ー特別編ークリーンタウン
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ベンチに座り、星の見えない明るい夏の夜空をぼんやり眺める。
そのまま一時間空を見ている時間。
おれにはそいつは、文句なしに生きてる実感を確かめる瞬間だ。
そんなときに聞くのは、あまり理屈っぽい現代音楽なんかじゃないほうがいい。
そのとき俺のiPodに入っていたのは、モーツァルトのディヴェルティメント十五番。
どこかの金持ちのパーティのために、天才が書き飛ばした名作である。
夜の空に透明な翼が何枚も広がり羽ばたいていく。
池袋みたいに汚れた街だって、丸ごと空に連れていってくれそうなメロディーの翼だった。
すると誰かが、俺の座っているパイプベンチをこつこつと叩いた。
灰色の雲がゆっくりと形を変える夜空から顔をもどすと、目の前にはゴミ拾い用のトングをもったメガネ男が立っていた。
洗いざらしのジーンズに、白いシャツ。
俺がヘッドホンをはずすと、男はニコリと笑っていった。
「ちょっと足をどかしてもらっていいかな。吸い殻が落ちてるんだ。」
俺は慌ててサンダルを動かした。
やつは慣れた手つきで吸い殻をつまみ、白いポリ袋にいれた。
ほかにゴミは無いようだが、立ち去ろうとしない。
じっと俺を見て、なにかを計っているようだった。
俺のいかしたスリーサイズだろうか。
「なにか話しでもあるのか?」
男はメガネを直して、辛抱強い笑顔を続ける。
「小鳥遊悠くんだよね。わたしはある人から、きみの写メールをもらったことがあってね。」
「はっ、俺の写メ?」
「機会があったらお近づきになっておいたほうがいいといわれたんだ。この街でなにかをするなら、悠くんの友人になっておいて損はないと」
ある人とは誰だろうか。
俺は暴力団関係の誰かでは無いことを祈った。
あっちのやつらとは、ミッドシティのように別な世界で暮らしたいからな。
「その人は悠くんの友人だといっていた。虎狗琥くんと言うんだけどね。」
俺と同じで、何処にでも顔をだす池袋のガキの王だった。
この男はこっちの顔色だけで気持ちを察する。
でたらめに敏感な男だった。
二十代後半だろうか。
じっと俺を見ていった。
「となりに座ってもいいかな」
「どぞ。」
やつはポリ袋を丸めてウエストポーチにいれた。
ベンチに座ると、まっすぐ正面を見て口を開いた。
「わたしは桂和文。仕事は三ヶ月まえから、ゴミ拾いをしている」
おもしろい男。
池袋クリーン運動が出現したのは、この春のことだ。
見たことない黄色いチームがやって来たのだから、Sウルフのほうでも当初は大分警戒していたようだ。
そのまま一時間空を見ている時間。
おれにはそいつは、文句なしに生きてる実感を確かめる瞬間だ。
そんなときに聞くのは、あまり理屈っぽい現代音楽なんかじゃないほうがいい。
そのとき俺のiPodに入っていたのは、モーツァルトのディヴェルティメント十五番。
どこかの金持ちのパーティのために、天才が書き飛ばした名作である。
夜の空に透明な翼が何枚も広がり羽ばたいていく。
池袋みたいに汚れた街だって、丸ごと空に連れていってくれそうなメロディーの翼だった。
すると誰かが、俺の座っているパイプベンチをこつこつと叩いた。
灰色の雲がゆっくりと形を変える夜空から顔をもどすと、目の前にはゴミ拾い用のトングをもったメガネ男が立っていた。
洗いざらしのジーンズに、白いシャツ。
俺がヘッドホンをはずすと、男はニコリと笑っていった。
「ちょっと足をどかしてもらっていいかな。吸い殻が落ちてるんだ。」
俺は慌ててサンダルを動かした。
やつは慣れた手つきで吸い殻をつまみ、白いポリ袋にいれた。
ほかにゴミは無いようだが、立ち去ろうとしない。
じっと俺を見て、なにかを計っているようだった。
俺のいかしたスリーサイズだろうか。
「なにか話しでもあるのか?」
男はメガネを直して、辛抱強い笑顔を続ける。
「小鳥遊悠くんだよね。わたしはある人から、きみの写メールをもらったことがあってね。」
「はっ、俺の写メ?」
「機会があったらお近づきになっておいたほうがいいといわれたんだ。この街でなにかをするなら、悠くんの友人になっておいて損はないと」
ある人とは誰だろうか。
俺は暴力団関係の誰かでは無いことを祈った。
あっちのやつらとは、ミッドシティのように別な世界で暮らしたいからな。
「その人は悠くんの友人だといっていた。虎狗琥くんと言うんだけどね。」
俺と同じで、何処にでも顔をだす池袋のガキの王だった。
この男はこっちの顔色だけで気持ちを察する。
でたらめに敏感な男だった。
二十代後半だろうか。
じっと俺を見ていった。
「となりに座ってもいいかな」
「どぞ。」
やつはポリ袋を丸めてウエストポーチにいれた。
ベンチに座ると、まっすぐ正面を見て口を開いた。
「わたしは桂和文。仕事は三ヶ月まえから、ゴミ拾いをしている」
おもしろい男。
池袋クリーン運動が出現したのは、この春のことだ。
見たことない黄色いチームがやって来たのだから、Sウルフのほうでも当初は大分警戒していたようだ。