ー特別編ーブラックアウトの夜
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そのまま池袋二丁目にあるホテル街にむかった。
なるべく休憩値段が安そうな、造りの古いラヴホテルを選んで、ひとりで中にはいった。
ちいさな窓の向こう、腰から下しか見えないフロント係のおばちゃんは、なにもいわずにキーを渡してくれた。
あたしはロビーのわきにあるこれも古びたエレベーターで五階にあがった。
薄暗い消毒薬のにおいのする廊下を、部屋番号が点滅するドアまで歩く。
室内にはいると、すぐに携帯をかけた。
ワイルドナイトの猫なで声でいった。
「さっきのタカナシだけど、ホテルに入ったよ。北口の『スペンサー』504室ね」
長い間サービス業でもしていたのか。男の声は上質なカシミヤのマフラーみたいにしっとりしていた。
『こちらから確認の電話をおかけしますので、そのままお待ちください。』
あたしはデイパックをソファにおいて、ベッドに倒れこんだ。
すぐに枕元のそなえつけの電話がなった。
『小鳥遊さまですか』
そうだというと、男は満足そうにいった。
『十分以内に、先ほどの外国人の少年をお届けします。』
あたしはありがとうといって電話を切り、デイパックのなかから小型の三脚とデジタルビデオカメラをとりだすと、ソファまえのテーブルでセッティングをはじめた。
チャイムの音がしたのは、十二分後のことだった。
あたしがロックをはずしドアを押し開けると、暗い廊下にうつむいたサヤーがたっていた。
白いシャツがすこしくたびれ、しわくちゃになっていた。
あたしのほうを見ずにサヤーがちいさな声でいった。
「あの、ぼくでいいですか」
「待ってたよー、サヤー。はいって。」
ビルマの少年は元々丸かった目を真円にして、新聞紙半分ほどの玄関にはいってきた。
びっくりした声で言う。
「リッカさんも、そういう趣味があったんですか」
ばからしい。
「いいからそのソファに座って」
そういって二万円をサヤーの手に押し込む。
「お金ないから七十分コースでお願い。昨日の夜、おふくろさんと親父さんが、うちの店に来たの。アナタのことをすごく心配してたわよ。」
サヤーは両親のことを話すと急に元気をなくしたようだった。
制服のズボンのポケットからプリペイドの携帯を抜き、デリヘルの事務所に電話をかけた。
「タミンです。今から七十分で仕事にはいります。」
サヤーは源氏名をもつ中学生だった。
あたしは部屋の明かりをすべて点灯させて、ビデオカメラの録画ボタンを押した。
なぜラヴホテルの部屋にはあれほどたくさんのライトがあるのかしら、不思議よね。
サヤーは座面に誰かがいたずら書きをしたソファに座り、正面のカメラに恥ずかしげな表情でむかっている。
あらゆる方向から光を浴びて、やつが身動きするたびに淡い影が四方で動いた。
「あとで適当に編集するから、いつもどおり話せばいいんだぞー。昨日の夜はどこにいたの?」
サヤーはうつむいてしまった。
なるべく休憩値段が安そうな、造りの古いラヴホテルを選んで、ひとりで中にはいった。
ちいさな窓の向こう、腰から下しか見えないフロント係のおばちゃんは、なにもいわずにキーを渡してくれた。
あたしはロビーのわきにあるこれも古びたエレベーターで五階にあがった。
薄暗い消毒薬のにおいのする廊下を、部屋番号が点滅するドアまで歩く。
室内にはいると、すぐに携帯をかけた。
ワイルドナイトの猫なで声でいった。
「さっきのタカナシだけど、ホテルに入ったよ。北口の『スペンサー』504室ね」
長い間サービス業でもしていたのか。男の声は上質なカシミヤのマフラーみたいにしっとりしていた。
『こちらから確認の電話をおかけしますので、そのままお待ちください。』
あたしはデイパックをソファにおいて、ベッドに倒れこんだ。
すぐに枕元のそなえつけの電話がなった。
『小鳥遊さまですか』
そうだというと、男は満足そうにいった。
『十分以内に、先ほどの外国人の少年をお届けします。』
あたしはありがとうといって電話を切り、デイパックのなかから小型の三脚とデジタルビデオカメラをとりだすと、ソファまえのテーブルでセッティングをはじめた。
チャイムの音がしたのは、十二分後のことだった。
あたしがロックをはずしドアを押し開けると、暗い廊下にうつむいたサヤーがたっていた。
白いシャツがすこしくたびれ、しわくちゃになっていた。
あたしのほうを見ずにサヤーがちいさな声でいった。
「あの、ぼくでいいですか」
「待ってたよー、サヤー。はいって。」
ビルマの少年は元々丸かった目を真円にして、新聞紙半分ほどの玄関にはいってきた。
びっくりした声で言う。
「リッカさんも、そういう趣味があったんですか」
ばからしい。
「いいからそのソファに座って」
そういって二万円をサヤーの手に押し込む。
「お金ないから七十分コースでお願い。昨日の夜、おふくろさんと親父さんが、うちの店に来たの。アナタのことをすごく心配してたわよ。」
サヤーは両親のことを話すと急に元気をなくしたようだった。
制服のズボンのポケットからプリペイドの携帯を抜き、デリヘルの事務所に電話をかけた。
「タミンです。今から七十分で仕事にはいります。」
サヤーは源氏名をもつ中学生だった。
あたしは部屋の明かりをすべて点灯させて、ビデオカメラの録画ボタンを押した。
なぜラヴホテルの部屋にはあれほどたくさんのライトがあるのかしら、不思議よね。
サヤーは座面に誰かがいたずら書きをしたソファに座り、正面のカメラに恥ずかしげな表情でむかっている。
あらゆる方向から光を浴びて、やつが身動きするたびに淡い影が四方で動いた。
「あとで適当に編集するから、いつもどおり話せばいいんだぞー。昨日の夜はどこにいたの?」
サヤーはうつむいてしまった。