雨ノ空
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私は膝を立てて、顔を埋めた。
ムカつく。
そうやって簡単に人の中に入ってくるコイツにも…
そのとうりで反論できない自分にも…
悠はいった。
「そういや、覚えてるか?」
「……」
「無視っか……じゃあひとりごとを話しますよん。昔さ、俺んちで遊んでで花瓶かなんかぶち割ってさ、家に帰ったあとお前は轟さんに怒られた。あの花瓶は俺が割ったんだよな。お前は側にいただけ。それなのに信じてもらえずにマジ泣きして飛び出ていった。あの時もここに隠れてたよな。覚えてないか。」
覚えていない訳がない。
私がここを隠れ家にしたのはアレが始まりだった。
お爺ちゃんに怒られたのも、子どもながらに必死に弁解して、それでもわかってもらえなくて酷いことをいったのも全部覚えてる。
「誰が探しても見つからなくて困ってたっけ。あのときは、まだうちにジジイも生きてて、轟さんとマジ喧嘩したんだぞ。『千草がそんなことするわけないだろ。お前は孫も信じられないのか!』『お前こそ少しは悠を大事にしてやれ!』ってな。」
私は顔を伏せたまま驚いていた。
今の話ははじめて聞いた。おじいちゃんは普段は多少は怒ったりするけど喧嘩なんかしないタイプの人間だったし、弥一のおじいちゃんが私をかばってくれたっというのもビックリした。
「轟さんイイ人だよな。俺の心配までしてくれるんだから。っか、その前にオカシイのはうちのジジイか。」
悠は変わらずにケラケラと笑って、大きな独り言を話し続けた。
私のお母さんの事、お父さんの事、今はいないけど悠のお母さんの事…
あの日、私が居ないところでどんな会話があったのかをまるで昨日あった事のようにスラスラと話し続ける。
「っで、親とジイサンが揉めてて飽きてきた俺は、暇潰しにバロンと散歩でて……」
悠はそこで話を切って、こっちを見た。
どういうわけか私がチラッと頭をあげたときだったのでバッチリと視線がぶつかった。
長く垂れた髪の隙間から覗く目に私は押し負けてしまう。
「アンタは…隠れてる私を見つけたのよね。今とおんなじ、あのときも雨が降りだしたっけ。」
「そうだったけ?」
この野郎はさっきまでの記憶力の良さはどこにいったのか、まったく憶えてないような素振りを見せた。
ただ、ニコニコと何か言いたげに笑って、ほんの少し上がった唇のはしからは牙にも近い、猫のようにするどい八重歯の先が見えている。
もちろん私だってコイツが何に笑ってるのか察しがついていた。
あの日のことを私も覚えていた事だろう。
悠はいった。
「千草は変わらないよな。小さい頃からなんも変わってない。いや、スタイルは実に女っぽくなったけど。」
ムカつく。
そうやって簡単に人の中に入ってくるコイツにも…
そのとうりで反論できない自分にも…
悠はいった。
「そういや、覚えてるか?」
「……」
「無視っか……じゃあひとりごとを話しますよん。昔さ、俺んちで遊んでで花瓶かなんかぶち割ってさ、家に帰ったあとお前は轟さんに怒られた。あの花瓶は俺が割ったんだよな。お前は側にいただけ。それなのに信じてもらえずにマジ泣きして飛び出ていった。あの時もここに隠れてたよな。覚えてないか。」
覚えていない訳がない。
私がここを隠れ家にしたのはアレが始まりだった。
お爺ちゃんに怒られたのも、子どもながらに必死に弁解して、それでもわかってもらえなくて酷いことをいったのも全部覚えてる。
「誰が探しても見つからなくて困ってたっけ。あのときは、まだうちにジジイも生きてて、轟さんとマジ喧嘩したんだぞ。『千草がそんなことするわけないだろ。お前は孫も信じられないのか!』『お前こそ少しは悠を大事にしてやれ!』ってな。」
私は顔を伏せたまま驚いていた。
今の話ははじめて聞いた。おじいちゃんは普段は多少は怒ったりするけど喧嘩なんかしないタイプの人間だったし、弥一のおじいちゃんが私をかばってくれたっというのもビックリした。
「轟さんイイ人だよな。俺の心配までしてくれるんだから。っか、その前にオカシイのはうちのジジイか。」
悠は変わらずにケラケラと笑って、大きな独り言を話し続けた。
私のお母さんの事、お父さんの事、今はいないけど悠のお母さんの事…
あの日、私が居ないところでどんな会話があったのかをまるで昨日あった事のようにスラスラと話し続ける。
「っで、親とジイサンが揉めてて飽きてきた俺は、暇潰しにバロンと散歩でて……」
悠はそこで話を切って、こっちを見た。
どういうわけか私がチラッと頭をあげたときだったのでバッチリと視線がぶつかった。
長く垂れた髪の隙間から覗く目に私は押し負けてしまう。
「アンタは…隠れてる私を見つけたのよね。今とおんなじ、あのときも雨が降りだしたっけ。」
「そうだったけ?」
この野郎はさっきまでの記憶力の良さはどこにいったのか、まったく憶えてないような素振りを見せた。
ただ、ニコニコと何か言いたげに笑って、ほんの少し上がった唇のはしからは牙にも近い、猫のようにするどい八重歯の先が見えている。
もちろん私だってコイツが何に笑ってるのか察しがついていた。
あの日のことを私も覚えていた事だろう。
悠はいった。
「千草は変わらないよな。小さい頃からなんも変わってない。いや、スタイルは実に女っぽくなったけど。」