ー特別編ーブラックアウトの夜
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「この手も、目も、口も、お腹のなかまて、ぼくは汚れてるんだ。」
あたしは息を殺して泣いているサヤーを見ることができなかった。
だが、窓のむこうの夏の夜には、西一番街にひざをつき両手をあわせるサヤーの姿が浮かんでいる。
あの恥じらいをふくんだ笑顔。
この子が汚れているなら、世界はどこまでも真っ暗だと思った。
「サヤー、よく聞いて。アナタは汚れてなんかいない。誰もアナタを責めるやつなんかいない。がんばって高校にいくのよ。そして、いつかきちんと仕事のできるところを見つけて、親父さんを楽にさせてあげるの。」
あたしは真剣だった。
サヤーは黙ったまま見つめてくる。
「あたしにはやってあげれる事はすくないけど、なにか困ったことがあったらうちの店に顔をだすのよ。いい、絶対に自分をあきらめるな、自分を捨てるな。サヤー……アナタのことを大切に思う人がたくさんいるのよ。」
あたしは…真剣だった…けど、その言葉に力がないことはわかっていた。
この男の子は絶壁に指先だけでぶらさがっているようなものなのだ。
気を抜けば地獄の底までまっ逆さま…。
安全な場所にいるあたしにはやれるけとはほんのわずかしかなかった。
その日の帰り道、あたしはそのわずかな事をしてあげるつもりだった。
喫茶店のまえで別れて、ブラブラと池袋に戻りながらあたしはスカートのポケットから携帯を抜いた。
電話相手はこの真夏も荒稼ぎしてるワーカーフリーク。
『は…い…?』
「こんばんは、禅君。いきなりだけど少し聞きたいことがあるの」
電話の向こうでハッカーは喉を鳴らしている。
珈琲でも飲んでるのかしら。
『なん…です…か?』
「あの、池袋のデリヘルの事を聞きたいの。」
隣をすれ違ったサラリーマンがあたしの事を横目に見た。
禅君は声色を変えずに淡々と続けた。
『デリ…ヘル…ですか…。……リッカ…さん。今…どちらに…います?』
「えーと、JR池袋駅北口近く。」
ハッカーはなんどか息をはいた。
もしかしたら笑ったのかも知れない…ダースベイダー?
『なら…丁度…良い…ですね…。駅前に…看板もち…が…居ます…よね。…その…なかで…干し首…みたいに…黒く…しぼんだ顔…を…した…人を…探して…ください。』
駅前に何人かいるくたびれた看板もちを見回した。
あたしは杖にでもすがるように看板にもたれ、通行人のいきかう歩道で流れに逆らう岩のように静止した男にを見つけた。
ローンズ・ホープ。
五十万円まで無担保無保証人で即決!
希望という名の街金融は、地元の人間なら誰でも知ってる年利二千パーセント以上の悪質業者だ。
「居たよ。」
『俺の…名前を…出して…ください。』
あたしはその男に声をかけた。
干し首のように黒くしぼんだ顔が濁った目であたしを映した。
あたしは息を殺して泣いているサヤーを見ることができなかった。
だが、窓のむこうの夏の夜には、西一番街にひざをつき両手をあわせるサヤーの姿が浮かんでいる。
あの恥じらいをふくんだ笑顔。
この子が汚れているなら、世界はどこまでも真っ暗だと思った。
「サヤー、よく聞いて。アナタは汚れてなんかいない。誰もアナタを責めるやつなんかいない。がんばって高校にいくのよ。そして、いつかきちんと仕事のできるところを見つけて、親父さんを楽にさせてあげるの。」
あたしは真剣だった。
サヤーは黙ったまま見つめてくる。
「あたしにはやってあげれる事はすくないけど、なにか困ったことがあったらうちの店に顔をだすのよ。いい、絶対に自分をあきらめるな、自分を捨てるな。サヤー……アナタのことを大切に思う人がたくさんいるのよ。」
あたしは…真剣だった…けど、その言葉に力がないことはわかっていた。
この男の子は絶壁に指先だけでぶらさがっているようなものなのだ。
気を抜けば地獄の底までまっ逆さま…。
安全な場所にいるあたしにはやれるけとはほんのわずかしかなかった。
その日の帰り道、あたしはそのわずかな事をしてあげるつもりだった。
喫茶店のまえで別れて、ブラブラと池袋に戻りながらあたしはスカートのポケットから携帯を抜いた。
電話相手はこの真夏も荒稼ぎしてるワーカーフリーク。
『は…い…?』
「こんばんは、禅君。いきなりだけど少し聞きたいことがあるの」
電話の向こうでハッカーは喉を鳴らしている。
珈琲でも飲んでるのかしら。
『なん…です…か?』
「あの、池袋のデリヘルの事を聞きたいの。」
隣をすれ違ったサラリーマンがあたしの事を横目に見た。
禅君は声色を変えずに淡々と続けた。
『デリ…ヘル…ですか…。……リッカ…さん。今…どちらに…います?』
「えーと、JR池袋駅北口近く。」
ハッカーはなんどか息をはいた。
もしかしたら笑ったのかも知れない…ダースベイダー?
『なら…丁度…良い…ですね…。駅前に…看板もち…が…居ます…よね。…その…なかで…干し首…みたいに…黒く…しぼんだ顔…を…した…人を…探して…ください。』
駅前に何人かいるくたびれた看板もちを見回した。
あたしは杖にでもすがるように看板にもたれ、通行人のいきかう歩道で流れに逆らう岩のように静止した男にを見つけた。
ローンズ・ホープ。
五十万円まで無担保無保証人で即決!
希望という名の街金融は、地元の人間なら誰でも知ってる年利二千パーセント以上の悪質業者だ。
「居たよ。」
『俺の…名前を…出して…ください。』
あたしはその男に声をかけた。
干し首のように黒くしぼんだ顔が濁った目であたしを映した。