ー特別編ースカウトマン・セレナーデ
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その病院は西武池袋線東長崎駅近くの住宅街にあった。
まだ新しい建物のようだ。窓ガラスが秋の日を浴びて、清潔に光っていた。
俺たちはジープをおりると、入り口を駆け抜け、受付でしのぶの病室をきいた。
エレベーターを待つのももどかしく、四階まで一気に階段をかけ上がる。
興奮してるせいだろうか。足は異様に軽く動き、息さえ乱れなかった。
病室にはいる前に俺はタイチと目をあわせた。たがいにうなずきかける。
「俺は待ってるな。しっかりしろよ。」
梓にもうなずきかけ、決闘の場に向かうように、そこからはゆっくりと大股ですすんだ。
カーテンもシーツも床も、ベッドのフレームまで、病室にあるものはすべてが白かった。
六人部屋の半分は埋まっている。窓際の一番奥の左手がしのぶのベッドだ。
重ねた枕で上半身を起こし、うとうとしているようだった。
最後に別れた公園の夜よりも、ずっと顔色は青ざめている。
手首に巻かれた包帯よりも白く、ほとんどロックアイスのような透明感だ。
タイチに気づくと、目を閉じて唇を震わせた。
「あのビデオみたの」
タイチは首を横に振った。
「見てない。ぼくのところに送られてきたのは、ほんの十分くらいしかなかったから。意味がぜんぜんわからないよ。」
スカウトマンは嘘が上手だった。俺はしのぶの足元で立っていた。
「悠さん、また迷惑かけちゃってごめんなさい…」
目を閉じたまま、涙を落とす。
涙はまぶたの真ん中から落ちるのだと俺は思った。
「いいんだ。慣れてるし迷惑じゃいさ。」
しのぶは感情の抜けた声でいった。
「わたしのところにDVDが二枚送られてきたのは、昨日の夜だった。一枚はタイチくんの名前がはいっていて、もう一本はわたし宛だった。収録時間はタイチくんのが十分で、わたしのが一時間半…。ついていた手紙には、長い方をタイチくんやうちの親に見せたくなかったら、また事務所にこいって。今度はもっと稼げる本番の店で働けって。もうタイチくんには迷惑かけられないし、どうしたらいいかわからなくて、お風呂のなかで手首切っちゃた。ごめんね。悠さん、タイチくん…」
「おい…お前ら…」
タイチの甘さにも…
いつも謝ってばかりいるしのぶにも…
リバティラインのガキどもにも…
俺はでたらめに腹が立ってきた。気がつくとまだ点滴をしている患者のまえで叫んでいた。
「いい加減しろ!俺は謝らないぞ、タイチ。元はといえば全部お前から始まったんだ。お前がどの女にも甘い顔するからこんなことになる。リバティラインのやつらにいい加減ケリをつけよう。しのぶ、アンタもだ!ここで腹をくくれ!女は度胸じゃないのかよ。親に知られたくないなんて言ってないで、もっと胸を張ってくれ。被害者なんだから迷惑だとか…迷惑じゃないとか…。面倒くせぇ。だったら、やり返せ!今度は俺たちの番だろうが」
俺は言いたいことを全部吐き出した。息が詰まろうが遠慮なんかしてられなかった。
静かな病室がいっそう静かになる。
まだ新しい建物のようだ。窓ガラスが秋の日を浴びて、清潔に光っていた。
俺たちはジープをおりると、入り口を駆け抜け、受付でしのぶの病室をきいた。
エレベーターを待つのももどかしく、四階まで一気に階段をかけ上がる。
興奮してるせいだろうか。足は異様に軽く動き、息さえ乱れなかった。
病室にはいる前に俺はタイチと目をあわせた。たがいにうなずきかける。
「俺は待ってるな。しっかりしろよ。」
梓にもうなずきかけ、決闘の場に向かうように、そこからはゆっくりと大股ですすんだ。
カーテンもシーツも床も、ベッドのフレームまで、病室にあるものはすべてが白かった。
六人部屋の半分は埋まっている。窓際の一番奥の左手がしのぶのベッドだ。
重ねた枕で上半身を起こし、うとうとしているようだった。
最後に別れた公園の夜よりも、ずっと顔色は青ざめている。
手首に巻かれた包帯よりも白く、ほとんどロックアイスのような透明感だ。
タイチに気づくと、目を閉じて唇を震わせた。
「あのビデオみたの」
タイチは首を横に振った。
「見てない。ぼくのところに送られてきたのは、ほんの十分くらいしかなかったから。意味がぜんぜんわからないよ。」
スカウトマンは嘘が上手だった。俺はしのぶの足元で立っていた。
「悠さん、また迷惑かけちゃってごめんなさい…」
目を閉じたまま、涙を落とす。
涙はまぶたの真ん中から落ちるのだと俺は思った。
「いいんだ。慣れてるし迷惑じゃいさ。」
しのぶは感情の抜けた声でいった。
「わたしのところにDVDが二枚送られてきたのは、昨日の夜だった。一枚はタイチくんの名前がはいっていて、もう一本はわたし宛だった。収録時間はタイチくんのが十分で、わたしのが一時間半…。ついていた手紙には、長い方をタイチくんやうちの親に見せたくなかったら、また事務所にこいって。今度はもっと稼げる本番の店で働けって。もうタイチくんには迷惑かけられないし、どうしたらいいかわからなくて、お風呂のなかで手首切っちゃた。ごめんね。悠さん、タイチくん…」
「おい…お前ら…」
タイチの甘さにも…
いつも謝ってばかりいるしのぶにも…
リバティラインのガキどもにも…
俺はでたらめに腹が立ってきた。気がつくとまだ点滴をしている患者のまえで叫んでいた。
「いい加減しろ!俺は謝らないぞ、タイチ。元はといえば全部お前から始まったんだ。お前がどの女にも甘い顔するからこんなことになる。リバティラインのやつらにいい加減ケリをつけよう。しのぶ、アンタもだ!ここで腹をくくれ!女は度胸じゃないのかよ。親に知られたくないなんて言ってないで、もっと胸を張ってくれ。被害者なんだから迷惑だとか…迷惑じゃないとか…。面倒くせぇ。だったら、やり返せ!今度は俺たちの番だろうが」
俺は言いたいことを全部吐き出した。息が詰まろうが遠慮なんかしてられなかった。
静かな病室がいっそう静かになる。