ー特別編ーブラックアウトの夜
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「考えとくわ。」
それから、西口公園の東武デパート口のまえで待ち合わせることにした。
今度の事件はすべてあたしのもちだしだった。
いつかあたしの銀行口座が七桁にのる日はくるのだろうか……。
夏の空はいつの間にか暮れて、暗くなっていた。
前の席にふたりのSウルフの親衛隊(一人は紅さん)が座っている。後席にあたしと王様がならんだ。
ダッシュボードのナビ画像とうしろの液晶モニターには、同じ密告DVDが映されている。
ビルマの少年が、デリヘル運転手に軟禁され、売春を強要されていると話していた。続いてガロン・ラワディの住所を証言している。
タカシは冷ややかな声でいった。
「おまえをその気にさせるには、ガキをとことん泣かせばいいんだな、リッカ。あい変わらず甘いな。」
あたしはほめ言葉だと思って、タカシの声を聞き流した。
そとはまだ汗が流れるほど暑かったけど、メルセデスの室内はエアコンでキンキンに冷えていた。
タカシは和紙のようにおぼろげに肌を透かす白いシャツを、まえたてのボタンをひとつもとめずに着ていた。
サヤーのシャツの百倍の値段はするのだろう。
あたしはやつの視線をとらえていった。
「この運転手が、どう転ぶかまだあたしにはわからないんだ。だから、どちらにしても死ぬほどびびらせて、二度とこの街でサヤーを脅そうなんてきにならないようにしたいの。」
タカシは唇の端を五ミリほどあげた。
「おれたちの出番だな。」
「そういうことになるね。」
あたしはビルマの刑務所のなかで行われている拷問の話をした。
バイクとモデルと鉄の道。
素晴らしき人類の創造力。タカシはあきれていう。
「どこの国でも考えることは変わらないな。そうなるとちょっとやそっとの脅しでは、そいつには効き目はないかもしれないな。」
あたしは窓の外を見た、足早に帰っていくOLが見える。
「そうね。それにあと二、三日しか時間がないの。警察の先手をとって運転手をさらって、骨の芯までビビらせる。タカシにはそれを頼みたい。」
池袋のガキの王は、平然とモニターに映るサヤーを見つめていた。
「おれは構わないが、暴力が効かないとなると、やつを消す以外の方法がなにかあるのか。警察に密告された人間を消すなんて、いくらおまえの頼みでもあまり気が進まないな。どうしてもということなら、考えなくはないが」
タカシは目をあげて、愉快そうにニコッと笑った。
あたしはドイツ製のRVのなかでひとり背中が冷えた……若き王にはピンハネ屋の命ひとつなど、とるに足りないのだろう。
「いや、消すのはちょっと……」
「じゃあ、知恵を絞れ。」
弱ってしまう。
あたしはもともと頭脳派では無い。
勢いと突進力だけが武器なのだ。
それから、西口公園の東武デパート口のまえで待ち合わせることにした。
今度の事件はすべてあたしのもちだしだった。
いつかあたしの銀行口座が七桁にのる日はくるのだろうか……。
夏の空はいつの間にか暮れて、暗くなっていた。
前の席にふたりのSウルフの親衛隊(一人は紅さん)が座っている。後席にあたしと王様がならんだ。
ダッシュボードのナビ画像とうしろの液晶モニターには、同じ密告DVDが映されている。
ビルマの少年が、デリヘル運転手に軟禁され、売春を強要されていると話していた。続いてガロン・ラワディの住所を証言している。
タカシは冷ややかな声でいった。
「おまえをその気にさせるには、ガキをとことん泣かせばいいんだな、リッカ。あい変わらず甘いな。」
あたしはほめ言葉だと思って、タカシの声を聞き流した。
そとはまだ汗が流れるほど暑かったけど、メルセデスの室内はエアコンでキンキンに冷えていた。
タカシは和紙のようにおぼろげに肌を透かす白いシャツを、まえたてのボタンをひとつもとめずに着ていた。
サヤーのシャツの百倍の値段はするのだろう。
あたしはやつの視線をとらえていった。
「この運転手が、どう転ぶかまだあたしにはわからないんだ。だから、どちらにしても死ぬほどびびらせて、二度とこの街でサヤーを脅そうなんてきにならないようにしたいの。」
タカシは唇の端を五ミリほどあげた。
「おれたちの出番だな。」
「そういうことになるね。」
あたしはビルマの刑務所のなかで行われている拷問の話をした。
バイクとモデルと鉄の道。
素晴らしき人類の創造力。タカシはあきれていう。
「どこの国でも考えることは変わらないな。そうなるとちょっとやそっとの脅しでは、そいつには効き目はないかもしれないな。」
あたしは窓の外を見た、足早に帰っていくOLが見える。
「そうね。それにあと二、三日しか時間がないの。警察の先手をとって運転手をさらって、骨の芯までビビらせる。タカシにはそれを頼みたい。」
池袋のガキの王は、平然とモニターに映るサヤーを見つめていた。
「おれは構わないが、暴力が効かないとなると、やつを消す以外の方法がなにかあるのか。警察に密告された人間を消すなんて、いくらおまえの頼みでもあまり気が進まないな。どうしてもということなら、考えなくはないが」
タカシは目をあげて、愉快そうにニコッと笑った。
あたしはドイツ製のRVのなかでひとり背中が冷えた……若き王にはピンハネ屋の命ひとつなど、とるに足りないのだろう。
「いや、消すのはちょっと……」
「じゃあ、知恵を絞れ。」
弱ってしまう。
あたしはもともと頭脳派では無い。
勢いと突進力だけが武器なのだ。