第拾夜『福太郎の不思議な日常』

ー百鬼襖の部屋ー

福太郎「そういえば、みんなの自己紹介がまだやったね。」

ゆの「福太郎さんと澄さんのサポートをする大車ゆのです。」

クロ「手伝いみたいなもんの大神クロだ」

お仙『キョンシーの御堂(仮)お仙。お仙でいいゾ』

福太郎「あと二人ほど居るけど、とりあえずはええかな。」

澄「では改めまして……」

両手で顔を覆うと澄の顔が人間に変化した。どうやら「化ける」ことは既にマスター済みらしい。

福太郎「お見事で」

澄「よいしょ、現代(こっち)では働けば植えることがないと聞いてやってきました。夢は現代のおいしいものを食べつくすことです!これからよろしくね。」

クロ「本当に食い物関連だな」

お仙『私も食べるのには自信があル。』

クロ「うるさいよ」

澄「それにしても美味しいなぁ。向こうじゃ考えられない……」

福太郎「そんなに酷かったん?」

澄「ええ、あまりに食べるものがなくて泥団子をただ数えて耐えてましたから……」

「「『ああ(ア)……』」」

ゆの「あ、でも現代には美味しいものたくさんありますからね!」

福太郎「きっと楽しいで」

お仙『肉とか肉とか肉とカ』

クロ「肉ばっかりか!」

澄「へえ……。あ、じゃあもしかしたら出会えるかも!」

福太郎「出会える?」

澄「いつだったか大昔に何かとても美味しいものを食べた気がして、その食べ物も現代にあるのかな……出会えるといいなぁ。あ、おかわりいいですか?」

福太郎「どうぞ、どうぞ」


~~

それから澄さんはご飯への熱意で着々と現代になじんでいった。

澄「福さん。ばいと採用きたよ!」

福太郎「んっ、それはおめでとう。」

クロ「本当に早いな」

澄「へへっ。」

福太郎「ほんなら、仕事に慣れるまで弁当でも作ったげるわ」

澄「えっ!やった!!」

お仙『私も作っテ』

クロ「てめーは何処にも出ていってないだろ!」

お仙『ピクニックダ!』

クロ「うるせぇよ!」

福太郎「そこらに弁当箱あるんで選んどいて」

澄「えーと、じゃあこれで!」

福太郎「はいはいって……」

クロ「それ、重箱だぞ」

澄「これが一番大きいし!」

福太郎「んー、まぁ、ええか」

もともとが人に近い妖怪だから人間関係も順調で、これといった不便も感じてないようだ。

これなら彼女も早いうちに自立できそうだ。
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