ー特別編ーVS不死鳥プロジェクト
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「おれたちが生きてるバカな世界では、おおきな正義の前で、どれくらいちいさな犠牲が許されるんだろうか」
「私の妻は、いつもいっていたよ。法律だとか力だとかは、ほんとうに細心の注意で使った方がいい。アナタは選ばれた人だから、どれほど気を使っても使いすぎることはないと。その妻が自殺を図ったのは、私の出世のためだった。考えてみると、あれは私にももっとおおきな力をもたせ、それを誰よりも細心に使わせたかったのかもしれないな」
おれは軍パンの尻ポケットから、黒のニット帽を抜き出した。
コウイチの血がこびりついたままだ。
「今日の夕方、おれの身代わりで若い男が刺された。おれのダチだった。おれの目の前でだぞ。きっと犯人は池上組の関係者だろう。見てくれ。」
おれは自分の分を脱ぎ、ふたつならべてやつの前にさしだした。
「コウイチはいいやつだけど池袋のお見合いパブで呼び込みをしているあまり頭の良くないガキだ。アンタの奥さんもホステスだったんだよな。治安回復ができるなら、風俗で働いてるようなやつは刺されたり、つま弾きにされてもしょうがないのかな。」
朧沢は血で濡れたニット帽を手にした。
胸に抱え込む。
白いシャツがなすったように血で汚れた。
おれの目を見ていった。
「そんなことがあったのか。すまない。池上を徹底的に締め上げることにする。それが副知事としての私の最後になるだろう。」
じっとやつの目を見つめた。嘘はいっていないようだ。
「待てよ。おれはこのデータをバラ撒くなんて、一言もいってないぞ。アンタにはまだやらなきゃならない仕事があるんだろ。そいつは俺みたいに街の底にへばりついてる人間には絶対にできない仕事のはずだ。おれはいつもアンタのことを見ている。アンタがもう一度道を外れそうになったら、その時はあいつをバラ撒くことにする。」
おれは柏のほうを振り向いた。
「それでいいかな、警部さん」
柏はうなずいて、おれに献金リストを戻した。
おれたちの街の警部はいった。
「おれはこれを見なかったことにします。不死鳥プロジェクトの再検討をお願いします、副知事」
おれはプリントアウトを細かに引き裂いた。
「そろにはおれもいいたいことがある。だけど、そいつはまた今度な。専用のSPを廊下に待たせているんで。」
「待ちなさい。」
朧沢は窓を離れ、おれのところにやってきた。
コウイチのニット帽と同時に握手の手を差し出した。
おれは副知事の手をしっかりと握った。
「そのニット帽はアンタが持っていてくれ。新しい法律をひとつつくるたびに、どんな形で…苦しむ人間がでるか。その…証として、いつも手元において、眺めてほしい。…じゃあ」
おれは真夜中のスイートルームを離れた。
副知事が見送っているのだ。
背中が曲がってないかどうか少しだけ心配だった。
「私の妻は、いつもいっていたよ。法律だとか力だとかは、ほんとうに細心の注意で使った方がいい。アナタは選ばれた人だから、どれほど気を使っても使いすぎることはないと。その妻が自殺を図ったのは、私の出世のためだった。考えてみると、あれは私にももっとおおきな力をもたせ、それを誰よりも細心に使わせたかったのかもしれないな」
おれは軍パンの尻ポケットから、黒のニット帽を抜き出した。
コウイチの血がこびりついたままだ。
「今日の夕方、おれの身代わりで若い男が刺された。おれのダチだった。おれの目の前でだぞ。きっと犯人は池上組の関係者だろう。見てくれ。」
おれは自分の分を脱ぎ、ふたつならべてやつの前にさしだした。
「コウイチはいいやつだけど池袋のお見合いパブで呼び込みをしているあまり頭の良くないガキだ。アンタの奥さんもホステスだったんだよな。治安回復ができるなら、風俗で働いてるようなやつは刺されたり、つま弾きにされてもしょうがないのかな。」
朧沢は血で濡れたニット帽を手にした。
胸に抱え込む。
白いシャツがなすったように血で汚れた。
おれの目を見ていった。
「そんなことがあったのか。すまない。池上を徹底的に締め上げることにする。それが副知事としての私の最後になるだろう。」
じっとやつの目を見つめた。嘘はいっていないようだ。
「待てよ。おれはこのデータをバラ撒くなんて、一言もいってないぞ。アンタにはまだやらなきゃならない仕事があるんだろ。そいつは俺みたいに街の底にへばりついてる人間には絶対にできない仕事のはずだ。おれはいつもアンタのことを見ている。アンタがもう一度道を外れそうになったら、その時はあいつをバラ撒くことにする。」
おれは柏のほうを振り向いた。
「それでいいかな、警部さん」
柏はうなずいて、おれに献金リストを戻した。
おれたちの街の警部はいった。
「おれはこれを見なかったことにします。不死鳥プロジェクトの再検討をお願いします、副知事」
おれはプリントアウトを細かに引き裂いた。
「そろにはおれもいいたいことがある。だけど、そいつはまた今度な。専用のSPを廊下に待たせているんで。」
「待ちなさい。」
朧沢は窓を離れ、おれのところにやってきた。
コウイチのニット帽と同時に握手の手を差し出した。
おれは副知事の手をしっかりと握った。
「そのニット帽はアンタが持っていてくれ。新しい法律をひとつつくるたびに、どんな形で…苦しむ人間がでるか。その…証として、いつも手元において、眺めてほしい。…じゃあ」
おれは真夜中のスイートルームを離れた。
副知事が見送っているのだ。
背中が曲がってないかどうか少しだけ心配だった。