ー特別編ーVS不死鳥プロジェクト
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「アンタたちの親はどうしてるんだ。」
イクミは下を向いてしまう。
果物屋にはいつもフルーツの甘いにおいがするものだが、そのときは熟した柿とパイナップルのにおいが層になって漂っていた。
「両親は和歌山にいます。今度のお姉ちゃんの事は、二人ともまだ知らないんです。できたら、何も知らせずに解決したいんですけど。」
リッカが顎に手をついていった。
「でもこの件には金がかかっちゃうよ?」
当然だった。
借金をした相手にはいくらか金を払う必要があるだろう。
まあ、先方のいいなりの額ではないが。
さっと顔をあげて、イクミはおれを見つめた。
「仕送りをためたお金とわたしの留学資金があります。」
海外留学となると、イクミはかなり有望なピアニストということになる。
「それで風俗のほうは…」
イクミは困った顔をした。
清純派は眉の間にしわをよせる。
「西口の『ラヴネスト』っていうお店らしいんですけど。あの、小鳥遊さんは風俗にも詳しいんですよね。そこはどういうお店なんでしょうか。」
おれはこの街で育っているから、そこそこは常識として知っている。
だが、風俗の常連というわけではなかった。
「そんな店は知らないよ。おれは金ないし、風俗にはいかないの。(っか、それ以前に学生なんだけどな…)だけど、なんでアンタがそんな店をしってるんだ。」
イクミは顔を真っ赤にして、唇をかんだ。
なんだか懐かしい表情だった。
最近のアイドルときたら、テレビで下ネタばかり話してるからな。
「うちの音大で噂になって。男子学生がそこのお店で、うちのお姉ちゃんによく似た人と会ったって」
「ありゃりゃ…」
「それは、しんどいねー」
学校で自分の姉が風俗嬢になったとうわさされる。
清純派にはきついことだろう。
胸のまえで両手を組んで、イクミはおれたちにお願いのポーズをした。
「わたしたちは目白のマンションで、ふたり暮らしをしていたんですけど、カズミちゃんはもう一週間も帰ってないんです。誰も相談する人がいなくて、困ってました。小鳥遊さんと宗方さんだけが頼りなんです。」
若い女子大生にお願いされるのは気分のいいものだった。
どちらにしても、こいつは金で幕が引ける簡単な事件だ。
ひっさびさに出番が回ってきて、背筋がピンっと伸びたのが自分でもはっきりとわかった。
こうでなくちゃ、池袋は始まらない。
「リッカ、これはおれがやっていいか?」
「えー…まぁいいか。お手並み拝見するよ」
おれは携帯を抜いていった。
「じゃあ、アンタの携帯番号を教えてくれ。」
清純派はすぐに携帯のアドレスと番号を教えてくれた。
一応リッカの方にも登録しながらおれはいった。
「なあ、イクミちゃん、この街ではそんなに簡単に人に番号をホイホイ教えちゃ駄目だぞ。」
『火の鳥』はとうに終わり、曲は『プルネチラ』のガボットになっていた。
ゆったりと優雅なメロディが管楽器のあいだで受け渡されていく。
人生もこんな風にスムーズに変奏できたらいいのに。
イクミは下を向いてしまう。
果物屋にはいつもフルーツの甘いにおいがするものだが、そのときは熟した柿とパイナップルのにおいが層になって漂っていた。
「両親は和歌山にいます。今度のお姉ちゃんの事は、二人ともまだ知らないんです。できたら、何も知らせずに解決したいんですけど。」
リッカが顎に手をついていった。
「でもこの件には金がかかっちゃうよ?」
当然だった。
借金をした相手にはいくらか金を払う必要があるだろう。
まあ、先方のいいなりの額ではないが。
さっと顔をあげて、イクミはおれを見つめた。
「仕送りをためたお金とわたしの留学資金があります。」
海外留学となると、イクミはかなり有望なピアニストということになる。
「それで風俗のほうは…」
イクミは困った顔をした。
清純派は眉の間にしわをよせる。
「西口の『ラヴネスト』っていうお店らしいんですけど。あの、小鳥遊さんは風俗にも詳しいんですよね。そこはどういうお店なんでしょうか。」
おれはこの街で育っているから、そこそこは常識として知っている。
だが、風俗の常連というわけではなかった。
「そんな店は知らないよ。おれは金ないし、風俗にはいかないの。(っか、それ以前に学生なんだけどな…)だけど、なんでアンタがそんな店をしってるんだ。」
イクミは顔を真っ赤にして、唇をかんだ。
なんだか懐かしい表情だった。
最近のアイドルときたら、テレビで下ネタばかり話してるからな。
「うちの音大で噂になって。男子学生がそこのお店で、うちのお姉ちゃんによく似た人と会ったって」
「ありゃりゃ…」
「それは、しんどいねー」
学校で自分の姉が風俗嬢になったとうわさされる。
清純派にはきついことだろう。
胸のまえで両手を組んで、イクミはおれたちにお願いのポーズをした。
「わたしたちは目白のマンションで、ふたり暮らしをしていたんですけど、カズミちゃんはもう一週間も帰ってないんです。誰も相談する人がいなくて、困ってました。小鳥遊さんと宗方さんだけが頼りなんです。」
若い女子大生にお願いされるのは気分のいいものだった。
どちらにしても、こいつは金で幕が引ける簡単な事件だ。
ひっさびさに出番が回ってきて、背筋がピンっと伸びたのが自分でもはっきりとわかった。
こうでなくちゃ、池袋は始まらない。
「リッカ、これはおれがやっていいか?」
「えー…まぁいいか。お手並み拝見するよ」
おれは携帯を抜いていった。
「じゃあ、アンタの携帯番号を教えてくれ。」
清純派はすぐに携帯のアドレスと番号を教えてくれた。
一応リッカの方にも登録しながらおれはいった。
「なあ、イクミちゃん、この街ではそんなに簡単に人に番号をホイホイ教えちゃ駄目だぞ。」
『火の鳥』はとうに終わり、曲は『プルネチラ』のガボットになっていた。
ゆったりと優雅なメロディが管楽器のあいだで受け渡されていく。
人生もこんな風にスムーズに変奏できたらいいのに。