第拾夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋近く:廃病院ー

福太郎「なに?」

血まみれの女『ただで帰すとおもうのかぁー!』

福太郎「……」

クロ「さっきからキャラが定まってないよな」

お仙『確かニ』

血まみれの女『う、うっさい!』

幽香「そんなに消し炭になりたいの?」

血まみれの女『っ……』

福太郎「幽霊も消し炭にでけるんで?」

幽香「私なら、ね」
トントンッ

お仙『日傘が重火器に見えてきタ』

クロ「否定できないところが怖い」

福太郎「あの、ホンマに消されまっせ」

血まみれの女『……消すなら成仏させて頂戴』

幽香「言ったでしょ。私は霊媒師ではないの。吹き飛ばすことは出来るけど成仏とか極楽にはいかせられないわ」

福太郎「死んでから死ぬってどんな感覚なんやろ」

クロ「さぁな、てせも、地獄にも天国にも行けなくなるのはそれはそれで苦痛かもな」

福太郎「っていうか……成仏したいん?」

血まみれの女『分からない…』

幽香「分からないって何よ。私の知っている幽霊は毎日食物摂取に全力よ」

クロ「いや、それも幽霊としたらおかしくない?」

血まみれの女『人間がやってきたら驚かして祟って、呪ってきたけど…』

福太郎「あれ、何気に悪霊やん」

お仙『貞子たんよりよっぽど悪霊ぽい』

血まみれの女『だけど……私は満たされない、何がしたいのかわからないの……うっぅっ』

幽香「幽霊に詳しいわけじゃないけど地縛霊ってやつじゃないの?」

福太郎「んー……どないしよ」

クロ「どないって……いや、どうしようもないだろ」

お仙『ちなみに名前ハ?』

血まみれの女『わからない……もう、思い出せないの……』

福太郎「記憶も薄れとるんやな」

血まみれの女『こうして誰かと話すことも久しぶりだもの、普段なら最初の車いすで逃げ出してるし、大体のひとは私の姿を見たら逃げていくわ』

福太郎「血まみれのひとがおったら怖いもんな」

血まみれの女『怖がってるようには見えないけど?』

福太郎「んー、俺らは転んだらぐちゃぐちゃになる人とか見なれとるし」

お仙『内臓が出てないし血まみれ程度なら綺麗なもんダ』

血まみれの女『なにそれ怖い』

クロ「気にするな」

幽香「まだ話続くの?」

福太郎「もうちょい聞いてあげましょうや」

血まみれの女『はぁ、私はどうしたらいいのかしら』

クロ「成仏の仕方も分からないなら、今までと変わらない生活でいいんじゃない?」

お仙『幽霊の「生」活』

クロ「やかましい」
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