ー特別編ーVS不死鳥プロジェクト
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カズミの供述をとり終えるころ、時計はすでに十一時をまわっていた。
廊下のベンチで待つおれのとなりには、イクミが座っている。
お決まりの白いブラウスに、紺のスカート。
昭和中期の音楽教師のコスプレのようだ。
生活安全課の取調室からカズミが出てくる。
おれとイクミに気づいて、一瞬足がとまった。
「お姉ちゃん……」
イクミが泣いていた。
ジーンズにカーディガンを羽織ったカズミは自分の身体を抱くようにして、おれたちのまえにたった。
「あーあ、またこんな感じになっちゃった。別に助けてほしいとも思わなかったけどさ。」
妹に救われた姉は照れているようだった。
永遠のライバルでもある姉妹の再会の雰囲気を壊さないように、おれはその場を立ち去ることにした。
最後にいう。
「カズミ、アンタが妹をどう思おうと自由だ。…でもな、彼女はなけなしの留学資金まで、今度の件につぎこんでいる。アンタをあの店から抜けさせるためにな。ピアノが上手い下手じゃなく、アンタのことを思う妹の気持ちも考えてやれよ。」
カズミはハッと驚きの目を見開いておれを見た。
ニッと微笑み返す。
それからゆっくりと妹の目を覗きこむ。
抱き合って涙を流す女たちをあとにして、おれは池袋署を離れた。
あーあ、結局イクミをデートには誘えなかったな…。
池袋署がデリヘル「ラブネスト」と金融業「一ツ木企画」それにホストクラブ「ブラックスワン」に強制捜査がはいったのは、翌土曜日の午後七時だった。
全三十八室あるデリヘルの個室はほぼ満杯だったという。
本番中の会社員はさぞびっくりしたことだろう。
従業員と女たちあわせて四十六人が、その場で引っ張られている。
グリーン大通りの一ツ木企画からは、段ボール箱二十個分の関係書類が押収されたそうだ。
ホストクラブの代表と幹部数名は事情聴取を受けた。
その日は夜中まで、おれの携帯は鳴りっぱなしだった。
最初は一ノ瀬組の若き幹部ケンジから。
『やったな、悠。これであのデリヘルは閉店だ。一ツ木のやつらも、しばらくはおとなしくしていることだろう。オヤジさんが、えらくお前のことを誉めてたぞ。あれくらいの金は安いもんだとな。』
ダイキとカズミの借金は、豊島開発と一ノ瀬組の金で埋めるつもりだったのだ。
だってさ、妹の留学資金を吐き出させるわけにはいかないだろ…。
おれの出来るせめてものサービスさ。
つぎは池袋のキング、タカシから。
『お前の冗談を女たちが本気にしている。うるさくてたまらない。デリヘルが片付いたら、おれの方のトラブルも解決してくれよ。それから、女たちへの報酬も忘れずに。またなにかあったら、声をかけろ。』
やんごとない御方からのありがたいお言葉だった。
「ああ、女たちへのキスに飽きたら、どこかへのみにいこう」
返事はなく通話は切れたが、俺にはやつが笑ったのがわかった。
廊下のベンチで待つおれのとなりには、イクミが座っている。
お決まりの白いブラウスに、紺のスカート。
昭和中期の音楽教師のコスプレのようだ。
生活安全課の取調室からカズミが出てくる。
おれとイクミに気づいて、一瞬足がとまった。
「お姉ちゃん……」
イクミが泣いていた。
ジーンズにカーディガンを羽織ったカズミは自分の身体を抱くようにして、おれたちのまえにたった。
「あーあ、またこんな感じになっちゃった。別に助けてほしいとも思わなかったけどさ。」
妹に救われた姉は照れているようだった。
永遠のライバルでもある姉妹の再会の雰囲気を壊さないように、おれはその場を立ち去ることにした。
最後にいう。
「カズミ、アンタが妹をどう思おうと自由だ。…でもな、彼女はなけなしの留学資金まで、今度の件につぎこんでいる。アンタをあの店から抜けさせるためにな。ピアノが上手い下手じゃなく、アンタのことを思う妹の気持ちも考えてやれよ。」
カズミはハッと驚きの目を見開いておれを見た。
ニッと微笑み返す。
それからゆっくりと妹の目を覗きこむ。
抱き合って涙を流す女たちをあとにして、おれは池袋署を離れた。
あーあ、結局イクミをデートには誘えなかったな…。
池袋署がデリヘル「ラブネスト」と金融業「一ツ木企画」それにホストクラブ「ブラックスワン」に強制捜査がはいったのは、翌土曜日の午後七時だった。
全三十八室あるデリヘルの個室はほぼ満杯だったという。
本番中の会社員はさぞびっくりしたことだろう。
従業員と女たちあわせて四十六人が、その場で引っ張られている。
グリーン大通りの一ツ木企画からは、段ボール箱二十個分の関係書類が押収されたそうだ。
ホストクラブの代表と幹部数名は事情聴取を受けた。
その日は夜中まで、おれの携帯は鳴りっぱなしだった。
最初は一ノ瀬組の若き幹部ケンジから。
『やったな、悠。これであのデリヘルは閉店だ。一ツ木のやつらも、しばらくはおとなしくしていることだろう。オヤジさんが、えらくお前のことを誉めてたぞ。あれくらいの金は安いもんだとな。』
ダイキとカズミの借金は、豊島開発と一ノ瀬組の金で埋めるつもりだったのだ。
だってさ、妹の留学資金を吐き出させるわけにはいかないだろ…。
おれの出来るせめてものサービスさ。
つぎは池袋のキング、タカシから。
『お前の冗談を女たちが本気にしている。うるさくてたまらない。デリヘルが片付いたら、おれの方のトラブルも解決してくれよ。それから、女たちへの報酬も忘れずに。またなにかあったら、声をかけろ。』
やんごとない御方からのありがたいお言葉だった。
「ああ、女たちへのキスに飽きたら、どこかへのみにいこう」
返事はなく通話は切れたが、俺にはやつが笑ったのがわかった。