第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー夢見長屋近くー

畑に苗を届けて泥田坊と土仕事をした帰り道、皆と道端で休憩しているといつのまにか木の上におかしな奴がいた。全体像は体毛が濃いチンパンジー、だが手足が異常に長くて顔は老獪そうで鼻が高い人の顔だ。

猿(?)「「オモイか。嫌なのに出会った。早く帰ろう。悠、福太郎。」キキキ」

福太郎「ん?(今、俺の名前をしっとった?)」

悠「あー?なんだ、お前は?(おれの名前を呼んだ?)」

猿(?)「「今、俺の名前をしっとった?」「おれの名前を呼んだ?」キキキ、知ってるとも福太郎。呼んだとも悠」

悠「なに?」

福太郎「んん?」

恋「コイツは「思(おもい)」。嫌なやつに出会ったの。相手の心を読む妖怪じゃ。」

悠「心を……?」

福太郎「そんなことが実際にできる妖怪おるんやね」

悠「……」

福太郎「……」

恋「無視して帰ろう、二人とも(妙なことでも読まれては困る)」

思「そうそう。「妙なことでも読まれては困る。」キキキキキッ」

恋「むー」

悠「なんか面白いな」

福太郎「せやね」

恋「面白くなぞない!油断しておると頭からかじられるぞ!(本当は危なくないが。興味を持つな。悠や福太郎だって読まれたく無かろうが)!」

悠「そうなのか?」

思「「本当は危なくないが。興味を持つな。悠や福太郎だって読まれたく無かろうが。」」

恋「さっきからなにゆえ恋ばかり読んどるんじゃコラぁーー!?」

福太郎「悠どないしとるん?」

悠「頭の中で日本語と英語と中国語を混ぜて思考してる。例え読まれても解読と発音不可能なんだろうな。福ちゃんは?」

福太郎「んー、絵描いとるときと同じで頭ん中を空っぽにしとるだけ。ホンマに今喋っとる事しか考えとらんよ」

恋「この人外より人外どもめ……。」

福太郎「というわけで、この場で読まれてしまうンは恋ちゃんの思考だけやな」

悠「よっと」

ガシッ!
恋「な、何をする!!」

悠「羽交い絞め。よい機会だからこの際、今から五十の恋に関する質問をして恋の精神を解体しようと思う」

恋「なぬうっ!!?」

福太郎「そうきたかぁ」

恋「福太郎はなにを傍観しとる!!」

福太郎「俺はほら……んー……今なんも考えとらんし」

恋「そんないいわけがあるかーっ!!」

思「「や、やめんか阿呆!もし、このごろ悠といるのが楽しくなってきたなんて知られたら死ぬ!!!」」

恋「――――――!!!っっ//////」

その瞬間、恋ちゃんは簪を一本ぬくとプロ野球選手も真っ青なほどの投擲で思の額を貫いた。

思「はぺっ!!あっひいぃぃぃ~!考えるより先に手が出る、妖怪でも人間でも女は怖い!!」

思は逃げ去った。

恋「離せっ!恋は帰る///!!」

福太郎「……今のはマズッたんでないの?」

悠「あー……たぶん、一週間コースで口は聞いてくれないと思う」

福太郎「せやけど、面白かったな。今度はウチの窓に来てくれんかなすっきーとかメリーちゃんでも試してみたい」

悠「福ちゃんって自覚の無いドSだよな。」

福太郎「いやいや、自覚あるSの悠が何いうてはるンよ」

悠「おれはノーマルだよ」

福太郎「そらないわ」
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