「そいつはこの子の敵討ちに関係あるのかい」

うなずいた。
おれが邪魔になったのは、池上組系列の誰かに決まっている。

組対部のほうから、今度の裏の動きが漏れたのかもしれない。

コウイチは救急隊員に止血と点滴を受けている。
ストレッチャーにのせられ、運ばれていった。

「おれは…俺が…今夜、不死鳥に片をつけるつもりだ。」

オフクロさんは真っ赤な目をしていった。

「いってきな、悠。負けて帰ってきたら許さないからね！」

「悠くん。任せたよ。」

警察がやってくるまうに、おれは犯行現場から姿を消した。










すぐに電話を入れたのは、タカシのところだった。
やつの声は真冬を控えて一段と冷え込んでいた。

『どうした』

「ひと違いで、おれによく似たやつが刺された。リッカの店のまえだ。」

タカシはおれのことを誰よりもよく知っている。
やられたままでいるわけにはいかなかった。

抑えた声でやつはいう。

『お前は、どうしたい。』

「ボディーガードを四人貸してほしい。こいつはこのまえの仕事とは別料金だ。飛び切りのやつを頼む。」

かすかに笑って、キングはいった。

『そうなると、おれを含めてあと三人だな。どこにいる？すぐに迎えにいく。そこを動くな。』

おれは西口ロータリーの隅にある交番のまえにたっていた。

いくら武闘派の池上組でも、ここで再襲撃はないだろう。

SウルフのRVが来るまでの15分間、おれは交番の壁を背中に張り付けていた。


真夜中の十二時、ヒルトン東京のロビーは、華やかに閑散としていた。

ロビーの端に立つおれの周りを、四人のSウルフが囲んでいる。

澪、梓、紅、本郷…
どいつも知り合いばかりだが、十分過ぎるボディーガードだ。

タカシはおれの背中を守っていた。

約束の時間ちょうどに、珍しくスリーピースを着た柏がエレベーターの方からやってきた。

おれの周囲を見てからいう。

「おい、そいつらは。」

おれはうなずいていった。

「おれのボディーガード」

「そのまま全員を部屋に入れるわけにはいかねぇな。」

「いいよ。ドアの前まででいい。」

「わかった。」

おれたちは一塊になって、エレベーターに向かった。
部屋は二十四階のスイートルームだった。
予約をいれたのは、朧沢副知事だという。

厚いじゅうたんの張られた廊下で、おれはタカシにいった。

「ここで待っていてくれ。誰が来ても中には入れないようにな。」

キングは王の余裕でおれにうなずいてみせる。

「俺がやると言ったことを失敗したことがあるか？」

おれはうなずいて、柏と一緒にスイートルームにはいった。