ー特別編ーVS不死鳥プロジェクト
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「タバコは喉痛めるぞ。」
手のなかで銀のライターを転がしている。
ドクロのレリーフがついたワイルドなやつ。
おれの視線に気づいたようだった。
「ふふ、これはあのダイキとかいうホストからいただいちゃった。あんなに高い飲み代をふっかけるんだから、このくらいいいよね。」
おれは肩をすくめた。
こいつのまえではあまり高価なものはだしておかないほうがいいかもしれない。
「うちの音大って、コンクールに出場するには教授の推薦がいるんだ。この夏の選抜試験があってさ、わたしは落ちて、あの子は受かった。そのあとで先生にいわれたよ。そろそろコンサートピアニストではなく、別の生き方を考える時期なんじゃないかって、『ブラックスワン』に初めていったのは、その日の夜だったな。」
十五年以上胸に秘めていた夢を、誰かに決定的に砕かれる。
それもその誰かは、実の妹だったのだ。
才能と適性で圧倒的な差があったのだろうか…。
つくづくおれはピアニストでなくてよかったと思った。
オタクも喧嘩屋もトラブルシューターも、誰かに才能ないから辞めろなんていわれないもんな。
おれは前髪をかきあげてカズミの目を見て、ゆっくりといった。
「水銀…カズミさん。ピアノを諦めたからって、このまま風俗嬢でいいと思ってるわけじゃないだろ。今はまだ最初の一歩だから引き返せる。でも、このままいくと風俗のくだりエスカレーターにのっちまうぞ。どこかの田舎の駅前ソープで一生を終えるつもりか」
この業界では女は若いほど価値が高い。
経験や成熟など必要とされない世界なのだ。
金銭感覚がいったん狂えば、その後はよりハードに身体を酷使する風俗の深みに落ちていくしかない。
それでも若いころのように稼ぐのは難しいだろう。
男たちの欲望に仕えるだけの果てしない蟻地獄だ。
「そんなことはわかってるよ。でも、どうすればいいのさ。借金はいくらだかわからないくらいあるんだよ。」
おれは話を変えた。ここからが本番だ。
「ここにはアンタみたいな女が何人かいるのか。『ブラックスワン』の質流れみたいなさ」
カズミはうなずいた。
「うん、わたしが知ってるだけでも、五人くらいいる。待ち合い室は大部屋だから、よく話すんだ」
「そうか。ここのデリヘルでは本番もありだってきいたんだけど」
うんざりした顔でカズミはいった。
「どの客も最初にきくのはその話だよ。女の子が勝手にやってるって口でいいながら、会社のほうでは積極的にすすめてるみたい。そっちのほうが稼げるし、借金も早く返せてすぐに自由になれるって。でも、ここの部屋代とか食費とかけっこう高いから、いつになったら出られるか誰もわからないんだ」
裏の世界では昔からある手だとはいえ、悪質なことにかわりはない。
最新型のデリバリーへルスというのは、ほとんど人身売買と同じシステムだった。
手のなかで銀のライターを転がしている。
ドクロのレリーフがついたワイルドなやつ。
おれの視線に気づいたようだった。
「ふふ、これはあのダイキとかいうホストからいただいちゃった。あんなに高い飲み代をふっかけるんだから、このくらいいいよね。」
おれは肩をすくめた。
こいつのまえではあまり高価なものはだしておかないほうがいいかもしれない。
「うちの音大って、コンクールに出場するには教授の推薦がいるんだ。この夏の選抜試験があってさ、わたしは落ちて、あの子は受かった。そのあとで先生にいわれたよ。そろそろコンサートピアニストではなく、別の生き方を考える時期なんじゃないかって、『ブラックスワン』に初めていったのは、その日の夜だったな。」
十五年以上胸に秘めていた夢を、誰かに決定的に砕かれる。
それもその誰かは、実の妹だったのだ。
才能と適性で圧倒的な差があったのだろうか…。
つくづくおれはピアニストでなくてよかったと思った。
オタクも喧嘩屋もトラブルシューターも、誰かに才能ないから辞めろなんていわれないもんな。
おれは前髪をかきあげてカズミの目を見て、ゆっくりといった。
「水銀…カズミさん。ピアノを諦めたからって、このまま風俗嬢でいいと思ってるわけじゃないだろ。今はまだ最初の一歩だから引き返せる。でも、このままいくと風俗のくだりエスカレーターにのっちまうぞ。どこかの田舎の駅前ソープで一生を終えるつもりか」
この業界では女は若いほど価値が高い。
経験や成熟など必要とされない世界なのだ。
金銭感覚がいったん狂えば、その後はよりハードに身体を酷使する風俗の深みに落ちていくしかない。
それでも若いころのように稼ぐのは難しいだろう。
男たちの欲望に仕えるだけの果てしない蟻地獄だ。
「そんなことはわかってるよ。でも、どうすればいいのさ。借金はいくらだかわからないくらいあるんだよ。」
おれは話を変えた。ここからが本番だ。
「ここにはアンタみたいな女が何人かいるのか。『ブラックスワン』の質流れみたいなさ」
カズミはうなずいた。
「うん、わたしが知ってるだけでも、五人くらいいる。待ち合い室は大部屋だから、よく話すんだ」
「そうか。ここのデリヘルでは本番もありだってきいたんだけど」
うんざりした顔でカズミはいった。
「どの客も最初にきくのはその話だよ。女の子が勝手にやってるって口でいいながら、会社のほうでは積極的にすすめてるみたい。そっちのほうが稼げるし、借金も早く返せてすぐに自由になれるって。でも、ここの部屋代とか食費とかけっこう高いから、いつになったら出られるか誰もわからないんだ」
裏の世界では昔からある手だとはいえ、悪質なことにかわりはない。
最新型のデリバリーへルスというのは、ほとんど人身売買と同じシステムだった。