第壱夜『福太郎の不思議な日常』

ー福太郎の部屋ー

福太郎「たーだいま」

メリー「おかえりなさーい。ご主人様、お手紙きてたよー」

福太郎「んー?ガスか電気代かなんか?」

メリー「ううん、もっとちゃんとしたお手紙……んしょっ、これこれ」

福太郎「ふむ、茶封筒……差出人は円造寺冥……あ、管理人さんやん」

ようよう「冥の姉さんか。なんて内容だい?」

福太郎「えーと……うわ、めっちゃ達筆やん」

拝啓、御堂福太郎様へ

向暑の候、ますますご健勝のほどお喜び申し上げます。いつも定期的に夢見長屋周りのご掃除を誠にありがとうございます。つきましては長屋近くに畑があるのをご存知でしょうか?今は使ってなく雑草が伸びておりますが、よろしければご自由にお使いください。敬 具

すっきー『……畑っすか』

福太郎「そういえば……なんかあったなぁ。」

ようよう「兄さん、畑仕事はしたことあるのか?」

福太郎「フラワーアレンジメントの資格はもっとるよ」

すっきー『なんで?』

福太郎「せやけど……野菜や花を育てたことはないなぁ」

メリー「じゃあ……放置?」

福太郎「んー……ほったらかしにしとくんももったいない気がするしなぁ。なんか食べられる植物でも植えてみよか。手間のかからんなんか。ということで……多分そろそろくるやろ」

すっきー『なにが?』

福太郎「まぁまぁ……ええから。みよってんよ、さん、にー、いち……はい。」

悠「ちぇーきーす。福ちゃんあーそーぼ」

福太郎「ほら、ベストタイミング」

すっきー『この人がいちばん妖怪っぽいっすね』

悠「あー?なんだ、勢ぞろいでお出迎えか。」

福太郎「悠、質問」

悠「なんだい?」

福太郎「今ごろから植えれて簡単な食べれる植物って何?」

悠「スプラウト」

福太郎「……なにそれ?」

悠「種が発芽したばかりの植物のことだよ。ダイコン(カイワレダイコン)、シソ(芽ジソ)、ネギ(芽ネギ)、ブロッコリー、紫キャベツ、ガーデンクレス、カブ、からし菜とかとにかく本野菜になる前の野菜だな。」

福太郎「なるほど……簡単?」

悠「連作障害もないし簡単に室内で作れるぞ。ポイントは光を当てないことだけだな」

福太郎「室内……いや、畑で作る野菜は?」

悠「あー……露地?」

福太郎「せやね」

悠「まぁーだったらインゲン、枝豆、カブ、キュウリ、ごま、コールラビ、コリアンダーに小松菜、しそ、春菊、セロリ、スイカ、そば、玉蜀黍、青梗菜、玉ねぎ……」

福太郎「けっこうあるんやね」

悠「作りやすいとかは別の問題だけどな。なに、畑でもすんの?」

福太郎「家庭菜園程度にやってみょうかとおもっとる」

悠「もの好きだな」

福太郎「なんで?」

悠「一番クソ暑くなる時季に野菜作りなんて酷だからな」

福太郎「んー……やっぱそうなんや」

悠「そんかし出来たらいい野菜が出来るのも確かだけどな。暑かったら水さえ注意しとけば馬鹿みたくでっかくなるし」

福太郎「ほうほう。」

悠「っで、なに作る?」

福太郎「手伝ぅてくれるん?」

悠「作るものと報酬次第では……なにしろおれの庭はもうこれ以上なにも植えられないからな……」

福太郎「そういや土いじり好き言うてたね」

悠「毎年夏は超高密度の向日葵を誇らせてるぜ」
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