ー特別編ークリーンタウン
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その日はなにも起こらない静かな一日。
だいたい俺はカズフミの失踪事件になんて、かかわるつもりがないんだから、そいつも当たり前。
おれはモーツァルトの嬉遊曲をききながら、冷房の聴いた部屋で優雅な一日を過ごした。
その夜、意外な来客があったのは、夜十時すぎのことだった。
かなりくたびれた灰色のスーツのふたり組だ。
どっちが大久保で、どっちが角田だったかな。
スポークスマンの小柄なほうがいった。
「もうしわけないが、君の力を貸してもらえないだろうか」
それをいうだけでも、プロのプライドが許さないようだった。
チビの顔は真っ赤だ。
俺は抱えたバナナ(二十本くらい)の房から一本千切ってゆっくり皮をむきながらいった。
「やだね。」
黙々とバナナをかじる。
なんでかこーゆーフルーツって大量の房で食べたくなるよな。
「今朝の非礼は、申し訳なかった。さあ、大久保」
チビが後ろをむいていった。
灰色スーツのふたりが、うちの玄関先で深々と頭をさげる。
そいつはなかなかの見ものだった。
俺はバナナを二つやつらにさしだした。
「くえよ。俺に頭をさげるなんて、よほど困ったことがあったんだな。話してくれ。」
そこで、俺たち三人は庭石に腰かけて、バナナをくいながら話をすることになった。
ちいさいほうの角田の話はこんな調子。
桂リライアンスに電話が入ったのは、朝一番のことだったという。
最初に出たのは広報室で、それが秘書室をまわり、最後には社長の桂啓太郎につながった。
気の長い誘拐犯だ。
そこでようやく犯人は肝心の話をした。
一人息子は預かっている。身代金は三千万。
あんたならポケットマネーだろう。
今日中に用意しろ。
こっちには息子を殺すつもりはないし、その程度のはした金で警察騒ぎにするのは会社のためによくないだろ。
俺は中途半端な身代金に引っ掛かった。
「三千万といったのか。あのミッドシティの持ち主に。」
角田は俺にうなずいた。
となりの大久保は、俺が犯人の一味であるかのような目でこっちを見ている。
「そうだ。殺害の意思はないというのもおかしな話で、最初は悪質な冗談かとおもった。だが、社長が手を尽くしても、和文さんと連絡がとれない。クリーン運動とかいうグループに確かめたが、結果は同じだ。」
「それで今日いったい何が起きたんだ。アンタたちの手のひら返しが急すぎる。」
灰色スーツは目を見合わせた。
チビの元警官がいう。
「あんたはなかなか回転が早いな。今日の午後六時だった。三千万円を用意して、わたしたちは西口公園のバスターミナルで網を張っていた。」
俺がよくブラブラしてる辺りで、そんな取引があったのだ。
東京という街は、いつなにが起きているかわからないものだ。
そういえば、このまえ渋谷で温泉が爆発したっけ。
チビの話は続く。
「計画では金は渡すつもりだった。ただ、そのまま逃がすわけにはいかないから、尾行をつけと和文さんの安全だけは確保する。スムーズな作戦だ。」
だが、現場ではいつだって予測不可能な事が起きる。俺はいった。
「誰かがヘマをした」
「そうだ」
だいたい俺はカズフミの失踪事件になんて、かかわるつもりがないんだから、そいつも当たり前。
おれはモーツァルトの嬉遊曲をききながら、冷房の聴いた部屋で優雅な一日を過ごした。
その夜、意外な来客があったのは、夜十時すぎのことだった。
かなりくたびれた灰色のスーツのふたり組だ。
どっちが大久保で、どっちが角田だったかな。
スポークスマンの小柄なほうがいった。
「もうしわけないが、君の力を貸してもらえないだろうか」
それをいうだけでも、プロのプライドが許さないようだった。
チビの顔は真っ赤だ。
俺は抱えたバナナ(二十本くらい)の房から一本千切ってゆっくり皮をむきながらいった。
「やだね。」
黙々とバナナをかじる。
なんでかこーゆーフルーツって大量の房で食べたくなるよな。
「今朝の非礼は、申し訳なかった。さあ、大久保」
チビが後ろをむいていった。
灰色スーツのふたりが、うちの玄関先で深々と頭をさげる。
そいつはなかなかの見ものだった。
俺はバナナを二つやつらにさしだした。
「くえよ。俺に頭をさげるなんて、よほど困ったことがあったんだな。話してくれ。」
そこで、俺たち三人は庭石に腰かけて、バナナをくいながら話をすることになった。
ちいさいほうの角田の話はこんな調子。
桂リライアンスに電話が入ったのは、朝一番のことだったという。
最初に出たのは広報室で、それが秘書室をまわり、最後には社長の桂啓太郎につながった。
気の長い誘拐犯だ。
そこでようやく犯人は肝心の話をした。
一人息子は預かっている。身代金は三千万。
あんたならポケットマネーだろう。
今日中に用意しろ。
こっちには息子を殺すつもりはないし、その程度のはした金で警察騒ぎにするのは会社のためによくないだろ。
俺は中途半端な身代金に引っ掛かった。
「三千万といったのか。あのミッドシティの持ち主に。」
角田は俺にうなずいた。
となりの大久保は、俺が犯人の一味であるかのような目でこっちを見ている。
「そうだ。殺害の意思はないというのもおかしな話で、最初は悪質な冗談かとおもった。だが、社長が手を尽くしても、和文さんと連絡がとれない。クリーン運動とかいうグループに確かめたが、結果は同じだ。」
「それで今日いったい何が起きたんだ。アンタたちの手のひら返しが急すぎる。」
灰色スーツは目を見合わせた。
チビの元警官がいう。
「あんたはなかなか回転が早いな。今日の午後六時だった。三千万円を用意して、わたしたちは西口公園のバスターミナルで網を張っていた。」
俺がよくブラブラしてる辺りで、そんな取引があったのだ。
東京という街は、いつなにが起きているかわからないものだ。
そういえば、このまえ渋谷で温泉が爆発したっけ。
チビの話は続く。
「計画では金は渡すつもりだった。ただ、そのまま逃がすわけにはいかないから、尾行をつけと和文さんの安全だけは確保する。スムーズな作戦だ。」
だが、現場ではいつだって予測不可能な事が起きる。俺はいった。
「誰かがヘマをした」
「そうだ」