第仇夜『福太郎の不思議な日常』

ー集合墓地:あやかし屋ー

福太郎「いやー、いざ夕方まで時間つぶしってなったら長いな」

ラム「まったくだわ」

お仙『げふッ』

クロ「お前は飲み過ぎだ」

お仙『たぽたぽしてるけどまだ大丈夫ダ』

骨女『おや、皆さん。いらっしゃいなんし』

福太郎「骨子さん、服ください」

骨女『……』

福太郎「……」

骨女『えーと、告白ですか?』

ラム「間を省くな!」
グシッグシッ!
福太郎「踏みつけは堪忍ですて……」

クロ「ちゃんと説明しろ」

福太郎「んーと、かくかくしかじか、ロマロマサガサガですねん」

お仙『聞きなれない圧縮語だナ』

クロ「いや、そういう問題じゃない」

骨女『なるほど、小袖の手さん用の服が欲しいんですね』

ラム「伝わるのね。」

クロ「わかんねぇ……」

小袖の手「そうなんです」

骨女『んー……』

福太郎「あかん?」

骨女『いいですよ。ちょっと待っててください』
カラカラ、カラカラ

福太郎「めっちゃ骨なっとるなぁ」

クロ「まぁ、骨だしな」

小袖の手「ドキドキ」

骨女『お待たせしました。こういう着物しかないですがよろしいですか?』

小袖の手「わぁ……綺麗です。それに霊力も籠ってますね。」

福太郎「あれ、私物?」

骨女『私物というか、墓の中に一緒に埋葬されてるものですね。成仏していく方にもらったんです。』

ラム「なにここって土葬が多いわけ?」

骨女『半分は土葬なんし』

福太郎「わーお……。まぁ、それはおいとてい小袖ちゃんどう?」

小袖の手「ありがとうございます。これで完璧です」
ぬぅ…

クロ「まぁ、確かにこれがただしい完成系だわな」

お仙『ところで……これからどうするんダ?』

小袖の手「え?」

お仙『だってその着物を適当な場所に置いとくわけにもいかないだロ。ちゃんと管理しとかないと風でとんだり、虫に食われたりしないカ?』

小袖の手「……」

福太郎「せやろね」

ラム「その辺にぶら下げとくわけにもいかないだろうし」

クロ「それこそ最悪、人間にゴミと間違えられて捨てられるぞ」

小袖の手「ど、どうしましょう!」

福太郎「わー、考えてなかったんや」

骨女『だったらうちで働きますか?』

小袖の手「へ?」

骨女『手だけでも伸びるならお茶とかを給仕できるんじゃないですか?』

小袖の手「そ、そのくらいなら」

骨女『お給料の代わりに小袖の着替えを用意するってのでどうです?』

小袖の手「よろしくおねがいします!」

福太郎「一件落着……やけどええの?」

骨女『ほとんどタダで労働力が手に入るんですから問題ないなんし』

クロ「割とコイツ黒いな……」

ラム「なんだったのかしら今日一日」

お仙『こんな日もたまにはいいじゃないカ』
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