランティアだったけど……ああいうのはファッションになってしまう。このひと月は形だけ参加するような、いかれたガキもたくさんいた。Sウルフにでもなったつもりで、月曜の夜だけ肩で風を切って歩いたりして」
「そうか。そういうグループのなかで、最近姿を見ないやつらを調べられないかな」
俺には三千万がやはり気にかかっていたのだ。
個人資産一兆二千億の桂太郎から奪うのがその金額ということは、大金の額の桁数がそこでストップしている人間なのだろう。
仕事の無いガキかフリーターを俺は考えていた。
もっとも、そいつは三億円分の無記名債を要求するような人間とは、まったく生まれも育ちも違うのだろうが。