ー特別編ースカウトマン・セレナーデ
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二十分ほどして、女とタイチが店を出てきた。周囲に誰もいなけりゃそのままやっちまうんじゃないかという濡れた視線を絡ませて30秒。
極楽鳥はサンシャイン60階通りに消えていく。
揺れる尻を見送って、タイチはガードレールにやってきた。
「カフェオレご馳走さま。」
「いいよ。今日の問題はなんだったんだ?」
タイチはおれの横に腰をのせた。
「終電で帰してくれる約束だったのに、お客が立て込むと夜中の一時二時になっちゃうのがいやなんだって。タクシーよりも、電車のある時間に帰りたいってさ。」
「風俗店に労働基準法なんてあるわけないもんな。」
店への不満をなだめるのも、スカウトマンの仕事なのだろう。
通りに立ち続けることといい、わがままな女たちのガス抜きといい、確かに楽な仕事ではなさそうだった。
「あんなことがしょっちゅうあるんだ」
タイチは照れて笑った。
「うん。でも、いいんだ。ぼくは自分が空っぽな人間だから、女の子の話をきくのがけっこう好きなんだ。」
きっとそういうのを天職というのだろう。
タイチの場合、無理せず楽しく仕事が要求する条件を満たすことができる。
すでに暇潰しのネタ的には十分だった。
だが、俺はいつもの悪癖をだした。
「最近、スカウトの世界で変わったことってないかな」
木漏れ日でまだら模様のタイチの顔が、一瞬暗くなった。眉をひそめていう。
「やっぱり、事務所の問題かな。」
「事務所ってなんの事務所?」
タイチは通りをいく女たちを目で選別しながら、つまらなそうにいった。
「東京には何千店ていう風俗店があるよね。」
「そうだな。あるいみ風俗のメッカは東京だからな。」
「それぞれの店がバラバラにスカウトマンに注文をだすより、どこかにその情報を集めたほうが効率がいい。」
「そりゃそうだな。いちいち個別に頼むより楽だ。」
「うん。それで店がほしい情報を集めて、まとめてスカウトマンに流す中間業者ができたんだ。東京中で二、三十軒くらいあるかな。今、フリーのスカウトは減って、みんなどこかの事務所に所属するようになっている。」
俺もスカウトマンになったつもりで、五差路をとおる女たちを採点していった。いざ商売となると、なかなか上玉は少なかった。
しかも、ただ声をかけるだけでなく、その女を納得させて風俗店に連れていかなければ、一円の収入にもならないのだ。
とても俺には無理な仕事だった。黙ってめだけ動かしているスカウトマンにいった。
「タイチはフリーで、事務所には入ってないんだろう」
「そう。でもおかげで、いろいろと嫌な目にあったりする。脅しとか、嫌がらせとか…」
「事務所のバックにはたいてい組関係の人間がいたりするからか?」
「あ、うん。そう正解。凄いね小鳥遊さん。」
向こうの世界の男たちは、腐った肉のにおいに狂うサメみたいに、おもてにだせない金の動きに敏感なのだ。
それだけの額がうごくなら、ヨダレをたらしてうじゃうじゃ集まって来るはずだった。
極楽鳥はサンシャイン60階通りに消えていく。
揺れる尻を見送って、タイチはガードレールにやってきた。
「カフェオレご馳走さま。」
「いいよ。今日の問題はなんだったんだ?」
タイチはおれの横に腰をのせた。
「終電で帰してくれる約束だったのに、お客が立て込むと夜中の一時二時になっちゃうのがいやなんだって。タクシーよりも、電車のある時間に帰りたいってさ。」
「風俗店に労働基準法なんてあるわけないもんな。」
店への不満をなだめるのも、スカウトマンの仕事なのだろう。
通りに立ち続けることといい、わがままな女たちのガス抜きといい、確かに楽な仕事ではなさそうだった。
「あんなことがしょっちゅうあるんだ」
タイチは照れて笑った。
「うん。でも、いいんだ。ぼくは自分が空っぽな人間だから、女の子の話をきくのがけっこう好きなんだ。」
きっとそういうのを天職というのだろう。
タイチの場合、無理せず楽しく仕事が要求する条件を満たすことができる。
すでに暇潰しのネタ的には十分だった。
だが、俺はいつもの悪癖をだした。
「最近、スカウトの世界で変わったことってないかな」
木漏れ日でまだら模様のタイチの顔が、一瞬暗くなった。眉をひそめていう。
「やっぱり、事務所の問題かな。」
「事務所ってなんの事務所?」
タイチは通りをいく女たちを目で選別しながら、つまらなそうにいった。
「東京には何千店ていう風俗店があるよね。」
「そうだな。あるいみ風俗のメッカは東京だからな。」
「それぞれの店がバラバラにスカウトマンに注文をだすより、どこかにその情報を集めたほうが効率がいい。」
「そりゃそうだな。いちいち個別に頼むより楽だ。」
「うん。それで店がほしい情報を集めて、まとめてスカウトマンに流す中間業者ができたんだ。東京中で二、三十軒くらいあるかな。今、フリーのスカウトは減って、みんなどこかの事務所に所属するようになっている。」
俺もスカウトマンになったつもりで、五差路をとおる女たちを採点していった。いざ商売となると、なかなか上玉は少なかった。
しかも、ただ声をかけるだけでなく、その女を納得させて風俗店に連れていかなければ、一円の収入にもならないのだ。
とても俺には無理な仕事だった。黙ってめだけ動かしているスカウトマンにいった。
「タイチはフリーで、事務所には入ってないんだろう」
「そう。でもおかげで、いろいろと嫌な目にあったりする。脅しとか、嫌がらせとか…」
「事務所のバックにはたいてい組関係の人間がいたりするからか?」
「あ、うん。そう正解。凄いね小鳥遊さん。」
向こうの世界の男たちは、腐った肉のにおいに狂うサメみたいに、おもてにだせない金の動きに敏感なのだ。
それだけの額がうごくなら、ヨダレをたらしてうじゃうじゃ集まって来るはずだった。