「まぁ、落ち着けよ。荒っぽいことはしたくない。話を聞いてくれ。俺は別に金が欲しいわけじゃない。」

俺はジープに向かって叫んだ。

「きてくれ。エリさん、忠則。」

二人が降りてきて。
ますます、副社長はわからないという顔をした。

「エリちゃん。あんたどおいうつもりなの。うちに大きな借金があるのを忘れたんじゃないの？」

ヒステリックな声だった。受付に座っていたときとは対象的だ。

俺は言った。

「いったいいくらあるんだ。」

女コングは自慢げにいった。

「七百万よ。」

エリは叫び声をあげた。

「待ってください！うちの母がローンズ・テスタロッサから借りたのは三百万と少しだったはずです！」

「そんなことうちは知らないよ。あちらさんがどれくらいの金利でいくら貸したなんて、関係ない。ただ、うちは債権を買い取ったし、保証人はエリちゃんあんただ。きちんと七百万返してもらうよ。」

タクシーが雑居ビルのまえに急停止した。

男たちがバラバラと飛び出してくる。

俺達を取り囲むように、赤い髪の男をいれて、7人の男が顔を揃えた。

夜道ではあまり会いたくない粗暴な顔ばかり。

「おまえら、このまま帰れるとおもうなよ？」

赤髪が高らかにいった。

「悠さん…」

エリと忠則が怯えた様に俺の後ろに隠れる。

「ふぅ。俺は暴力的なことは嫌いなんだけどな。」

俺は右手をあげた。

線路わきの歩道橋のしたや、路地の奥、雑居ビルの非常階段からわらわらと男たちが沸いてくる。

さらにジープの後ろからハイライトを照らしてRVが突っ込んできた。

そして、RVからは一ノ瀬組本部長代行の拳二とガキの王様兼虎琥狗組若き二代目の崇が降りてきて、俺の方を見て、ニヤリと笑った。

「一ノ瀬組の瓦谷拳二です。ここらは、うちの庭だ。揉め事は慎んでもらえないか？」

「そこの悠は話がしたいだけと言ってる。」
ヤクザのメジャーリーグが集まった。

さっきまでとは正反対に、5倍の男たちに囲まれて、アドリの男はみな小さくなっていた。

「悠、話せ。」

俺は王様に頷いて、口火を切った。

「頼みというのは簡単だ。そこにいるエリの借金を本来の額に戻して欲しい。それからこの出会い部屋を止めさせる。今後一切タッチしない。それだけだ。」
「どうせ、違法の書類だろ。法的手段に訴えれば勝ちは見えてるぞ。」

拳二の上手い後押しをつけて言った。

だが、敵も強気だった。
副社長は怯まずにいった。

「だったら、裁判でもなんでもやればいいだろ。決着がつくまでに、何ヵ月もときには何年もかかるんだよ。その間アンタのおふくろのパチスロ狂いも、アンタの出会い部屋がよいも、全部世間様に晒し者になるんだ。弁護士の費用だって、馬鹿にならない！アンタはそれを払い続けて、あれこれといらぬ噂を立てられるのに耐えれるのか！」

それで多くの女たちが転んで言ったのだろう。

勝ち目のある裁判でも失うものが大きすぎるのだ。