「はい、じゃあ。皆さんが書いた作文の発表をしましょうね。」

担任の女教師がそう言うと生徒たちは一斉に机の上に作文用紙を広げる。

「……」

もちろん翡翠も言われたとおりに作文用紙を広げるが少し元気がなくなった様に見える。

「はいじゃぁ…誰に発表してもらいましょうか…発表したい人～」

「「ハイ!」」「「はーい!」」

教師の一言に生徒は一斉に手を挙げていく

「……」

そんな中翡翠は手を上げずにいる。

「(春野は手挙げないな)」

「(翡翠は基本的に無口だしな…まぁ、無理して発表する事もないだろ)」

「(聞きたくないのか?)」

「(聞きたいけど苦手なものはしゃーないだろ。それに俺だったら作文すら書かないしな、にひひ。)」

悠は猫八重歯を見せて笑う。
甘いのか本当にどうでもいいのか…

作文のお題は「好きなもの」ということでゲームにペット賢そうなのなら学校など十人十色な内容で、小学生とは目の付けどころが違うと聞いてると結構楽しめる。

「では、最後にもう一人発表して終りにしましょうか」

ついに授業のおわりになったが翡翠の手は一度も挙がらないままだった。

多少残念だが、まぁ後で見せてもらおうと思っていると…

えーりん♪えーりん♪えーりん♪えーりん♪助けてえーりん♪

悠のポケットから大音量で携帯が鳴る。

ざわ…ざわざわざわ…

「ヤベ!!!」

ブッ!!!

悠は慌てて携帯の電源をおとしたが…生徒、保護者、教師と全員の視線が集まる。

「コホン、マナーモードか電源を落としておいてくださいね。」

「っ…す、すいません。」

「(あほ)」

ぺこりと頭を下げる悠の隣で亮が笑いを堪えて肩を震わしながら小さくつぶやく

「…(ゆう)…」

翡翠も気が付き目をパチパチさせて悠を見る。

「(にひひ、悪い)」

対して翡翠にパチッとウィンクと手を合わせるジェッチャーで謝る。

「はい、じゃぁ気を取り直して最後に発表したい人は…」

すっ…
小さく翡翠の手が挙がる。