ー特別編ーVS不死鳥プロジェクト
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「戦後何度も厳しい時代をくぐってきた池袋の街を、不死鳥の如く再生する。それがこのたびの治安回復プランの目的です。そこでこのプランは『池袋不死鳥プロジェクト』と命名しました。商店会のなかにも有志で不死鳥会をつくっていただくことになります。たたかう覚悟のあるかたは、ぜひご参加ください」
ステキーッと黄色い声が飛んだ。
副知事はヨン様か。
朧沢はにこりと声のほうに向いていった。
「ありがとうございます。再来年は都知事選もありますし、そう遠くない将来、国政選挙もあることでしょう。そのときはこの朧沢武彦、またみなさまに色々とお願いをすることがあるかもしれません。どうぞ、よろしくお見知りおきください」
嵐のような中高年の拍手。ほんの数分の演説で、男は池袋の街に住むさして豊かではない住民の心をつかんでしまった。
おまけにちゃっかり都知事選の宣伝までしていく。
なかなかの役者だった。
おれは会場においてあったパンフレットを開いた。
リッカが肩ごしに覗いて男の経歴を読み上げていく。
「東京大学法学部卒、警察庁入庁。警視庁に出向後、三年前から現知事にこわれて、警視庁を辞し治安担当の副知事に転出。エリートさんだねー。」
おれはいった。
「まだ、四十七歳だ。」
傷ひとつないピカピカの経歴だった。
「この男なら金のバッチをつけるのもそう遠くないな。」
パンフレットを元あった場所にもどし。
世間知らずのおれは、そう頭から決めつけた。
リッカも適当にうなずいていった。
「悠くん。これからどうする?」
「あ~…帰るわ。夜遊びに備えて寝る。」
「そかー。じゃ、あたしはブラブラしてくから。」
じゃあなといって、リッカとはそこで別れた。
朧沢の演説の翌日、劇場通りの郵便局の先にある東京都健康センタービルの十一階と十階が様変わりした。
うえには警視庁本庁直属の組織犯罪対策部、したには入国監理局の池袋出張所が引っ越してきたのだ。
アンタが外国人で、近くて便利だからって出張所に足を運んでもムダだよ。
愛想のいい窓口係りなんてひとりもいないのだ。
だって、あそこは在留手続きなんてやってはいない。不法在住者の摘発専門の出先機関なのである。
そして……悪夢の8・12がやってくる。
池袋の街が、一晩で変わってしまったあの日だ。
朧沢のいっていたことはただしかった。
やつらは本気だったのである。
おれたちの街の主役は、警察と入管になった。
厳しい摘発で、怪しげな外国人パブや個室ヘルスも、キャッチの男女もいなくなった。
それにあわせて、金を落としてくれる酔っぱらいも寄り付かなくなったのである。
健全な、健全な池袋。
夜十一時をすぎると、この西一番街からさえ人通りが途絶えてしまう。
田舎の温泉の駅前みたいにな。
まるでミディアン(死都)だよ。
ステキーッと黄色い声が飛んだ。
副知事はヨン様か。
朧沢はにこりと声のほうに向いていった。
「ありがとうございます。再来年は都知事選もありますし、そう遠くない将来、国政選挙もあることでしょう。そのときはこの朧沢武彦、またみなさまに色々とお願いをすることがあるかもしれません。どうぞ、よろしくお見知りおきください」
嵐のような中高年の拍手。ほんの数分の演説で、男は池袋の街に住むさして豊かではない住民の心をつかんでしまった。
おまけにちゃっかり都知事選の宣伝までしていく。
なかなかの役者だった。
おれは会場においてあったパンフレットを開いた。
リッカが肩ごしに覗いて男の経歴を読み上げていく。
「東京大学法学部卒、警察庁入庁。警視庁に出向後、三年前から現知事にこわれて、警視庁を辞し治安担当の副知事に転出。エリートさんだねー。」
おれはいった。
「まだ、四十七歳だ。」
傷ひとつないピカピカの経歴だった。
「この男なら金のバッチをつけるのもそう遠くないな。」
パンフレットを元あった場所にもどし。
世間知らずのおれは、そう頭から決めつけた。
リッカも適当にうなずいていった。
「悠くん。これからどうする?」
「あ~…帰るわ。夜遊びに備えて寝る。」
「そかー。じゃ、あたしはブラブラしてくから。」
じゃあなといって、リッカとはそこで別れた。
朧沢の演説の翌日、劇場通りの郵便局の先にある東京都健康センタービルの十一階と十階が様変わりした。
うえには警視庁本庁直属の組織犯罪対策部、したには入国監理局の池袋出張所が引っ越してきたのだ。
アンタが外国人で、近くて便利だからって出張所に足を運んでもムダだよ。
愛想のいい窓口係りなんてひとりもいないのだ。
だって、あそこは在留手続きなんてやってはいない。不法在住者の摘発専門の出先機関なのである。
そして……悪夢の8・12がやってくる。
池袋の街が、一晩で変わってしまったあの日だ。
朧沢のいっていたことはただしかった。
やつらは本気だったのである。
おれたちの街の主役は、警察と入管になった。
厳しい摘発で、怪しげな外国人パブや個室ヘルスも、キャッチの男女もいなくなった。
それにあわせて、金を落としてくれる酔っぱらいも寄り付かなくなったのである。
健全な、健全な池袋。
夜十一時をすぎると、この西一番街からさえ人通りが途絶えてしまう。
田舎の温泉の駅前みたいにな。
まるでミディアン(死都)だよ。