池袋西口駅の前…
夜の帳が降りる頃…
その店は開店する…

小鳥遊食堂またの名を…深夜食堂という…

そのお店は夜から朝にかけてのみ開店し、メニューは…
【豚汁定食】【ビール】
【酒】【焼酎他】だけ。

後は好きな物を注文すれば作れる物なら作るこれがこの店の営業方針。

さぁ…今夜のご注文は？











ｰ小鳥遊食堂ｰ

夜の10時前。
おれの店では一番お客の出入りが多くなる時間だ。

ただ、この時間帯のお客は若者は意外といない。
集まるのはやや年配の方だ。

身寄りの無い独り暮らしのじいさん達が夕食を食べに集まってくる。

「大将、ビール1つ頼むよ。」

「こっちは熱燗頼むぜ坊主。」

「なんか、温かいつまみが食いたいのぅ。」

カウンター席に並んだら常連のじいさん連中が遠慮なく次々と注文をいってくる。

おれはニッと笑っていった。

「はいよ。今日は里芋、ジャガイモのいいのが入ったからなんか面白いの作るから待っててくれ。ユウヒ、酒頼む。」

米を研ぎながら、空いたテーブルを布巾で丁寧に磨いているユウヒはすぐに元気な返事をした。

「はーい。すぐやりまーす。」

同時に、優日こっちにもねー。優日ちゃんお水頂戴。っと店全体から優日コールが巻き起こる。

当店随一の人気の看板娘だ。

「お待たせしました。はい、こちらもどうぞ。お水です。」

注文ミス無くテキパキとユウヒは配膳をこなしていく。

頭には相変わらずタオルをしっかり巻いていてジーンズの短パン。

黒地で胸元には白で横書きに「小鳥遊」とペイントされている。

当店のオリジナルＴシャツはユウヒのふくよかな胸でロゴが少し伸びている。

看板娘は汗を拭っていった。

「よいしょ…ふぅ。今日も大繁盛。これも、悠が料理上手だからだね。」

なんだろうな、この可愛い生き物は…まぁ、おれの嫁なんだけどな。
まぁ、おれの嫁なんだけど。

大事な事だから二回いったぞ。

「悠。次は？」

ボッーとしてたおれの前にきて、嫁は首を小さく傾げた。
しぐさがいちいち、可愛い。

おれはニヤニヤ顔になるのを我慢しながらいった。

「土鍋を二つ出して洗ってくれ。」

はーい、とユウヒは元気に土鍋を並べて洗う。
家庭的というか見てるだけで癒される。

「ユウヒちゃんはかわえぇのう。」

「じゃなぁ、うちの息子にもあんな嫁が来てもらいたいもんだ。」

「俺はユウヒちゃんになら介護頼んでもいいなぁ。」
騒いでたじいさん連中もユウヒに癒されてるみたいだ。

うちの嫁からはマイナスイオンでも出てるのかも知れない。

新サービス
ユウヒイオンでアナタも癒されませんか？

もしかしたらそれだけでうちの売り上げを上回るかもしれないな。