ｰ池袋西口公園ｰ

家を飛び出たは良いが…
行くあても無くここに来たのだが…

「暑ちぃなぁ…」

やたら長いバニラのラクトアイスを口に食わえて呟く。

「…ｼｬﾘｼｬﾘ、ｺｸ…」

翡翠はソーダ味のアイスを食べながら頷く…

日陰と言えど真夏の日中、その小さな頷きで汗がタラリと流れ落ちる。

「やっぱり、こんな所じゃ駄目だよなぁ…」

秋葉原や池袋のゲーセンもどうかと思うし…

かといって冗談でも風俗街を連れ回す訳には行かない。

「「こんな所」とはご挨拶だな。」

背後の気圧が急に下がり速すぎる寒冷前線…

「崇…」

頭を倒し後ろを見ると太陽光を反射させる銀髪にアルマーニのスーツを着こなした。

ガキの王様虎琥狗崇が威圧感たっぷりで立っている。
「「こんな所」で子連れで何してる？」

崇は一度だけ翡翠を見たあと悠に視線を向ける。

「学生は金も行くあてもなくてね…ちなみにこの子は春野翡翠だ。」

「…ﾍﾟｺ…」

「成る程…だから「こんな所」に居るのか」

パサッ…
崇は懐から何かを取り出し翡翠に渡す。

「…？…」

翡翠はおずおずとそれを受けとる。

「何だ？ってあれ？」

視界に映っていた崇が消える。

「…動物園のチケットだ。」

「動物園？」

崇はいつの間にか前に移動していて翡翠に説明していた。

「ガキからもらってな…俺は興味ない。悠に連れてってもらえ。」

それだけ言い終わると崇は池袋の街にとけ込んでいく。

「…動物園行くか？(カッコいい奴は何してもカッコいいのは何でだ？)」

「…いく♪…」

機嫌が良く返事をする翡翠。

女は十一でも女だな…

少し前にSウルフのクラブで崇に無理矢理誘われた時。
俺を素通りした視線が崇で止るのを繰り返された事を思い出した。

「…さっきのひともかっこよかったけどゆうもかっこいい…」

「ありがと」

いいんだ。どうせ、いつも俺は二番目なんだから。