ウダウダとしている内に太陽は青空の真上を陣取っていた。

日差しと気温は最高潮に達し始める昼前。

「あ゛ぢぃ…」

店内の日陰に入っても汗が止めどなく流れ出てくる。

俺は濡れフキンをデコに乗せてリッカの方を見た。
タンクトップの胸元を引っ張り、中を手でパタパタと扇いでいる。

非常にはしたない&だらしない…

「あつぃ～～」

俺は濡れフキンをリッカに投げ渡しながらいった。

「おまえさぁ…もう少し恥じらいを持てマジで。」

リッカはフキンを胸元に入れていった。

「だってー胸が蒸れてキモチワルイもん…」

リッカにきいたところ、夏場は胸の谷間に汗がたまって汗疹になるらしい。

だからと言って俺(男)の前で普通に胸元をはだけさせるのは如何なものだろうか。

俺はいった。

「なら、俺が拭いてやろうか？」

「いい。拭くだけじゃ済まなそうだし。」

ごもっともだ。
少しは危機感が有るようで安心したところで俺は立ち上がる

「どっかいくのー？」

店から一歩出るとアスファルトの照り返しが恐ろしかった。
たぶん、いま玉子落としたら目玉焼き焼けるぞこれ。
「昼飯買ってくる。なにがいい？」

「え、おごりー！やったぁ！」

リッカは一気に元気になった。
まったく現金な奴だ。

「はいはい、おごってやるから好きなもの言え。ただし持って帰れるもんでな。」

「牛丼特盛。」

これまた女の子らしくない昼食…
まぁ、吉野家なら近いし俺もそれにしよう。

わかったといって、俺は鉄板焼の気分を味わいながら日陰のない街道を歩き出した。





特盛牛丼二つとアイスを買って戻ると店の前には【昼食中】と手書きでの立て看板が置いてあった。

俺は店内に入り、その奥の普段はリビング変わりに使ってると思われる部屋にあがった。

「おっかえりー。牛丼ちゃん！」

「俺じゃなく牛丼なんだな。どうやらデザートのアイスはいらないらしいな。」

「ん、悠君、お帰りーオツカレー。」

とって着けたような言い方。
まぁいいけどさ。
俺はとけかけのアイスを冷凍庫にいれるようにとリッカにコンビニの袋を渡した。

「ハーゲンダッツ～♪あ、悠君、お味噌汁運んどいて。」

俺はインスタントの味噌汁カップと牛丼を透明なガラステーブルの上に並べた。
すぐに七味の容器を持ったリッカがきて俺たちは昼食を食べ始めた。

「ん～…ウマ！牛丼ウマ！」

牛丼に山盛りの七味をふりけてリッカは幸せそうにモグモグと頬を動かしている。
ハムスターかコイツは…
俺は先に味噌汁を一口すすってから言った。

「七味かけすぎじゃないか？」

「たっぷりかけた方がおいしいよー？ほら、悠君も」

「いい。俺はそのままでいいから！」

俺の牛丼にも七味を振りかけようとしたので止めさせる。