ー特別編ースカウトマン・セレナーデ
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悪夢の様な暑さの夏がしつこく座席を譲らないその日、俺はiPodを聞きながら、ベンチに座っていた。
場所は秋葉原ではなかった。
あっちは前日、前々日の二日間通って、財布の中身をぶちまけた後なんだ。
金がなくなった俺はいつものように池袋で彷徨いていた。
グリーン大通りの広い空をゆっくりとすぎていく比と筆書きの秋の雲を眺め。
目の前を歩いてく女たちのタトゥーをカウントする。(池袋の場合若い女のタトゥー率はイチローの打率くらい)
ケヤキ並木は緑を濃くして大通りの遥か奥まで続いている。
両側は高さのそろった端正なオフィスビルの壁だった。
「ふあ~ぁ…」
俺は池袋駅の風景も嫌いじゃなかった。
だが、いい風景を見てるだけじゃ、俺の暇は潰れない。
俺が望むのは、目の前のストリートに転がってる、新鮮だけど雑魚みたいなネタだ。
来週には古くなって飽きられるやつなら、もっといい。
クソゲーの瞬発的な笑いの爆発力みたいなのが暇潰しにはベストなんだ。
信号がかわるたびに泡のように通行人が盛り上がる交差点をぼんやりと見ていた。
きちんとした目的地があってまっすぐまえを見て移動していくやつと、おれみたいにそうでない無用の人間。
俺の目はいつのまにか、自分と同じように五差路のあちこちで網をはっている深海魚に吸い寄せられていく。
サラ金やテレクラのティシュ配り。
妙にこぎれいな服を着たキャッチセールス、それにモデルだかAVだか風俗だかわからないスカウトマンの男たち。
サンシャイン60階通りの起点になるこの交差点は、人通りも多く、信号待ちの時間が長くて声がかけやすいスカウトのメッカなんだ。
その日もたくさんの男たちが若い女の肩越しに声をかけていた。
どうやら左側の後方から声をかけるのが一般的なテクニックらしい。
振り向かせたらこっちのもの。
それでも実際に話しかけるときの流儀はさまざまだった。
盛んに相手の女に触れようとするやつ。
名刺を出して身分を懸命に説明するやつ。
手帳にメモをとりながら口説くやつ。
小一時間もスカウトマンの活躍を眺めていた俺の目にひとりのガキの姿が引っ掛かった。
奴は小柄で、やせている。
ひざの抜けたボトムジーンズに、もう一枚の肌のように薄くなったTシャツ胸にはクイーンのロゴイラストつき。
靴は一番オーソドックスな布製のバスケットシューズだ。
パーマのゆるんだ長髪はみすぼらしい感じ。
なのに、なぜかやつが声をかけると、急ぎ足で目的地にむかう途中でさえ、女たちは立ち止まって話を聞く姿勢になるのだ。
なかには頬を赤くして、ブーツの爪先をもじもじさせる女までいる。
俺はそいつのやり取りを見ながらイヤホンを外して、側の自販機で珈琲を買って青信号のゼブラゾーンをゆっくりと交差点の対岸めざし歩いていく。
何を考えてるかって?
別に何も考えてないさ、ただの興味本位。
場所は秋葉原ではなかった。
あっちは前日、前々日の二日間通って、財布の中身をぶちまけた後なんだ。
金がなくなった俺はいつものように池袋で彷徨いていた。
グリーン大通りの広い空をゆっくりとすぎていく比と筆書きの秋の雲を眺め。
目の前を歩いてく女たちのタトゥーをカウントする。(池袋の場合若い女のタトゥー率はイチローの打率くらい)
ケヤキ並木は緑を濃くして大通りの遥か奥まで続いている。
両側は高さのそろった端正なオフィスビルの壁だった。
「ふあ~ぁ…」
俺は池袋駅の風景も嫌いじゃなかった。
だが、いい風景を見てるだけじゃ、俺の暇は潰れない。
俺が望むのは、目の前のストリートに転がってる、新鮮だけど雑魚みたいなネタだ。
来週には古くなって飽きられるやつなら、もっといい。
クソゲーの瞬発的な笑いの爆発力みたいなのが暇潰しにはベストなんだ。
信号がかわるたびに泡のように通行人が盛り上がる交差点をぼんやりと見ていた。
きちんとした目的地があってまっすぐまえを見て移動していくやつと、おれみたいにそうでない無用の人間。
俺の目はいつのまにか、自分と同じように五差路のあちこちで網をはっている深海魚に吸い寄せられていく。
サラ金やテレクラのティシュ配り。
妙にこぎれいな服を着たキャッチセールス、それにモデルだかAVだか風俗だかわからないスカウトマンの男たち。
サンシャイン60階通りの起点になるこの交差点は、人通りも多く、信号待ちの時間が長くて声がかけやすいスカウトのメッカなんだ。
その日もたくさんの男たちが若い女の肩越しに声をかけていた。
どうやら左側の後方から声をかけるのが一般的なテクニックらしい。
振り向かせたらこっちのもの。
それでも実際に話しかけるときの流儀はさまざまだった。
盛んに相手の女に触れようとするやつ。
名刺を出して身分を懸命に説明するやつ。
手帳にメモをとりながら口説くやつ。
小一時間もスカウトマンの活躍を眺めていた俺の目にひとりのガキの姿が引っ掛かった。
奴は小柄で、やせている。
ひざの抜けたボトムジーンズに、もう一枚の肌のように薄くなったTシャツ胸にはクイーンのロゴイラストつき。
靴は一番オーソドックスな布製のバスケットシューズだ。
パーマのゆるんだ長髪はみすぼらしい感じ。
なのに、なぜかやつが声をかけると、急ぎ足で目的地にむかう途中でさえ、女たちは立ち止まって話を聞く姿勢になるのだ。
なかには頬を赤くして、ブーツの爪先をもじもじさせる女までいる。
俺はそいつのやり取りを見ながらイヤホンを外して、側の自販機で珈琲を買って青信号のゼブラゾーンをゆっくりと交差点の対岸めざし歩いていく。
何を考えてるかって?
別に何も考えてないさ、ただの興味本位。