「なんか用事か…なの」

「うーん。別に用事じゃないけど…とりあえずこれ着ろ。話しにくい」

悠は羽織っていた和柄のシャツを真桜に渡してきた。

しぶしぶそれを着てボタンを閉める。
ブカブカ…けど、悠の匂いがする。

「いつもありがとな。」

急に頭を撫でられた。
嫌な気分はしない…が真桜は聞いた。

「なんだいきなり…なの」

「いや、色々してくれてるだろ。」

ヒョイッと持ち上げられ、真桜は悠の膝に座らされる。

「どうしたなの。なんかいつもと違うぞなの。」

「いや～。労ってるつもりなんだけど？」

訳がわからないといった。すると、悠はお腹のあたりをギュッと抱き締めてくる。

「まお。最近よく夜中に目覚めるな。」

「知ってたのか…なの。」

「まぁな。俺はだいたい起きてるし。」

悠は人の頭の上でケラケラと笑う。
どうでも良いけど酒臭い…なの。

「酔ってるのかなの。」

「酔ってないぞ。ただ、寂しくなったら俺のベッドに潜り込んで来いって言いたいだけ。」

いったい何を言い出すのやら…真桜は意味が解らなかった。

「はっ？」

「お前さ昔から何でもできたんだろ。頭いいし。」

確かに物心ついてすぐに一人で行動していたなの。

だけど…それが自分の当たり前だったなの。

「別に一度も寂しいと思った事なんかないぞなの」

「今までは…な。俺もそうだった。お袋が死んで爺が死んで一人になっても寂しくなかった。けど、それはさ同時にダチが増えて、新しい家族が増えたからなんだよ。」

悠は片手で真桜の頭を撫でてきた。

「何がいいたいなの。」

「ふふ。わかんないだろうな。まお、お前は寂しいって感情がでてきてんだよ。夜中に目が覚めた時や昼間一人の時、感じたことのない虚無感が来ないか？」

「それは……」

「気にするな。はじめての感情には誰だって戸惑うさ。」

「……よく分からないが…つまり真桜は悠が居ないと寂しがっていたと言いたいのか…なの。」

悠はまたケタケタと笑った。

「まぁね～。」

「仮にそうだとして…どうしろとなの？」

「お前も頭がかたいなぁ。…だからさ、甘えてくれよ。」

「甘える…なの？」

「あぁ、まおは甘えた事ないだろ。俺はさガキの頃はずっ～と母さんに甘えてたべったりとな。一緒に遊んでもらったり、本読んでもらったり、寝てもらったりとな…」


悠は話ながら小さくため息をついた。

「…真桜は別に本も読めるし…一緒に遊ぶというのはイマイチなの」

「だよなぁ…。けど、さ。こうして、夜目が覚めたら一緒に居てやることはできるし、添い寝くらいならしてやれる。」

「……。」

「ま、頼りないけどさ。これでも一応年上だしな。」
悠は優しく真桜の頭を撫でた。
本当にやさしく包み込むように何度も…