「稲葉、稲葉！」

廊下で野太い声が響き

「何か用事お父様？」

稲葉はちょうど出かける途中でいると

「悪いが倉から酒を取って来てくれないか？」

「今から出かけるのに…いいわ、けど1本もらっていくわよ？」

「ああ、かまわん、かまわん。1本だろうと10本だろうともらっていけ」


ー稲葉家酒倉ー

「ふぅ、お父様たらまたこんなに入らないものをためて…」

趣味の悪い木彫りの面
ｶﾞｰﾈｼｧの像、鷹の剥製…

「こんなにしたら何が何処に有るかわからないわね…」

稲葉はごそごそと酒瓶を選んでいると

「あら…何かしら？」

稲葉はティッシュ箱位の古い木で出来た箱を見つけ

「何んて読むのかしら…返老還童的酒？」

箱にはそう書かれた札が貼られ、赤い紐で縛られている…

「…(これに決定ね)」

稲葉はその箱と酒瓶を持って倉を後にする…


… …

ー大広間(悠の家)ー

「へー…それで持ってきたのね…」

千草は箱を持ち裏・表と見る

「ええ、酒って書いてあるから良いお酒かと思ってね。」

「って何未成年が未成年に昼間からお酒お土産に持って来てるのよ！」

かがみが二人にツッコム

「けど…札とかこの紐の厳重さ…ヤバい物じゃ無いのか？」

亮はやや危ない物を見る目で箱を見る。

「面白そうじゃないのよ！」

千草は紐をほどき箱を開け
バッ！

皆箱の中を覗く

「あら…」 「へぇ…」

箱の中には綺麗な緋色をした液体の入ったペットボトル位の瓶が入っている。

「意外に綺麗な色ね…」

かがみは微かに揺れる液体を見て呟く

「やっぱりお酒みたいね…」

千草は瓶を持ち上げ

「…飲むのか…？千草？」
亮が不安げな顔をするなか

「飲んでみたいけど……こう言う時は適任(生け贄、毒味係)がいるわよ、悠～♪」

千草の声が何故か多重に聞こえる…