第拾夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「さて、ほんなら本題の方をきこか」

お仙『いくらですカ?』

ゆの「はい?」

お仙『本代』

クロ「黙ってるか畑行って雑草でも抜いてこい」

福太郎「どうぞ、続けて」

ゆの「あ、はい……こんどくる妖怪さんは狐者異(こわい)さんらしいで。」

メリー「怖い……妖怪?」

ゆの「いえ、妖怪の狐者異(こわい)さんです」

お仙『小岩井さン?』

クロ「話が進まないからやめろ!」

福太郎「狐者異、言うたら生前に他人の食べ物まで食べてしまうような者が、死後にその執着心を引きずってなる妖怪やな」

ゆの「らしいです。」

お仙『餓鬼?』

クロ「似て非なる妖怪だろ」

福太郎「んっ、ええですよ。受けますわ。」

ゆの「福太郎さんは本当になんでも受けますね。」

お仙『受太郎』

クロ「……」
ゲシッ!
お仙『蹴られター』

福太郎「ひと食い妖怪やないし、こっち来たいいう妖怪さんなんやから問題ないですよ」

ゆの「はぁ、分かりました。それじゃあ受け入れの連絡はして置きます。」

福太郎「どうも」

ゆの「じゃあ、連絡なんかはこのぐらいなので、失礼しますね。」

福太郎「んっ、ご苦労様です。またいつでも遊びに来てください」

ゆの「ありがとうございます。」

クロ「……普通もうちょっと詳しく話を聞いてから受けるんじゃないのか?」

福太郎「大丈夫やって」

お仙『この自信、本物ダ』

クロ「確かに自信があるっぽいけど、何の本物だよ」

お仙『無謀』

福太郎「まぁ、俺ひとりやったらともかくクロとお仙、すっきーにメリーちゃんも居るし大丈夫」

クロ「お仙をあてにするのはダメだろ」

お仙『失敬ナ。私だって本気を出せば気化冷凍法ぐらい使えるシ』

福太郎「いつからお仙はキョンシーから吸血鬼になったん?」

お仙『真・キョンシーダ!』

福太郎「真ゲッターっぽい」

クロ「ってか、できないだろ」

お仙『来年の目標にしとク』

福太郎「来年ももうすぐやけどな」

クロ「はぁ……なんか心配だわ」

お仙『クロのご飯はちゃんと死守するから大丈夫』

クロ「飯の心配してるんじゃねーよ!」

福太郎「んっ、せや。せっかくやし何かごちそう作って迎えよか」

お仙『ご馳走……焼肉!』

クロ「この前したばっかりだろ!」

福太郎「ご馳走いうか秋らしいご飯かな」

お仙『秋刀魚、栗、南瓜、茸!』

福太郎「せやね」

クロ「食材名じゃなくて料理名を言えよ!」
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