ー特別編ーブラックアウトの夜
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「中高生や男の子をおいているとなると、まともな業者じゃないな。モグリだろう。届出をだしてるかどうかも怪しいもんだ。広告を出さずに、常連の口コミだけでやってるはずだ。おれがこの街で知ってるのは一軒だけだな。」
そこで言葉を切って情報屋はじっとあたしの表情をのぞきこんだ。
あたしはなるべく平静を装った。
「なんでも日本の高校生だけでなく、東南アジアのガキまでおいてるって話だ。店の名は『ワイルドナイト』電話番号は……」
情報屋はその日初めて、黄ばんだ前歯を見せてわらった。
また手のひらをだす。
あたしはしぶしぶいった。
「正規の業者じゃないから、広告はやってないって訳ね。」
千円札をもう一枚のせてやる。
ガタさんは携帯電話の液晶画面に、ワイルドナイトの番号を呼び出した。
自分の携帯にメモリーする。
あたしは別れ際にいった。
「最後に質問をひとついいでしょ。」
看板もちは疲れた顔でうなずいた。
「そのデリヘルの料金ってわかるの?」
「ああ、わかる。ホテトルなみに高いよ。七十分二万円、九十分で二万五千円だ。」
悪くないアルバイトのようだった。
「女の子はそのうちどれくらいもらえるの?」
「売り上げの六割。」
あたしはざっと計算した。
一日にふたりのお客がついたとして、サヤーの手には二万四千円が残るはず。
週に三日として週給で七万円になる。
いくら家族五人の生活が厳しいとはいえ、あの格安アパートで暮らしていて、はと皿五十円の傷んだバナナをただでもらうほど貧しいはずがなかった。
「リッカ、リッカか。アンタの事覚えとくよ。これからも聞きたいことがあるなら顔だせよ。あと、禅にもよろしくいっといてくれ。」
あたしは少しだけ、禅君の顔の広さに驚いた。
動いてる所をあんまり見ないのに…
ガタさんにお礼をいって池袋駅北口で別れた。
うちに帰る途中なんども計算をやり直したけど、やはりどこかおかしかった。
サヤーが無料のフルーツを漁るには、なにか別な理由があるはずなのよね。
次の日、サヤーはうちの店に顔を出さなかった。
気にはなったけど、あたしはいつも通りにすごした。
やけつきそうな日差しの一日、朝から晩までベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを順番にかけてお客の相手をするのは悪くない気分。
サヤーから電話があったのは、そろそろ寝ようかと思った真夜中過ぎだった。
あたしが寝そべって携帯をとると、澄んだ声が聞こえた。
「リッカさん、サヤーです」
「やほー、今日はどうしてたの?」
サヤーは興奮しているみたいだった。
あたしの質問なんか無視して、早口でしゃべりだした。
「あれからいろいろ考えたんだけど、やっぱりぼくはリッカさんのいうとおり、高校にいってちゃんと勉強することにしたよ。明日、あの人に話してみるから。うまくいったら連絡するよ。じゃあ、明日は学校だから。」
「あ、ちょ……」
勝手にそれだけいうと、通話を切ってしまう。
かけ直そうかと思ったけど、やめておいた。
話したいことは山のようにあったが、あたしだって中学のころ午前中の授業は殺人的に眠かったしね。
そこで言葉を切って情報屋はじっとあたしの表情をのぞきこんだ。
あたしはなるべく平静を装った。
「なんでも日本の高校生だけでなく、東南アジアのガキまでおいてるって話だ。店の名は『ワイルドナイト』電話番号は……」
情報屋はその日初めて、黄ばんだ前歯を見せてわらった。
また手のひらをだす。
あたしはしぶしぶいった。
「正規の業者じゃないから、広告はやってないって訳ね。」
千円札をもう一枚のせてやる。
ガタさんは携帯電話の液晶画面に、ワイルドナイトの番号を呼び出した。
自分の携帯にメモリーする。
あたしは別れ際にいった。
「最後に質問をひとついいでしょ。」
看板もちは疲れた顔でうなずいた。
「そのデリヘルの料金ってわかるの?」
「ああ、わかる。ホテトルなみに高いよ。七十分二万円、九十分で二万五千円だ。」
悪くないアルバイトのようだった。
「女の子はそのうちどれくらいもらえるの?」
「売り上げの六割。」
あたしはざっと計算した。
一日にふたりのお客がついたとして、サヤーの手には二万四千円が残るはず。
週に三日として週給で七万円になる。
いくら家族五人の生活が厳しいとはいえ、あの格安アパートで暮らしていて、はと皿五十円の傷んだバナナをただでもらうほど貧しいはずがなかった。
「リッカ、リッカか。アンタの事覚えとくよ。これからも聞きたいことがあるなら顔だせよ。あと、禅にもよろしくいっといてくれ。」
あたしは少しだけ、禅君の顔の広さに驚いた。
動いてる所をあんまり見ないのに…
ガタさんにお礼をいって池袋駅北口で別れた。
うちに帰る途中なんども計算をやり直したけど、やはりどこかおかしかった。
サヤーが無料のフルーツを漁るには、なにか別な理由があるはずなのよね。
次の日、サヤーはうちの店に顔を出さなかった。
気にはなったけど、あたしはいつも通りにすごした。
やけつきそうな日差しの一日、朝から晩までベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを順番にかけてお客の相手をするのは悪くない気分。
サヤーから電話があったのは、そろそろ寝ようかと思った真夜中過ぎだった。
あたしが寝そべって携帯をとると、澄んだ声が聞こえた。
「リッカさん、サヤーです」
「やほー、今日はどうしてたの?」
サヤーは興奮しているみたいだった。
あたしの質問なんか無視して、早口でしゃべりだした。
「あれからいろいろ考えたんだけど、やっぱりぼくはリッカさんのいうとおり、高校にいってちゃんと勉強することにしたよ。明日、あの人に話してみるから。うまくいったら連絡するよ。じゃあ、明日は学校だから。」
「あ、ちょ……」
勝手にそれだけいうと、通話を切ってしまう。
かけ直そうかと思ったけど、やめておいた。
話したいことは山のようにあったが、あたしだって中学のころ午前中の授業は殺人的に眠かったしね。