桜楼王華
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「笑ってるけど、悠、お前はもっと気持ち悪いからな。」
氷の矛先がいきなり俺にかわった。
ぴしゃりと冷たい水をかけられた気分だ。
「は?なんでだよ。」
奴は俺を見ずに淡々と氷の声でいった。
「必要以上に世話焼きで無駄にお節介。女にもガキにも甘い。」
後半はともかく、俺は別に世話焼きでもお節介なつもりもない。
と言うか、それで気持ち悪がられるってどうなんだよ。
「私はいいと思いますよ。悠さんは少し変な人だから素敵なんですから。」
こっちはこっちで何にもフォローになっていない。
「変ってのはついてくるんだな…。」
二人は声を揃えて頷いた。打ち合わせでもしてるんじゃないかと思えるくらいドンピシャに。
「ああ。」
「ええ。」
くそっ。
これが平民と貴族の差なのだろうか。
俺から見たら二人の方があきらかに変人なのに……。
「はぁ…それにしても楽しいですね~。こうやってると日々の喧騒を忘れられます。」
背伸びをしてる氷室さんの隣で崇は家の前を歩いていく人々を見ながらいった。
「そうだな…。なぁ、薫、悠。俺たちも真っ当に生きていたらあんな風になれたのかな。」
談笑しながら歩く女達
自転車で並んで走る学生
スーツ姿のリーマン
買い物帰りのおばちゃん
普通にどこでも見える当たり前の風景に、王様は似合わないため息を吐いた。
口には出さなくても、生まれてこのかた強者である崇には当たり前が解らないのかもしれない。
俺はとっさに気の効いた言葉は浮かばなかったけど一つだけ分かることがあった。
「さぁな…けど、別にいいんじゃないか。俺の当たり前が崇の当たり前じゃないのと同じで何も変わることじゃないし。崇がガキの王様でも氷室さんがボスでもこうやって笑えるんだから。俺らは俺らだろ。別に他人からどう見られようといいダチだよ。」
俺は温かな春の日差しの下にグラスをあげた。
浮かんだ一枚のサクラの花びらが揺れている。
感傷に浸ってるはずの王様に一蹴された。
「ほらな、やっぱりお前は気持ち悪いよ。」
決めた。俺はもう二度とコイツに励ましの言葉なんかいってやらない。
「ははは、崇はキツいですねぇ。」
何だかんだ言いながら二人は俺と同じようにグラスをあげた。
キンッと軽くぶつけて一気に飲み干す。
喉を通りすぎる熱い液体が全身を火照らせる。
だけど、その身体を包み込むやわらかな春風がゆっくりと冷ましていくのが心地よかった。
春の宴はまだまだ始まったばかりだし、もう少し飲ませたらもう一度コイツらの昔話を聞いてみよう。
さんざん人の事を気持ち悪いって言いやがったんだから……恥ずかしいエピソードのひとつも聞き出さないと気が済まないしな。
END
氷の矛先がいきなり俺にかわった。
ぴしゃりと冷たい水をかけられた気分だ。
「は?なんでだよ。」
奴は俺を見ずに淡々と氷の声でいった。
「必要以上に世話焼きで無駄にお節介。女にもガキにも甘い。」
後半はともかく、俺は別に世話焼きでもお節介なつもりもない。
と言うか、それで気持ち悪がられるってどうなんだよ。
「私はいいと思いますよ。悠さんは少し変な人だから素敵なんですから。」
こっちはこっちで何にもフォローになっていない。
「変ってのはついてくるんだな…。」
二人は声を揃えて頷いた。打ち合わせでもしてるんじゃないかと思えるくらいドンピシャに。
「ああ。」
「ええ。」
くそっ。
これが平民と貴族の差なのだろうか。
俺から見たら二人の方があきらかに変人なのに……。
「はぁ…それにしても楽しいですね~。こうやってると日々の喧騒を忘れられます。」
背伸びをしてる氷室さんの隣で崇は家の前を歩いていく人々を見ながらいった。
「そうだな…。なぁ、薫、悠。俺たちも真っ当に生きていたらあんな風になれたのかな。」
談笑しながら歩く女達
自転車で並んで走る学生
スーツ姿のリーマン
買い物帰りのおばちゃん
普通にどこでも見える当たり前の風景に、王様は似合わないため息を吐いた。
口には出さなくても、生まれてこのかた強者である崇には当たり前が解らないのかもしれない。
俺はとっさに気の効いた言葉は浮かばなかったけど一つだけ分かることがあった。
「さぁな…けど、別にいいんじゃないか。俺の当たり前が崇の当たり前じゃないのと同じで何も変わることじゃないし。崇がガキの王様でも氷室さんがボスでもこうやって笑えるんだから。俺らは俺らだろ。別に他人からどう見られようといいダチだよ。」
俺は温かな春の日差しの下にグラスをあげた。
浮かんだ一枚のサクラの花びらが揺れている。
感傷に浸ってるはずの王様に一蹴された。
「ほらな、やっぱりお前は気持ち悪いよ。」
決めた。俺はもう二度とコイツに励ましの言葉なんかいってやらない。
「ははは、崇はキツいですねぇ。」
何だかんだ言いながら二人は俺と同じようにグラスをあげた。
キンッと軽くぶつけて一気に飲み干す。
喉を通りすぎる熱い液体が全身を火照らせる。
だけど、その身体を包み込むやわらかな春風がゆっくりと冷ましていくのが心地よかった。
春の宴はまだまだ始まったばかりだし、もう少し飲ませたらもう一度コイツらの昔話を聞いてみよう。
さんざん人の事を気持ち悪いって言いやがったんだから……恥ずかしいエピソードのひとつも聞き出さないと気が済まないしな。
END