ー特別編ー黄色のCurrency
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「最初に提案されたのは匿名の資金提供だった。資金操りが苦しくて、緊急避難的にかりいれざるを得なかった。利息をつけて返せばそれで済むと思ってたんだ。」
俺は重たい口を開いた。
「けど、あっちの世界の黒い金はそう簡単に縁を切らせてくれなかったんだろ。」
「あぁ。やはり君は詳しいね…一度手をだしたら、いくら洗っても手が黒いままなんだ。深尾氏は金を返しても、今度は自分のところの資金をきれいにしろと大量の裏金を送り込んでくる。ヤミ金との関係をもったということが、ぼくの弱みになってしまった。」
「そして、おもてに出せない金のクリーニング屋として、NPOセンターが利用されていくカラクリか…」
オコノギは右手であたしい雇用を創出する地域通貨を発行しながら、左手ではじゃぶじゃぶと裏金を洗濯していたのだ。
俺の声には同情も怒りもふくまれていなかったと思う。
そうなるように注意していたのだ。
「わかったよ。俺に弁解しなくてもいい。偽造犯は見つかった。これからあとはアンタが好きなようにすればいい。」
「ぼくを恨まないのかい?」
俺は首を横に振った。
「俺はアンタを責めるつもりはない。アンタのやってることがこの街のガキに役立ってるのは確かなんだ。だいたい、俺は警察でもないしな。」
オコノギはちらりと俺を見て、口のなかでありがとうといった。
「だけど、不思議だな。こうして池袋の街を見ていると、NPOを立ち上げたころと、何一つ変わらない。ぼくはちょっとばかり有名になったが、それは悪いことも同時に引き寄せてしまった。ずっと理想に燃えていたけれど、いつのまにかそれが世間むけのポーズとすり変わったのかもしれない。ぼくは自分の奥深くにまだあのころの火が燃えていると信じてる。だけど、こうして良いことも悪いことものみこんで、毎日が続いていくのだろうね。これが公益を守るということなのかな。」
陸橋のうえを生き物のような風が吹いていく。
この汚れた世界に縛られた体重が半分になったように感じられる夜風だ。
オコノギの白いジャケットが濃紺の空を背に丸くふくらんだ。
天使の翼といったら…いいすぎだろうか。
だけど一瞬おれにはそんなふうに見えたんだ。
「オコノギさん。」
「ん?」
「今回はそんなに働いてないから、残りの半金はいらないや。」
俺は夜空を見上げて笑いながらいった。
「しかし…」
「けど、変わりに約束して欲しいことがある。」
「なんだい?」
「もし、何か困ったことがあったら、すぐ俺に電話してくれ。この街を思う気持ちがアンタにあるなら、俺はいくらでも手助けするよ。これからもな」
俺はそれだけいって、さよならを言わずに歩き出した。まだ夜は早い。
俺は明かりの暗い道を選びながら、ゆっくりと帰った。
俺は重たい口を開いた。
「けど、あっちの世界の黒い金はそう簡単に縁を切らせてくれなかったんだろ。」
「あぁ。やはり君は詳しいね…一度手をだしたら、いくら洗っても手が黒いままなんだ。深尾氏は金を返しても、今度は自分のところの資金をきれいにしろと大量の裏金を送り込んでくる。ヤミ金との関係をもったということが、ぼくの弱みになってしまった。」
「そして、おもてに出せない金のクリーニング屋として、NPOセンターが利用されていくカラクリか…」
オコノギは右手であたしい雇用を創出する地域通貨を発行しながら、左手ではじゃぶじゃぶと裏金を洗濯していたのだ。
俺の声には同情も怒りもふくまれていなかったと思う。
そうなるように注意していたのだ。
「わかったよ。俺に弁解しなくてもいい。偽造犯は見つかった。これからあとはアンタが好きなようにすればいい。」
「ぼくを恨まないのかい?」
俺は首を横に振った。
「俺はアンタを責めるつもりはない。アンタのやってることがこの街のガキに役立ってるのは確かなんだ。だいたい、俺は警察でもないしな。」
オコノギはちらりと俺を見て、口のなかでありがとうといった。
「だけど、不思議だな。こうして池袋の街を見ていると、NPOを立ち上げたころと、何一つ変わらない。ぼくはちょっとばかり有名になったが、それは悪いことも同時に引き寄せてしまった。ずっと理想に燃えていたけれど、いつのまにかそれが世間むけのポーズとすり変わったのかもしれない。ぼくは自分の奥深くにまだあのころの火が燃えていると信じてる。だけど、こうして良いことも悪いことものみこんで、毎日が続いていくのだろうね。これが公益を守るということなのかな。」
陸橋のうえを生き物のような風が吹いていく。
この汚れた世界に縛られた体重が半分になったように感じられる夜風だ。
オコノギの白いジャケットが濃紺の空を背に丸くふくらんだ。
天使の翼といったら…いいすぎだろうか。
だけど一瞬おれにはそんなふうに見えたんだ。
「オコノギさん。」
「ん?」
「今回はそんなに働いてないから、残りの半金はいらないや。」
俺は夜空を見上げて笑いながらいった。
「しかし…」
「けど、変わりに約束して欲しいことがある。」
「なんだい?」
「もし、何か困ったことがあったら、すぐ俺に電話してくれ。この街を思う気持ちがアンタにあるなら、俺はいくらでも手助けするよ。これからもな」
俺はそれだけいって、さよならを言わずに歩き出した。まだ夜は早い。
俺は明かりの暗い道を選びながら、ゆっくりと帰った。