第拾夜『福太郎の不思議な日常』

ー池袋:ハイキングコースー

お仙『太陽の光がまぶしいゼ』

クロ「……お前キョンシーだよな?」

お仙『アイアムキョンシー!』

クロ「日中を平然と闊歩してんな」

福太郎「ふー……」

澄「はぁはぁ…」

クロ「おーい、大丈夫か?」

福太郎「んー、まだ何とかー」

澄「だ、大丈夫ー…」

お仙『こっちこっち、頑張レー』

福太郎「おー」

澄「は、はーい」

クロ「敷き物、広げとくか」

福太郎「はー、到着」

澄「はー、疲れたー」

福太郎「さー、お昼にしよか」

澄「お弁当何入ってるのかなー。楽しみー!」

福太郎「んっ、今日はコレ」

澄「お……おにぎりだけ?」

福太郎「はい、どうぞ」

澄「ど、どうも(おにぎりだけかー……)」

福太郎「ほい、クロとお仙も」

クロ「おう」

お仙『サンキュー。』

福太郎「んっ、そうや。バイトどう?友達できた?」

澄「う、うん。みんないい人、今度遊ぶんだ」

クロ「いいな。どこでだ?」

澄「えっと近くのあくせさり屋さん。友達の指輪がかわいいって言ったら連れてってくれるって」

お仙『どんな指輪?』

澄「えっとね……」


~~


福太郎「んっ、澄さん」

澄「え、あ、はい?」

福太郎「ところでおにぎりもう一個いかが?」

澄「うん?うーん…これでおなかいっぱいかも!満腹!……えっ?な…なんで?今まで何食べても物足りなかったのに……!」

福太郎「ひとりで食べる食事って少し味気ないよなぁ。」

澄「!!」

福太郎「俺なんかさ寂しいの苦手やからひとりで食べるんも苦手で、寂しい寂しいと思って食べると美味しくなかったり、何か足りんなぁ……って侘しい気持ちになったり。逆に誰かと楽しく食べられたら料理はきっと忘れられん幸せをくれるんとちゃうかな」

澄「あ…」


~~


少女『ほ…本当にいいの?』

野武士『おう。その握り飯はやるよ』

あれは人間だったころの私…?

野武士『ひとりで食っても美味くねぇだろ。食い終わるまで一緒にいてやるよ』

少女『おいしい!おいしいよおじちゃん!生きてきた中で一番おいしい!』

野武士『そうかそうかあっはっはっ』

思い出した…昔食べたおいしいもの。。
幼いころ、山に捨てられてずっとずっとひとりだった私に、知らないおじさんがおにぎりをくれて泣きながら食べる私の傍にずっといてくれた。

あれがあんなに美味しく思えて満たされたのは誰かと食べたからなのかな…。


~~


お仙『満たされたカ?』

澄「うん、幸せ…。あー……最初はおいしいご飯、次は誰かと食べるご飯……次はどんなご飯がほしくなるんだろ」

クロ「だったら、次は誰かのために飯を作ったらいいんじゃないか?」

澄「誰かのために作るごはん……いいね。じゃあ、福さん教えてよ」

福太郎「ええよー。なに作りたい?」

澄「えっとねー」

次は私が誰かと一緒に誰かのためのご飯を……
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