綺麗な桜の下には死体が埋まっている。

俺は思うんだけどさ…当たり前じゃないか？
いや、死体があるとか無いとかじゃなくてな。

俺たちがいま立ってる地面の下には幾年も前には誰かが死んでて当たり前だろ。言い換えれば死体がない場所なんかないよな。

それにさ、死体が埋まってようが、地底に妖怪がすんでようが綺麗な物は綺麗だとおもう。






……なんて、どうでも良いことを考えながら俺は教室の窓から校庭を見下ろしていた。

時おり開いた窓から入ってくるやわらかい春風が頬を撫でていき気持ちがいい。

「はぁ…春だな。」

「せやな～。それで悠はなにしとるんや？」
「何って、授業なんかさっさと終わって、花見にでも行きたいなって考……」

ゆっくりと首を横に向けた。担任の黒井先生が笑顔で仁王立ちしている。

俺はいった。

「黒井先生はやっぱビールっすか？」

「せやな～って、誤魔化されるかい！」

ボクサーも真っ青なアッパーカットが俺の顎を打ち上げた。

「がふっ…」

「ちゃんと授業ききや～」

ポニテを左右に揺らして黒井先生は教卓に戻っていく。
しかも、もう、いつもの事なのでクラスの誰も驚かないのが事実だったりする。
だからって先生… 俺の頭が硬いからってアッパーは駄目っすよ…普通にこれ体罰っすよ？

けど、俺は好都合とそのままダウンした振りをして机に突っ伏して目を閉じた。
春眠暁をなんたらってな。

「寝るなー！」

「はいぃぃ！」

油断した…耳元でおもいっきり怒鳴られた。
仕方なく真面目に授業を聞いた。

授業が終わった瞬間帰ったけどな。





「あーぁ…ひどい目にあった。」

家への帰路、公園や民家の庭木を見るとちらほらと桜が咲いている。
六、七部咲きくらいだろうか蕾が風に揺れている。

「…のんびりと花見酒といきたいな。」

思い立ったが超吉日ってな今の俺には花見に行くことしか考えてなかった。



ｰ悠の家ｰ

俺は軽やかにステップを踏みながら帰って、敷地に入ると玄関の前で誰かがいた。

「ん……ヒスイ…か？」

「…ゆう…」

立ち上がって振り向いた翡翠はバロンを撫でていたらしく側でダラーンと寝転がっている。

「どした。学校は…あー春休みか。」

ヒスイは小さくうなずいていった。

「…そう。##NAME2#は？#…」

俺はいった。

「え、あーいや。今日は短縮授業だってなもうあがりなんだ。それより一人か？」

普段なら海がいきなり飛び付いても来るはずなんだが、その様子は無いし。
星凪も見えない。

「…せつめいしたらながい…」

説明がいる状態なのか？
…とりあえず、話を聞いてから出かける事にしよう。
俺はヒスイの目線に腰を屈めていった。

「長いのか…じゃぁ、家に入ってお茶でも飲みながらいきさつを話してくれるか？」

「…うん…」