第拾夜『福太郎の不思議な日常』

次の日から澄の食べ歩きが始まった。

ファミレス、洋食屋、中華、和食……。

毎日がおなかいっぱいで、食べたことのない新しい料理との出会いで嬉しかった。

おばさん「あ、澄ちゃん今日この後出かけない?」

澄「すみません、今からご飯なので!」

おばさん「あらぁ…」

おばちゃん「澄ちゃんご飯好きねぇ」

人から誘われることよりもご飯を優先し、より細かい専門店、カレーやピザ、時には寿司など少し高級店にも足を運びだした。

毎日、美味しい食事を続けて、しあわせ……のはずなのに何か違う。

福太郎「んっ、お帰り。」

クロ「よう、今日はなんかおいしいものあったか?」

澄「うん……」

クロ「そうか……?」

福太郎「……」



ー池袋:フレンチ料理店ー

おかしい……。現代にいたらひもじい思いなんてしなくていいのに……!

おなか一杯になるはずなのに…!

なんか、おなか一杯にならない…。

なんで?どうして?現代にいるのに……。

澄「すみません!」

店員「はい?」

澄「あの、コレとコレと。それとコレとコレ追加でお願いします。」

店員「はい、少々お待ちください。」

きっと少ないんだ。

澄「すいません、追加で!!」

もっと食べたらきっと。きっと!!

店員「あの…お客様…」

澄「え?」

店員「お支払いの方、大丈夫でしょうか……?今、このぐらいになっているのですが」


~~


澄「あの……ご、ごめん……なさい。」

福太郎「ん?平気平気。むしろ連絡してくれてよかったよ。ちょっとビックリしたけど」

結局お金が足りなくなって福さんに来てもらったのだ。

澄「……」

福太郎「最近、元気ないよな。少し前やったらご飯食べたらとても幸せそうやったのに。今はちっとも幸せそうやないで。」

澄「……自分でもわからないんです。おいしいものを食べようと思っただけなのに……」

福太郎「ふむ」

澄「どんなに食べても物足りないんです。まるでお腹にぽっかり穴が開いてそこからこぼれてしまうみたい。」

福太郎「ふんふん」

澄「周りで大勢が食べてる料理がおいしそうに見えて、同じの頼んでも自分のだけなんか違うんです」

福太郎「ふーん……ひとりで外食してたん?」

澄「はい」

福太郎「んー……明日休みとかなら一緒に弁当持って散歩いかん?」

福さんのお弁当。
福さんの料理ならおいしいからもしかしたら……。

澄「いきます!」
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