ー特別編ースカウトマン・セレナーデ
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西口公園は夜になって野外将棋大会はますますヒートアップしているようだった。
植え込みの丸い柵沿いにずらりと将棋台が並び、立ち見の見物客で人だかりしている。
こわばった表情のしのぶが、静かに泣き出したのはしばらくしてからだ。
タイチは黙って、しのぶの手を握っている。
俺は邪魔者になった気がしたが、涼しい夜風に打たれて、なぜかベンチを動けずにいた。
しのぶはうつむいていう。
「どうも…ありがとうございました。」
「いいよ。それより大丈夫なのか?」
スカウトマンは喋りにくそうだったので俺がいった。
「はい。わたしがやっぱりバカだった。風俗の仕事をしてタイチくんのそばに行こうなんて考えたから。動機が不純だったんです」
好きな男のそばにいたいと動機の何処が不純なのだろうか。金のためより、いくらましだかわからない。
しのぶはただ運が悪くて、まずい場所でまずい男に声をかけてしまっただけだろう。
俺はいった。
「明日からどうするんだ?」
しのぶは俺のほうを見ずに、タイチの横顔を見つめていった。
「ちょっと休んでから、また喫茶店に戻ります。わたしには風俗って無理みたい。タイチくんのために何かしてあげられなくて、ごめんね。」
俺は若いスカウトマンの魔法にあきれていた。
普通謝るのは男のほうで、傷ついたしのぶじゃ無いだろう。
風俗嬢になって毎月キックバックの振り込みができないからと謝る女なんてどこにいるのだ。
びっくりしてるとタイチはいいんだといって、あのくしゃくしゃの笑顔を見せた。
それだけで、しのぶの瞳にハートマークが乱れ飛ぶ。
俺はバカらしくなって、ベンチを立った。電線にとまる小鳥のように寄り添う2人に声をかける。
「ごゆっくり。なにかあったら、連絡してくれ。」
クールじゃない男がクールなフリをした。
背を丸めて、トラブルシューターは独り家に帰るのだ。
この夏だっていいことなんてなかったし、この分では秋もきっとダメだろう。
いっそのこと、一月ばかりタイチに弟子入りして、通りに立とうかと思った。
だって池袋のストリートなら、俺のホームグラウンドだからな。
女を口説き落とす自信なんてぜんぜんない。だけど、ストリートに立ち続けることなら、俺の得意技だ。
それだけで年収二千万なんて夢みたいな話じゃないか。
………
西口の駅に差し掛かると携帯が震えた。
「もしもし?」
『しょぼくれた様子で何してる?』
携帯からは珍しくも愉快そうなストリートギャングの王様、虎琥狗崇の声がした。
「お前には解んないだろうな俺の背中はしょぼくれてんじゃなく渋みがあんだよ。」
俺は精一杯の負け惜しみをいった。
『今飲んでる来るか?』
崇は俺の負け惜しみをはじめから聞いてなかったように自分の要件をいった。
「……行く。場所は?」
『ラスタ・ラブだ。今お前の目の前にあるRVに乗ってこい。』
電話が切れると同時に俺は前を見た。
いつの間にかいたRVの窓がゆっくりと開いてSウルフのチームメンバーらしき男が丁寧に頭を下げた。
俺は肩をすくめて車に乗った。
植え込みの丸い柵沿いにずらりと将棋台が並び、立ち見の見物客で人だかりしている。
こわばった表情のしのぶが、静かに泣き出したのはしばらくしてからだ。
タイチは黙って、しのぶの手を握っている。
俺は邪魔者になった気がしたが、涼しい夜風に打たれて、なぜかベンチを動けずにいた。
しのぶはうつむいていう。
「どうも…ありがとうございました。」
「いいよ。それより大丈夫なのか?」
スカウトマンは喋りにくそうだったので俺がいった。
「はい。わたしがやっぱりバカだった。風俗の仕事をしてタイチくんのそばに行こうなんて考えたから。動機が不純だったんです」
好きな男のそばにいたいと動機の何処が不純なのだろうか。金のためより、いくらましだかわからない。
しのぶはただ運が悪くて、まずい場所でまずい男に声をかけてしまっただけだろう。
俺はいった。
「明日からどうするんだ?」
しのぶは俺のほうを見ずに、タイチの横顔を見つめていった。
「ちょっと休んでから、また喫茶店に戻ります。わたしには風俗って無理みたい。タイチくんのために何かしてあげられなくて、ごめんね。」
俺は若いスカウトマンの魔法にあきれていた。
普通謝るのは男のほうで、傷ついたしのぶじゃ無いだろう。
風俗嬢になって毎月キックバックの振り込みができないからと謝る女なんてどこにいるのだ。
びっくりしてるとタイチはいいんだといって、あのくしゃくしゃの笑顔を見せた。
それだけで、しのぶの瞳にハートマークが乱れ飛ぶ。
俺はバカらしくなって、ベンチを立った。電線にとまる小鳥のように寄り添う2人に声をかける。
「ごゆっくり。なにかあったら、連絡してくれ。」
クールじゃない男がクールなフリをした。
背を丸めて、トラブルシューターは独り家に帰るのだ。
この夏だっていいことなんてなかったし、この分では秋もきっとダメだろう。
いっそのこと、一月ばかりタイチに弟子入りして、通りに立とうかと思った。
だって池袋のストリートなら、俺のホームグラウンドだからな。
女を口説き落とす自信なんてぜんぜんない。だけど、ストリートに立ち続けることなら、俺の得意技だ。
それだけで年収二千万なんて夢みたいな話じゃないか。
………
西口の駅に差し掛かると携帯が震えた。
「もしもし?」
『しょぼくれた様子で何してる?』
携帯からは珍しくも愉快そうなストリートギャングの王様、虎琥狗崇の声がした。
「お前には解んないだろうな俺の背中はしょぼくれてんじゃなく渋みがあんだよ。」
俺は精一杯の負け惜しみをいった。
『今飲んでる来るか?』
崇は俺の負け惜しみをはじめから聞いてなかったように自分の要件をいった。
「……行く。場所は?」
『ラスタ・ラブだ。今お前の目の前にあるRVに乗ってこい。』
電話が切れると同時に俺は前を見た。
いつの間にかいたRVの窓がゆっくりと開いてSウルフのチームメンバーらしき男が丁寧に頭を下げた。
俺は肩をすくめて車に乗った。