ー特別編ー黄色のCurrency
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キングは息も乱さずにいう。
「あとは勝手にするといい。この悠と小此木にまかせる。」
俺は名前を呼ばれてビクンとした。崇は続ける。
「だが、北原、偽札だけは作るなよ。つぎにやったら、そのときは……」
崇は笑いながら親指を立て、爪の先でのどを丸くかき切る仕草をした。
わかりやすいゼスチャーゲームだ。
北原の笑顔は凍りついた。ホリイはシャワーでも浴びたように、坊主頭からだらだらと汗を流している。
俺たちは部屋をでた。
崇はドアの外にまつ紅達に囁くように声をかけた。
「終わりだ。撤収だ。」
紅達は崇がイラついてるのを敏感に察知してすぐに撤収しはじめる。
俺は集団の最後を歩きながら考えていた。
崇とは違って、俺の仕事はまだ終わってない。気が重かった。
依頼主への報告が済んでいないのだ。
………
その夜、俺は携帯でオコノギを呼び出した。場所はなるべくNPOセンターから離れた方がいいだろうと思い、JRの西口と東口を結ぶ池袋大橋のうえにした。
そこは線路をまたぐ長い陸橋で、遠くからでも近づいてくる人間がいればわかるところだ。
夜の十時半、おれは春の夜にそびえる清掃工場の煙突を見ていると、西口のほうからオコノギが1人歩いてきた。
「犯人がわかったそうだね。」
俺は橋のしたをみながらいった。
「ああ。主犯はスミオカフェの店長・北原、従犯はデジタルデザイン部の堀井」
おれはカフェの事務所で拾っておいた黄色の切れ端を渡してやった。
「よくやってくれた、悠くん。ありがとう」
オコノギは嬉しげに爽やかな笑顔を見せる。おれは声を殺していった。
「北原はあんたとフカオ・エンタープライズの関係を知っていた。」
俺はオコノギの横顔を見つめていた。
若きNPO代表は線路の両側にそびえる光の断崖のようなビル群を眺め、かすかに笑っているようだった。
長々とため息を吐く。
「そうか。彼は知っていたんだ。うちの理事の悪友だったからな。」
代表はのんびりと他人ごとのようにいう。
「なんで、そんなことになっちまったんだ?」
ぼんやりしていた顔が何かを思い出したように動いた。
「なんだってそうだけど、始めたばかりの頃はつらいものだ。この街をよくしたいという理念はあっても金はない、知名度もない、誰も相手にしてくれない。ぼくは大学卒業と同時にあのNPOを立ちあげた。就職して立派になっていく同級生に焦りを感じてたのかもしれない。そんなときに現れたのが、深尾氏だった。」
オコノギはひとりで笑っていた。
陸橋のしたを貨物列車がとおり過ぎていく。
「あとは勝手にするといい。この悠と小此木にまかせる。」
俺は名前を呼ばれてビクンとした。崇は続ける。
「だが、北原、偽札だけは作るなよ。つぎにやったら、そのときは……」
崇は笑いながら親指を立て、爪の先でのどを丸くかき切る仕草をした。
わかりやすいゼスチャーゲームだ。
北原の笑顔は凍りついた。ホリイはシャワーでも浴びたように、坊主頭からだらだらと汗を流している。
俺たちは部屋をでた。
崇はドアの外にまつ紅達に囁くように声をかけた。
「終わりだ。撤収だ。」
紅達は崇がイラついてるのを敏感に察知してすぐに撤収しはじめる。
俺は集団の最後を歩きながら考えていた。
崇とは違って、俺の仕事はまだ終わってない。気が重かった。
依頼主への報告が済んでいないのだ。
………
その夜、俺は携帯でオコノギを呼び出した。場所はなるべくNPOセンターから離れた方がいいだろうと思い、JRの西口と東口を結ぶ池袋大橋のうえにした。
そこは線路をまたぐ長い陸橋で、遠くからでも近づいてくる人間がいればわかるところだ。
夜の十時半、おれは春の夜にそびえる清掃工場の煙突を見ていると、西口のほうからオコノギが1人歩いてきた。
「犯人がわかったそうだね。」
俺は橋のしたをみながらいった。
「ああ。主犯はスミオカフェの店長・北原、従犯はデジタルデザイン部の堀井」
おれはカフェの事務所で拾っておいた黄色の切れ端を渡してやった。
「よくやってくれた、悠くん。ありがとう」
オコノギは嬉しげに爽やかな笑顔を見せる。おれは声を殺していった。
「北原はあんたとフカオ・エンタープライズの関係を知っていた。」
俺はオコノギの横顔を見つめていた。
若きNPO代表は線路の両側にそびえる光の断崖のようなビル群を眺め、かすかに笑っているようだった。
長々とため息を吐く。
「そうか。彼は知っていたんだ。うちの理事の悪友だったからな。」
代表はのんびりと他人ごとのようにいう。
「なんで、そんなことになっちまったんだ?」
ぼんやりしていた顔が何かを思い出したように動いた。
「なんだってそうだけど、始めたばかりの頃はつらいものだ。この街をよくしたいという理念はあっても金はない、知名度もない、誰も相手にしてくれない。ぼくは大学卒業と同時にあのNPOを立ちあげた。就職して立派になっていく同級生に焦りを感じてたのかもしれない。そんなときに現れたのが、深尾氏だった。」
オコノギはひとりで笑っていた。
陸橋のしたを貨物列車がとおり過ぎていく。