ー特別編ーブラックアウトの夜
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眠りの浅い夜だった。
曇りぎみだった空は明け方には太陽が照りはじめて、気がつけ、教会にいく時間になった。
あたしは牛乳と菓子パンひとつの朝食をすませると、ギターを担いで教会にでかけた。
教会の掃除を済ませて、なんだかすっきり目を覚まさないうちに学校にいった。
サヤーが通学カバンを右手にさげて、うちの店先にたったのは暑さが多少マシになった夕方だった。
長くのびた影のしたでこわばった顔につくり笑いを浮かべてる。
やつに気づいて、残り物のフルーツがはいったポリ袋を持っていくと、サヤーは片足を引きずりながらこっちに歩いてきた。
「どうしたの?」
あたしの質問にサヤーは黙って首を横に振る。
視線で歩道の先に立つ男を示した。
男はサヤーと同じビルマ人のようだった。
ピンストライプのスーツに白いシャツの胸をはだけている。
やせた浅黒い首筋にはプラチナの認識票が二枚さがっていた。
あれが「あの人」なのかしら。サヤーはポリ袋を受けとるといった。
「もうここには来られない。」
「え、なんで?」
「ガロンがダメだって。高校にいくのも、リッカさんと話すのもダメだって。」
サヤーの顔は目だけが赤く涙ぐんでいる。
あたしたちが話してるのが気にくわないのか、ピンストライプがジッとあたしをにらんだまま歩いてきた。
ファッションはまるで違うけど、目はサヤーの父親に似て暗い穴のようだった。
あたしは早口でサヤーにいった。
「やつは誰。」
サヤーはおびえた目で漏らした。
「ガロン・ラワディ。うちのデリヘルのドライバーなんだ。」
ビルマ人の男が叫んだ。
「なに話してる」
そばで見るとラワディはあたしと同じくらい背が高く、筋肉質のいい体格をしていた。
あたしとサヤーのあいだで昂然と胸をそらして立ち、あたしをにらみつけている。
この手の人間はどこの国にも、一定の割合で発生してしまうみたいね。
工場の不良品と同じなのよね。
誰かの弱味につけこんで生きる寄生虫のような人間。あたしは店先のオレンジをひとつ手にとり、重さを確かめるように握りしめた。
「あたしがサヤーと何を話そうが勝手でしょ。アンタはこの子の保護者じゃないしー。」
ラワディは目を細めてあたしを見た。
「うちの商売ものに手をだすな、ヘンタイ女が」
ヘンタイだけ妙な発音をした。
あたしはうちの果物屋のまえでそんなことをいわれてかなりショックだった。
久々に冗談抜きで顔面を蹴りたくなる男ね。
ラワディはサヤーの肩を荒々しく抱くと、にやりと笑って見せた。
「いいか、こいつはあんたと二度と話したくないといってる。それにこいつの携帯は俺があずかってるから、電話もダメだ。お前は人のビジネスに手をださずに、フルーツでも売ってろ。俺たちのことは、お前みたいなスケベな日本人にはわからないだ。引っ込んでろいいな!」
ラワディは内ポケットからサヤーの携帯電話をだし、フラップを開いてみせた。
曇りぎみだった空は明け方には太陽が照りはじめて、気がつけ、教会にいく時間になった。
あたしは牛乳と菓子パンひとつの朝食をすませると、ギターを担いで教会にでかけた。
教会の掃除を済ませて、なんだかすっきり目を覚まさないうちに学校にいった。
サヤーが通学カバンを右手にさげて、うちの店先にたったのは暑さが多少マシになった夕方だった。
長くのびた影のしたでこわばった顔につくり笑いを浮かべてる。
やつに気づいて、残り物のフルーツがはいったポリ袋を持っていくと、サヤーは片足を引きずりながらこっちに歩いてきた。
「どうしたの?」
あたしの質問にサヤーは黙って首を横に振る。
視線で歩道の先に立つ男を示した。
男はサヤーと同じビルマ人のようだった。
ピンストライプのスーツに白いシャツの胸をはだけている。
やせた浅黒い首筋にはプラチナの認識票が二枚さがっていた。
あれが「あの人」なのかしら。サヤーはポリ袋を受けとるといった。
「もうここには来られない。」
「え、なんで?」
「ガロンがダメだって。高校にいくのも、リッカさんと話すのもダメだって。」
サヤーの顔は目だけが赤く涙ぐんでいる。
あたしたちが話してるのが気にくわないのか、ピンストライプがジッとあたしをにらんだまま歩いてきた。
ファッションはまるで違うけど、目はサヤーの父親に似て暗い穴のようだった。
あたしは早口でサヤーにいった。
「やつは誰。」
サヤーはおびえた目で漏らした。
「ガロン・ラワディ。うちのデリヘルのドライバーなんだ。」
ビルマ人の男が叫んだ。
「なに話してる」
そばで見るとラワディはあたしと同じくらい背が高く、筋肉質のいい体格をしていた。
あたしとサヤーのあいだで昂然と胸をそらして立ち、あたしをにらみつけている。
この手の人間はどこの国にも、一定の割合で発生してしまうみたいね。
工場の不良品と同じなのよね。
誰かの弱味につけこんで生きる寄生虫のような人間。あたしは店先のオレンジをひとつ手にとり、重さを確かめるように握りしめた。
「あたしがサヤーと何を話そうが勝手でしょ。アンタはこの子の保護者じゃないしー。」
ラワディは目を細めてあたしを見た。
「うちの商売ものに手をだすな、ヘンタイ女が」
ヘンタイだけ妙な発音をした。
あたしはうちの果物屋のまえでそんなことをいわれてかなりショックだった。
久々に冗談抜きで顔面を蹴りたくなる男ね。
ラワディはサヤーの肩を荒々しく抱くと、にやりと笑って見せた。
「いいか、こいつはあんたと二度と話したくないといってる。それにこいつの携帯は俺があずかってるから、電話もダメだ。お前は人のビジネスに手をださずに、フルーツでも売ってろ。俺たちのことは、お前みたいなスケベな日本人にはわからないだ。引っ込んでろいいな!」
ラワディは内ポケットからサヤーの携帯電話をだし、フラップを開いてみせた。